「ロスジェネの逆襲」を読む

7年ぶりに始まったドラマ「半沢直樹」の原作のひとつ。
読んだのは2013年、シリーズ一回目が放映されていたころですが、ドラマを見ていると、小説の内容を思い出します。当時は「ロスジェネ」という言葉がよく使われていました。

 

ロスジェネの逆襲
池井戸潤著(2012年) ダイヤモンド社
登場人物:
半沢直樹(東京セントラル証券営業企画部長。東京中央銀行の営業第二部次長から出向)
森山雅弘(同営業企画部調査役。半沢の部下。)
渡真利忍(東京中央銀行融資部。半沢の同期。情報通。)
中野渡謙(東京中央銀行頭取。)
三笠洋一郎(東京中央銀行副頭取。半沢を敵視。)
伊佐山・野崎(東京中央銀行証券営業部、電脳雑技集団アドバイザリー担当チーム)
平山(電脳雑伎集団社長。)
瀬名洋介(東京スパイラル社長。森山と中学時代の友人。)
郷田(フォックス社長。)
★ネタばれあり!
テレビドラマ化が話題となっている、銀行マン半沢直樹を主人公にしたシリーズの第3弾。
本作では、半沢は東京中央銀行子会社の証券会社に出向となっている(左遷とある)。肩書きは営業企画部長。(ドラマでは、半沢の父は中小企業の社長だったが、銀行に融資を断られたために経営が破たんし、自殺に追い込まれたという設定になっている。が、小説では自殺はしていなくて存命らしい。)
半沢が東京セントラル証券に出向して半年。
新興IT企業、電脳雑技集団社長の平沢から、ライバル会社東京スパイラルを買収したいという相談が持ち込まれ、東京セントラル証券は電脳とアドバイザリー契約をかわす。が、親会社である東京中央銀行証券営業部が割り込み、契約を取られてしまう。
電脳の敵対的買収の標的とされた東京スパイラルに対し、スパイラルのアドバイザーである大洋証券の広重らは、対抗策として新株発行を提案する。電脳が買い占めるのが困難になるだけの株を発行し、協力的な企業(ホワイトナイト)に新株を買い取ってもらうという作戦だ。広重らは、ホワイトナイトの候補として、PC及び周辺機器販売大手企業のフォックスを挙げる。
東京スパイラルの若き社長瀬名は、半沢の部下森山の中学高校時代の親友だった。瀬名の父は、バブルの時期に不動産業で儲けていたが、投資に失敗し借金を抱え込んで自殺した。瀬名は私立高校を辞めて引っ越してしまい、友人たちと連絡が途絶えていたのだった。
瀬名と森山は久しぶりに再会し、旧交を温める。が、森山は、瀬名から聞いたホワイトナイト計画に疑問を持つ。フォックスのメインバンクは東京中央銀行、しかもフォックスの経営はさほど順調ではないのだった。
東京中央銀行証券営業部による、大洋証券とフォックスを取り込んでの買収スキームの実態を知った半沢らは、東京スパイラルを救うべく、同社とアドバイザリー契約を結んで親会社に反旗を翻す。どう見ても勝ち目のなさそうな買収計画に対し、彼らは、逆買収という策に出る。
電脳雑技集団対東京スパイラルの攻防は、そのまま東京中央銀行証券営業部対東京セントラル証券の対決に直結、一方が仕掛ければ一方が逆襲に出る、逆転に次ぐ逆転の展開は、活劇さながらにはらはらどきどきの連続で、ページをめくる手が止まらない。
自らの世代の不運を嘆き世の中を諦観していた森山は、本社人事部の不穏な動きなど物ともせずその時その場での仕事に専念する半沢や、苦労を重ねて自らの努力で道を切り開いてきた親友瀬名の姿を見て、仕事への希望と情熱を見出していく。
森山と瀬名が、「ロスジェネ」世代に当たり、タイトルの文言は本文中にも出てくるが、内容は、むしろロスジェネとの逆襲である。(2013.7)

ロスト・ジェネレーション(失われた世代)というと、私などはヘミングウェイフィッツジェラルド?と思ってしまうのだが、今でいうロスジェネ世代とは、就職氷河期(1993年~2005年)に学校を卒業し、社会人になった世代、1970年代半ばごろに生まれた世代のことを言う。本書の冒頭に人物相関図があって、単なるビジネス上の関係だけでなく「憎しみ」や「信頼」などとあるのがなかなかわかりやすくて愉快なのだが、半沢とその同期たちに「バ」(バブル世代の意)、森山と瀬名のところに「ロ」(ロスジェネ世代の意)とある。