映画「ウエスト・サイド・ストーリー」を見る(感想)

エスト・サイド・ストーリー  WEST SIDE STORY
2021年 アメリカ 157分
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:マリア(レイチェル・ゼグラー)、トニー(アンセル・エルゴート)、リフ(マイク・フェイスト)、ベルナルド(デヴィッド・アルヴァレス)、アニータ(アリアナ・デボーズ)、チノ(ジョシュ・アンドレス・リベラ)、エニボディス(アイリス・メナス)、バレンティーナ(リタ・モレノ)、クラプキ巡査(ブライアン・ダーシー・ジェームズ)、シュランク警部補(コリー・ストール)

★すじをバラしてます!★


往年の有名ミュージカル映画を、なんで今頃スピルバーグがリメイクするんだといぶかっていたのだが、旧作への敬意を存分に示しつつ、腹を据えて丁寧に作り込んだ良作だと思った。

1961年版は十代のころテレビで見た。広告のビジュアルのかっこよさにうきうきして楽しみにしていたら、両親が口を揃えて、そんなにおもしろくないよと言ったのだが、そんなわけあるまいと思って見始めて、冒頭の、ジーパンにシャツという普段着のアメリカの不良少年たちが突然路上で踊り出すシーンにすっかり惹きつけられてしまったのだが、その後の悲劇的展開を全く知らなかったので、物語半分くらいで、ラス・タンブリンとジョージ・チャキリスという主役級の二人があいついで死んでしまって愕然とし、その後いくらナタリー・ウッドががんばってもリチャード・ベイマーはちょっと押しが弱く、ガレージの「クール」のシーンはよかったのだが、二人のリーダーの死のショックが尾を引いて、興奮は尻つぼみに終わった記憶がある。予め、これは「ロミオとジュリエット」なんだと聞いていれば、もう少し、冷静に見られたかもしれない。

それでも、テレビで1回だけ見たにしては、私としてはだいぶ内容を覚えていた。You Tubeなどでちょこちょこ見直すと、ペンキ缶とか旧作で使われていた小道具が今回のリメイクでも生かされている。
少年たちがなじんでいる雑貨店を経営するのは、白人男性と結婚したプエルトリコ人のバレンティーナで、61年作でアニタを演じたリタ・モレノが好演しているのがとてもいい。
人種差別とかジェンダーとか貧困の問題を今風に扱っていて、旧作ではおてんば娘だった子(正直覚えていない)が、本作で登場するトランスジェンダーのエニボディズに入れ替わっているらしい。トニーやリフやベルナルドは悪くはないが、男たちはそれぞれの集団を構成する者として描かれていて(それが悪いということではない)、個人として際立っているのはアニタとマリアの2人の女であるように見えた。
唄と踊りについては、冒頭のジェット団とシャーク団の登場シーン、女たちが闊歩する「アメリカ・アメリカ」、非常階段とベランダの柵がもどかしいマリアとトニーの「トゥナイト」など、こちらのバージョンも楽しく見て聞いた。
旧作で俯瞰でとらえられたウエストサイドの街並みはすでになく、がれきが積まれた空地の上をクレーンのショベルが動き回る、オープニングとエンディングもよかった。

www.20thcenturystudios.jp

 

関連作:「ウエスト・サイド物語」(1961年)監督:ロバート・ワイズ。出演:ナタリー・ウッド、リチャード・ベイマー、ラス・タンブリン、ジョージ・チャキリス、リタ・モレノ