西部劇「ハーダー・ゼイ・フォール」を配信前に映画館で見る(感想)

ハーダー・ゼイ・フォール 報復の荒野  Harder They Fall
2021年 アメリカ Netflix 138分
監督:ジェイムズ・サミュエル
出演・ナット・ラブ(ジョナサン・メジャース)、ステージコーチ・メアリー/メアリー・フィールズ(ザジー・ビーツ)、ビル・ピケット(エディ・ガテギ)、ジム・ベックワース(RJ・サイラー)、カフィ(ダニエル・デッドワイラー)、バス・リーブス保安官(デルロイ・リンド)、
ルーファス・バック(イドリス・エルバ)、トゥルーディ・スミス(レジーナ・キング)、チェロキー・ビル(ラキース・スタンフィールド)
ワイリー・エスコー(保安官兼町長。デオン・コール)

Netflix配信前の映画館での上映で見る。
出演者が黒人ばかりの西部劇である。予告編を見ると、ラップ音楽バックに、無法者が非情に銃を撃ちまくる場面が立て続けに映るので、スタイリッシュなPVみたいな映画かという印象を持ったのだが、映画館で西部劇を見られる機会なので、上映最終日に見に行く。
まっとうな復讐ものウエスタンだった。家族を殺された男がナット・ラブと名乗るギャングのボスとなる。ギャングはいったん解散するが、収監されていた仇敵のルーファス・バックが出獄したことを知って復讐を決意、仲間も再び集まってきて、ギャング対ギャングの対決となる。
敵味方それぞれの一味の面々がよい。ナット・ラブ演じるジョナサン・メジャースは特にかっこいいいわけではなくそのへんにいる気のいいおじさんのような風貌だがそれで無法者というのが逆にいいかも、やり手の女店主で元カノのメアリ、ライフル使いでクールなビル・ピケット、早撃ち自慢の陽気な若者ジム、小柄な若者だけど敏捷で銃にも喧嘩にも強いカフィ(実は・・・)、ナットのことをよく知っているベテラン保安官のリーブスなど。対するルーファス・バック団は、ルーファスもかっこいいが、その片腕の女トゥルーディがてきぱきしていて気に入った。チェロキー・ビルは早撃ちで知られるガンマン、陽気なジムとは対照的に陰気で冷酷だ。
映画に出てくるのはほぼ黒人で、店や町も黒人ばかりである。護送列車からのルーファスの脱走(釈放)シーンには警備の騎兵隊員たちが、ナット・ラブの一味が大金を得るため襲う白人の銀行内には白人がたくさん出てくるが、みんな端役扱いだ。この銀行強盗は、カフィが活躍、痛快なシーンとなっている。
最後はギャング対ギャングの激しい銃撃戦が展開。ナットとルーファスの対決はこう来たかという感じでなかなか衝撃的だ。
音楽のことは本当によくわからないので説明できないのだが、ラップはほとんど聞かれず、どちらかというとレゲエっぽい感じの曲がかかったり、あきらかに黒人音楽かかりまくりではあると思うのだが、違和感がなかった。
ちょっとマカロニ風味で、重厚感があり、かといって暗くなりすぎず、よかったと思う。

タイトルは、ジミー・クリフの有名な唄「ハーダー・ゼイ・カム」の一節から来ているものと思われる。
Harader they come, harder they fall, one and all
(奴らがひどいことをすればするほど、奴らはひどい死に方をする、そろいもそろって、と言ったような意味だったと思う。

映画の冒頭、「物語はフィクションだが、人物は実在した」と字幕が出る。日本では、ビリー・ザ・キッドや、ジェシー・ジェームズほど有名ではないが、アメリカでは知られている人物が揃っているようだ。ただし、有名人を集めてみたという感じで、字幕の示す通り、物語自体は事実無根のようだ。西部劇仲間が教えてくれたので、受け売りで記す。(goghさん、Tさん、ありがとうございます。)
ナット・ラブ:有名な黒人のカウボーイ。ルーファス・ギャングとのつながりは見られず。
ルーファス・バック:実在のギャング。一味は、黒人とインディアンの混成ギャングだったらしい。
チェロキー・ビル:母親がチェロキー族と黒人の混血のため、インディアン・アウトローとして知られる。フォートスミスで絞首刑になった。
メアリー・フィールズ(ステージコーチ・メアリー):黒人女性初の郵便配達人。
ビル・ピケット:黒人のカウボーイでロディオパフォーマー。ワイルド・ウエスト・ショーや無声映画にも出演していたそうだ。
ジム・ベックワース:19世紀初めの黒人のマウンテンマン。ルーファス・ギャングと時代的に重ならず。

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