映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」を見る(感想)

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

ONCE UPON A TIME IN HOLLYWOOD

2019年 アメリカ 161分

監督・製作・脚本:クエンティン・タランティーノ

出演:リック・ダルトンレオナルド・ディカプリオ)、クリフ・ブース(ブラッド・ピット)、
シャロン・テイトマーゴット・ロビー)、ロマン・ポランスキー(ラファエル・ザビエルチャ)、ジェイ・シェブリング(エミール・ハーシュ)、
ジェームズ・ステーシー(ティモシー・オリファント)、トゥルーディ(子役。ジュリア・バターズ)、
プッシーキャット(マーガレット・クアリー)、テックス(オースティン・バトラー)、スクィーキー/リネット・フラム(ダコタ・ファニング)、
ジョージ・スパーン(ブルース・ダーン)、マーヴィン・シュワーズ(アル・パチーノ)、ランディ(カート・ラッセル)、ブルース・リー(マイク・モー)、スティーヴ・マックィーンダミアン・ルイス)、チャールズ・マンソン(デイモン・ヘリマン)、ハケット保安官(マイケル・マドセン)、レッド・アップのCM監督(クエンティン・タランティーノ

★ネタバレあり! 注意!!★

 

 

 

1960年代のアメリカ、ハリウッド。

かつてテレビ・シリーズの西部劇「賞金稼ぎの掟」のヒーロー役で一世を風靡した俳優リック・ダルトンは、今は落ち目となって、単発映画やドラマの悪役ばかり演じていた。彼と付き合いの長いスタントマンのクリフ・ブースは、車の運転やアンテナの修理などリックの世話を引き受けていた。クリフのブラピはかっこよく、リックを演じるデカプリオはおもしろい。

リックは、高級住宅地に立つゴージャスな家に住んでいたが、隣に話題の映画監督ロマン・ポランスキーとその妻で新進女優のシャロン・テートが引っ越してくる。

前半は、とりとめなく彼ら3人3様の生活の様子とおしゃべりが続く。

その中で、リックが「大脱走」のヒルツ役を演じてみせるシーンがあったり、スティーブ・マックィーンが出てきたり、クリフがブルース・リーと対決したり、映画の小ネタがあちこちに出てきて楽しい。

リックは、マカロニ・ウエスタン風の西部劇の悪役に付き、とちったことで落ち込み、休憩中に子役の女の子トゥルーディとおしゃべりをし、本番で会心の悪者演技をして8歳のトゥルーディに「私のこれまでの生涯で見た演技の中で一番良かった」と称賛される。

シャロンは、街の映画館で自分の出演作「サイレンサー第4弾/破壊部隊」(ディーン・マーティンと共演)が上映されているのを見つけ、客席で映画を見ながら自分の出演シーンで客の反応を窺い、笑いが起きるのを聞いてにっこりしたりする。彼女は子どもを身ごもっている。

クリフは、ヒッチハイクをしていたヒッピーの女の子(プッシーキャット)をスパーン牧場まで乗せていく。そこは、かつて映画撮影に利用していた牧場で、牧場主の老人スパーンはクリフの知り合いだった。スパーンは耄碌していたが生きてはいて本人に被害者意識はなかったものの、ヒッピーの若者たちは集団で住み着いていいように牧場を利用していた。若者たちとクリフの間に険悪な雰囲気が張り詰め、クリフは若者の一人をぶん殴る。

そして1969年8月9日がやってくる。シャロン・テートが、チャールズ・マンソン率いる狂信者集団によって自宅で惨殺されるという事件が発生した日である。

これまで「キル・ビル Vol.2」や「ヘイトフル・エイト」といったタランティーノの映画では、見る者は何かものすごい大惨事が起きたことを事前に知らされ、映画が進んで「その時」が刻一刻と近づいてくる、そのひりひりするような緊迫感が醍醐味のひとつとなっていたと思う。今回は、日本ではそんなにみんなは知らないが、映画好きな中高年なら知っている人もいる、という程度の「シャロン・テート殺人事件」がその大惨事として、ラストに据えられる(かくいう私も、この映画を見る前にちょっと知っといた方がいいらしいということを小耳にはさんで、事前にざっと検索した口である)。しかし、タランティーノは、シャロンを殺さない。シャロンを救おうとする。せめて映画の中だけでも。その思いに泣けてくる。

犬とクリフの活躍。リックが自宅に置いといた火炎放射器を手にするのもいい。