映画「エリジウム」を見る

エリジウム ELYSIUM
2013年 アメリカ 109分
監督・脚本:ニール・ブロムカンプ
出演:マックス・ダ・コスタ(マット・ディモン)、フレイ(アリシー・ブラガ)、マチルダ(エマ・トレンブレイ)、スパイダー(ワグナー・モーラ)、フリオ(ディエゴ・ルナ)、クルーガー(シャールト・コプリー)、デラコート防衛長官(ジョディ・フォスター)、カーライル(ウィリアム・フィクトナー)、パテル総裁(ファラン・タヒール)


2154年の近未来が舞台。
地球は荒廃し、地上では多くの人々が貧困にあえいでいた。少数の富裕層は、宇宙に美しいコロニー「エリジウム」を築き、優雅で豊かな暮らしを送っていた。そこには、どんな病気やけがでも一瞬で治しててしまう医療ポッドがあって、人々は病気やけがに煩わされることがなかった。
マックスは、地上にあるアーマダイン社の工場で働いていた。彼は自動車泥棒などの前科を持ち、保護観察の身だった。ある日、ドロイド製造過程の事故で致死量の「照射」を受けてしまい、余命5日と宣告され、工場を解雇される。
マックスは、知人のスパイダーにエリジウムへ密航させてくれるよう頼む。スパイダーは、地上に住む人々を違法にエリジウムに送り込む組織のリーダーで、マックスに借りがあった。スパイダーは、アーマダイン社の経営者でエリジウムの設計者であるカーライルの脳内にある機密データの入手を条件に、マックスの依頼を引き受ける。マックスは、友人のフリオとスパイダーの仲間とともに、カーライルの誘拐を試みる。
一方、エリジウムのデラコート防衛長官は、地上にいる傭兵クルーガーに、マックスらを阻止するよう指令を出す。
カーライルの脳内データはマックスの脳にダウンロードされるが、そこにあるのは、クーデターを企むデラコートがカーライルに要請したエリジウムの再起動プログラムだった。これを始動し、市民の設定を変えれば、地球上に住む人々もすべてエリジウムの住人として登録することができるのだ。


設定がいろいろあって、その説明をしながら、汚さやグロさも含めた豪勢なCGによる近未来風景の中で激しいアクションが展開される。見応えがあって楽しいのだが、頭も目もけっこう疲れる。
マックスが、少年時代に幼馴染の少女フレイと天空に美しく輝くエリジウムを見上げ、いつかあそこに連れていくと約束するところは、静かでよかった。
犯罪者集団とレジスタンスが入り混じったような地下組織とそのヒゲ面のリーダーというのは、たいへんよくあるパターンだが、本作のスパイダーは、リーダーシップと大雑把さとあくどさと憎めなさを適度に併せ持っていて、よかった。ブラジルの俳優ワグナー・モーラ(ワグネル・モウラ)が好演している。
痛い思いをしてマックスが身につけたエクソ・スーツは、いまいちすごさがわからなかった。
説明に時間を割いた割には、マックスもスパイダーもあっさりエリジウムに行けてしまう。防衛体制の脆弱さに対する前フリはあったが、無防備すぎてあっけなかった。ドロイドたちを使った機械制御の非情さが、マックスらに良くも悪くも働くのが、興味深かった。
目的は達成されるが、ヒーローは報われず、なんとなく釈然としない結末は「第9地区」と共通する。が、手放しのハッピーエンドよりもその方がこの監督の作風に合っているようで、これはこれで味があると思えるのだった。