映画「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」を見る(感想)

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
EVERYTHING EVERYWHERE ALL AT ONCE

2022年 アメリカ 139分
監督:ダニエル・クワンダニエル・シャイナート
出演:エヴリン・ワン(ミシェル・ヨー)、ウェイモンド・ワン(キー・ホイ・クァン)、ジョイ・ワン/ジョトゥパキ(ステファニー・スー)、ゴンゴン(ジェームズ・ホン)、ディアドラ・ボーベラ(ジェイミー・リー・カーティス)、ベッキー(タリ―・メデル)

タイトルを直訳すると、「なんでもどこでもぜんぶいっしょに」といった意だろうか。
中国移民の主婦エヴリンは、頼りない夫ウェイモンドとコインランドリーを営みながら、老父ゴンゴンの介護をしている。難しい年ごろの娘ジョイに手を焼いていたが、ある日、彼女はボーイフレンドではなくガールフレンドのベッキーを連れてきて、昔気質の父に会わせたいと言い出す。一方、店の経営状況は厳しく、国税局に納税申告に行っても、融通の利かなそうな女性職員(ディアドラ)に書類の不備を指摘されてやり直しを命じられる。そんな生活に疲れきっていたエヴリンだったが、突然、夫のウェイモンドが豹変する。別の宇宙のウェイモンド・アルファが乗り移ったのだ。彼は、巨悪によって危機に直面した宇宙を救ってほしいと、エヴリンに告げ、彼女に世界の命運を託す。
エヴリンは、カンフー・スターとなった宇宙の自分に乗り移り、見事なカンフーの技を駆使して国税局で大立ち回りをしてみせる。予告編ではマルチバースといっているが、つまりは重ね合わせにある多元宇宙に様々なエヴリンがいて、有名なカンフー・スターだったり、歌手だったり、シェフだったりするのだが、中には人間の手の指がソーセージになっているふざけた宇宙とか、生き物が存在しない岩だけの荒涼な宇宙なども出てくる。ウェイモンド・アルファが言う巨悪のボス「ジョブトゥパキ」は、なんと、アルファの宇宙のジョイなのだった。
なんやかんやありながら、物語は、結局、夫と娘との関係修復という超個人的な問題に収束していく。世界を危機から救うはずが、結局は身内のことしか考えてないじゃんというのはアメリカ映画にありがちな展開だが(けなしているわけではない)、これもまたしかり。ウェイモンドと結婚したがためにしがないコインランドリー屋の主婦となってしまったエブリンは、彼の申出に応じなかった自分が成功者となった宇宙を目の当たりにし、自分の選択は間違いだったのかと思う。が、やがて夫のやさしさに気付き・・・という展開。娘ジョイとの関係は、母と年頃の娘のちょっと心がかみ合わない問題から、宇宙の存亡をかけたエヴリン対悪の首領ジョブトゥパキという大げさな戦いに発展するが、この対決はベーグルが絡んでどんどん意味不明になっていく。無機物だけの宇宙で二人が岩になっているシーンはなかなかおかしいが、会話をしているのはいただけなかった。どうせわけがわからないのだから、なにも動くものがない世界で観客がしびれを切らすくらいの間、ただ2つの岩を映していればいいのに、とも思った。
暴走する画面についていけるかどうかで映画の評価が分かれるところか。カンフーアクションは見ていて楽しいが、後半になると、正直ちょっと飽きてきてしまった。
ミシェル・ヨーはたいへんよかった。国税局のこわいおばさんが、ジェイミー・リー・カーティスだったのには驚いたが、こういう役を意気揚々と演じている彼女もよかった。

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