フランスの映画「仁義」を見直す

仁義 LE CERCLE ROUGE / THE RED CIRCLE
1970年 フランス 140分
監督:ジャン=ピエール・メルヴィル
出演:コーレイ(アラン・ドロン)、ボージェル(ジャン・マリア・ボロンテ)、ジャンセン(イヴ・モンタン)、サンティ(フランソワ・ペリエ)、故買人(ポール・クローシェ)、看守長(ピエール・コレット)、マッティ警視(アンドレブールヴィル)、監察官(ポール・アミオット)、リコ(アンドレ・エキナン)
製作:コロナ・フィルム

コロナ感染防止のための自粛でステイホームを実行し、ちょっと前に録画したのを久しぶりに見た。中身とはまったく関係ないのだけど、冒頭いきなり「CORONA PRESENTS」って出て驚いた。製作したところがコロナフィルムというのだった。

とてもよいけどちょっと変な映画という印象だけあって、中身はほとんど忘れていた。
アラン・ドロンとジャン・マリア・ボロンテとイヴ・モンタンら犯罪に手を染めた男たちが強盗を計画・実行する話で、ボロンテが車のトランクに隠れているってことと、モンタンがアル中で爬虫類の幻覚に苦しみつつも狙撃の名手でなんか調合して特殊な弾をつくって(その経過が波打ったちょっと不思議なワイプ画面でつながれていたことも記憶通りだった)ライフルで鍵穴を撃って金庫を開錠するところ(今回見たら三脚にライフルをつけて高さを調整しときながら結局手持ちで撃っていたのだった)くらいしか覚えていなかったのだが、今見てもおもしろかった。
特に、コーレイ(ドロン)とボージェル(ボロンテ)の出会いのシーン。みているうちに思い出してきて、かなり好きなシーンだったことも思い出した。
出所したコーレイが元ボスからせしめた現金で買った車に乗ってパリに向かう途中、レストランで食事を取る。一方、列車で刑事に護送されていた犯罪者のボージェルは列車から飛び降りて脱走し、森を抜け、レストランの駐車場に駐車していたコーレイの車のトランクに隠れる。検問を抜け、人気のない原っぱでコーレイは車を止め、「出てこい」という(コーレイはラジオで放送されていた逃走犯がトランク潜んでいることに気づいていたのだ)。ボージェルはトランクから銃口を向けて出てくる。ことばを交わしたあと、銃をつきつけているボロンテにドロンがたばこのパッケージとライターを投げる。ボロンテは、たばこを受け取り、銃口を下げて地面に落ちたライターを拾い、たばこを吸う。で、二人は組むことになり、ボージェはたばこを吸ったままトランクに戻るのだった。たばこが男と男の心の交わりを描く重要な小道具となりえた、いい場面だ。

ちょっと違う映画の話になるが、アラン・ドロンと言えば、「さらば友よ」(1968年)でブロンソンとたばこの火を分かちあうラストーシーンも思い出される。中学生か高校生のころテレビで見て、その渋さ、かっこよさにぞくぞくしたものだ。
こういうシーンはもう作られないだろうか。思い着く限りでは、「荒野の七人」のリメイク「マグニフィセント・セブン」(2016年)で、瀕死のジョシュ(クリス・プラッド)に、敵方の無名のガンマンがたばこをくわえさせ一服させてやるというシーンがあった。だが、喫煙シーンが敬遠されがちな最近の状況においては、たばこのやりとりなどもうあまり見られそうになく、そう思うとさびしい。たばこ代わりにミントやのど飴を分かち合っても絵にならなさそうである。

コーライが出所して向かったビリヤード屋のビリヤードが、エイトボールでなく、赤と白の玉を使う4つ玉だったのもなつかしかった。(そのあとエイトボールの台もでてきたが、コーレイがやったのは四つ玉。)

 

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  • 発売日: 2012/05/09
  • メディア: DVD