映画「ローン・レンジャー」を見る

ローン・レンジャー THE LONE RANGER
2013年 アメリカ 149分
監督:ゴア・ヴァービンスキー
出演:トント(ジョニー・デップ)、ジョン・リード/ローン・レンジャーアーミー・ハマー)、レベッカ・リード(ルース・ウィルソン)、ダン・リード(ジェームズ・バッジ・デール)、ダニー・リード(ブライアント・プリンス)、レイサム・コール(トム・ウィルキンソン)、ブッチ・キャベンディッシュ(ウィリアム・フィクトナー)、フランク(ハリー・トレッダウェイ)、レッド(ヘレナ・ボナハム=カーター)、ウィル(メイソン・クック。ローンレンジャーの格好をした少年)、シルバー
★ネタバレあり★
ローン・レンジャー」は往年(1949〜57年)のテレビ西部劇シリーズ。元々はラジオドラマだったらしい。これまでにも何度か映画化されているようである。「ハイヨー、シルバー!」という馬への掛け声と、「インディアン嘘つかない。」という有名すぎるセリフの出どころである。トントが友を呼ぶ「キモサベ」という言葉も、なんとなく聞き覚えがある。
1869年のアメリカ西部。
東部で法律を学び郡検事となったジョン・リードは、列車で故郷の町コルビーに向かっていた。
列車には、町で絞首刑にされるため護送中の無法者ブッチ・キャベンディッシュも乗っていたが、仲間の列車襲撃により、脱走を図る。ジョンは、乗り合わせていたコマンチ族のトントとともに、暴走する機関車を止めるが、キャベンディッシュを逃してしまう。
町では、レンジャーのリーダ―であるジョンの兄ダンが追跡隊を組み、ジョンもそれに加わる。が、敵の待ち伏せに会い、隊は壊滅、ダンはキャベンディッシュに惨殺され、ジョンも瀕死の重傷を負う。通りすがったトントは、聖なる力でジョンを蘇らせる。兄の形見の服でつくったマスクをして「ローン・レンジャー」となったジョンは、トントとともにキャベンディッシュ一味を追う旅に出る。
白馬シルバーはスピリット・ホース(魂の馬)、トントは死者を蘇らせる悪霊ハンター、ジョンはスピリット・ウォーカー、キャベンディッシュは人の心臓を食らうウェンディゴ(悪霊)ということで、最近ありがちなホラーファンタジー風味の西部劇になっているのかと思ったが、実はそうでもない。
トントは、心に深い傷を負ったはぐれコマンチ、変な人っぽいが、あまりインディアンには見えない。ジョンは銃ではなく法による正義を貫くという、西部では腰ぬけと思われがちな信念を持ち、兄の妻となっているレベッカに昔と変わらぬ思いを寄せている。兄と弟のレベッカを巡る複雑な思いも描かれる。
といっても、軽快でコミカル、重たい設定なのに、だいぶのほほんとしている。
ジョンがローン・レンジャーと言えばこれという「ハイヨー、シルバー!」をやればトントが「二度とやるな。」といい、キモサベ(「信頼できる友人」の意らしい)の意味をジョンに訊かれると「出来の悪い弟という意味だ。」と答えるなど、ぴりっと笑わせる細部もある。
悪役は、インディアンでもエイリアンでもモンスターでもなく、強欲な白人であるのが潔い。
銃撃もあるが、見どころは列車のアクション。冒頭の悪党脱走劇もさることながら、クライマックスで延々と続く2つの列車並走アクションが、楽しい。
映画を見ているというより、ショウやアトラクションといった方が合っているようにも思う。
導入とエンディングが、1933年、サンフランシスコの遊園地であることが、また作り物めいて見せる。
作中、モニュメント・ヴァレーの風景がふんだんに出てきて目を楽しませてくれる。ラストのクレジットに重なって、赤茶けた岩に向かって延々と歩くトントの後ろ姿はよかった。