映画「ゴールデン・リバー」を見る(感想)

ゴールデン・リバー THE SISTERS BROTHERS

2018年 フランス・スペイン・ルーマニア・ベルギー・アメリカ  120分

監督:ジャック・オーディアール

原作:パトリック・デウィット「シスターズ・ブラザーズ」

出演:イーライ・シスターズ(ジョン・C・ライリー)、チャーリー・シスターズ(ホアキン・フェニックス)、ジョン・モリスジェイク・ギレンホール)、ハーマン・カーミット・ウォーム(リズ・アーメッド)、メイフィールド(レベッカ・ルート)、提督(ルトガー・ハウアー)、ミセス・シスターズ(キャロル・ケイン)

★ネタバレというか、ラストの展開など、内容に触れているので、見ていない人は注意!

1851年、アメリカ。

「提督」と呼ばれるボスの命令で、殺し屋兄弟シスターズ・ブラザースのチャーリーとイーライは、ハーマン・カーミット・ウォームという名の男を追うことに。弟のチャーリーは人を殺すことにためらいがない危険な男だが、兄のイーライは温厚で殺し屋稼業から足を洗いたいと思っている。

二人は、オレゴンからアメリカ大陸を横断して、ゴールドラッシュに沸くカリフォルニアを目指す。その間、チャーリーは飲んだくれ、イーライは毒クモに刺されたり、馬が熊に襲われたりと災難続き。女ボス、メイフィールドが牛耳る町では、彼女の手下に襲われるが、返り討ちにする。イーライは見事な銃撃をして見せ、実はかなりの銃の使い手であることを示す。

兄弟は、やっとたどり着いたサンフランシスコで、「提督」が放った連絡係モリスに会おうとするが、モリスは提督を裏切ってウォームとともに金を採りに行ってしまった後だった。二人を追う兄弟も、科学者を自称するウォームの発明した、金をたちどころに見つけられる秘薬の存在を知り、仲間に加わる。4人は力を合わせて金を手に入れるが、劇薬はウォームとモリスの命を奪い、チャーリーも右腕を失う。(邦題の「ゴールデン・リバー」は、秘薬によって夜の川底に浮かび上がる、きらきら光る金を指す。)

兄弟は、提督との対決を決心し、オレゴンの屋敷に向かうが、そこでは提督の葬式が営まれているのだった。対決をする必要もなくなり、兄弟は、母の住む故郷に帰る。

原作の西部小説は、大衆娯楽小説的なテーマを扱いながらも、オフビートな中にそこはかとなく文学臭さの漂う作品だったが、映画の方も、西部劇でありながら、活劇というよりは、人間ドラマとしてスマートに決まっている。

シスターズ・ブラザースという名前からして人を喰った感じだが、邦題よりはこちらの方が好きだ。チャーリーの暴力性をさんざん見せながら、じつはイーライの方が凄腕ガンマンだったり、ウォームがモリスにユートピアのような町をつくりたいという夢を語ったり、やっとウォームを見つけたと思ったら兄弟二人して仲間に加わったり、うまくいったと思ったらことのほか悲惨な結果になったり、いざ提督と対決と乗り込んだら提督はすでに死んでいたり、そして、ラストは二人して親孝行なことに故郷の家に帰ったりと、展開は右かと思えば左、左かと思えば右と、はぐらかしの連続である。気が利いているといえば気が利いているのかもしれないが、あざといと言えばあざといような気もする。でも、こうゆうのが好きな人は好きだろう。わたしは、このはぐらかし戦法は特にいいとも悪いとも思わないが、最後に実家に戻って、兄弟の母のシスターズ夫人が出てくるのはよかったと思う。

小説ほど軽妙洒脱ではなく、地に足のついた映画という感じ。地味だけど、ほぼおっさんしかでてこないけど、おもしろかった。なによりイーライ始め4人の男たちに好感が持てたのはうれしかった。

銃声がすごい、迫力があるという評価があるようで、たしかにすごい音だが、わたしはどうも花火のように聞こえてしまってしっくりこなかった。

 

<映画と原作小説の違い>

原作を読んだのは何年か前なので、細部は忘れてしまったが、覚えている範囲内で、映画と原作の違いをあげる。

・原作では、破壊的なチャーリーは兄、温厚なイーライは弟と、映画と逆になっている。(映画がなぜ兄とを弟を逆の設定にしたか定かではないが、あまり年齢序列にこだわらないアメリカでは、キャストの顔に合わせて変えたのかもしれない。)

・小説では、イーライは虫歯がひどくなって顔が腫れる。診てもらった歯医者に歯ブラシを勧められる。そのあと、クモに足を刺される。映画では、寝ている間にクモが口の中に入って顔が腫れる。

・小説では、メイフィールドは男で、兄弟にコテンパンにやられるが殺されることはなく、負けてすっからかんになった後でも今後について取引を持ちかけるという商魂たくましい様子を見せる。映画ではこわもての女ボスだが、兄弟に殺されてしまう。

・映画で、イーライが町のぬかるんだ道に渡した板の上を歩くが、小説では、知り合った女性といい感じになっていっしょにぬかるみの板を渡って歩くちょっとロマンチックなシーンになっている。

・小説では、最後は提督と対決する。このとき、イーライは、普段は温厚だが、一度切れたらチャーリーよりも手に負えなくなるという危険な一面を見せる。映画では、提督との対決は肩透かしに終わる。

原作「シスターズ・ブラザーズ」の感想
https://michi-rh.hatenablog.com/entry/20140823/1408766167