映画「カンフースタントマン 龍虎武師」を見る

カンフースタントマン 龍虎武師  KUNGFU STUNTMEN

2021年 香港・中国 92分
監督:ウェイ・ジェン・ツー
出演:サモ・ハンユエン・ウーピンドニー・イェン、ユン・ワー、チン・カーロッ、ブルース・リャン、マース、ツイ・ハークアンドリュー・ラウエリック・ツァン、トン・ワイ、ウー・スー・ユエン ほか

香港カンフーアクション映画の歴史を、スタントマンの視点から語るドキュメンタリー。
有名無名取り交ぜて映画でカンフーアクションに関わった男たちが、次々に登場して、香港アクション映画の黄金時代がスタントマンにとっていかに危険なものだったかを語る。
1930年代、日本軍の侵攻によって本土を追われた京劇の演者たちが香港に逃れ、京劇の学校をつくった。1960年代には4つの学校ができ、多くの子どもたちがそこで厳しい授業を受け体技を身に着けたが、肝心の京劇が衰退してしまって仕事がなく、そこで彼らはカンフー映画のスタントマンになっていったという。そうした過去の経緯も興味深い。
タイトルの「武師」はスタントマンの意。南派洪家拳の流れを組む武術系からラウ・カーウィンの劉家班、香港にあった4つの京劇学校の出身者による京劇系からは、ユエン・ウーピンの袁家班、さらにその系列のドニー・イエンの甄家班、サモ・ハンの洪家班その系列のチン・カーロンの銭家班、ジャッキー・チェンの成家班がつくられ、これら複数の班(チーム)がせめぎあい、文字通り命がけのスタントに挑んでいた。「死んだものもいたし、半身不随になった者もいた」とさらっと語る彼らは、その時代を生き抜いた男たちだ。

「ドラゴン危機一髪」「ドラゴン怒りの鉄拳」「ドランクモンキー酔拳」「プロジェクトA」「ファースト・ミッション」「霊幻道士」「ポリス・ストーリー/香港国際警察」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」シリーズ、などなど、挿入される映画のシーンを見ると、映画館で見たときの高揚感が蘇ってくる。8人が爆発と同時にガラスを突き破ってビルの窓から落ちるシーン(「ファースト・ミッション」)など、撮影のいきさつを知ったあとでも見せてくれるので改めてすごさが伝わる。一方、マース(「プロジェクトA」の有名な時計台落下シーンをジャッキーの前に試しに落ちたスタントマン、俳優、アクション監督)が、ゴールデンハーベストの跡地を案内する場面は郷愁が漂っていてじんとしてしまった。

パンフレットは、厚くていい紙を使っているが、小ぶりで千円。ちょっと迷ったけど買ってよかった。映画を見ただけでは覚えきれない出演者たちが25人、顔写真と名前(漢字とカタカナと英語表記あり)と簡単なプロフィールつきで紹介されていて、香港映画スタントマンの班の系図や、劇中登場する映画の一覧もある。さらに、ドニー・イエンの班に所属している日本人のスタントマン谷垣健治(「るろうに剣心」シリーズのアクション監督)のインタビューと同門の下村勇二と大内貴仁の対談も載っている。興味のある者にとっては、なかなか希少な資料となっているのではないだろうか。

 

kungfu-stuntman.com