ドラマ「イエローストーン」を見ている(シーズン3途中までの感想)

イエロー・ストーン YELLOWSTONE

2018年~  アメリカ TVドラマ
企画:テイラー・シェリダン、ジョン・リンソン
製作総指揮:テイラー・シェリダン、ジョン・リンソン、アート・リンソンケヴィン・コスナー

出演:ジョン・ダットン(イエローストーン牧場主。ケヴィン・コスナー)、ケイシー・ダットン(三男。ルーク・グライムス)、ベス・ダットン(長女。投資銀行勤務。ケリー・ライリー)、ジェイミー・ダットン(次男。弁護士。新司法長官に立候補する。ウェス・ベントリー)、リー・ダットン(長兄。デイヴ・アナブル)、モニカ(先住民。ケイシーの妻。教師。ケルシー・アスビル)、テイト(ケイシーとモニカの息子。プレッケン・メリル)、フェリックス・ロング(モニカの祖父。ルディ・ラモス)、ロバート・ロング(モニカの兄。ジェレミア・ビツイ)

リップ(カウボーイ頭。コール・ハウザー)、ジミー(新米カウボーイ。ジェファーソン・ホワイト)、ロイド・ピアス(ベテランカウボーイ。フォリー・J・スミス)、コルビー(カウボーイ。黒人。デニム・リチャーズ)、ライアン(イアン・ボーエン)、ウォーカー(ギターを持ったカウボーイ。ベテランだがイエローストーンでは新参者。ライアン・ビンガム)、エイブリー(カウガール。タナヤ・ビーティ)

ライネル・ベリー(モンタナ州知事。ウェンディ・モニツ)、マイク・スチュワート(司法長官。ティモシー・カーハート)、トーマス・レインウォーター(部族政府首長。ギル・バーミンガム)、ダン・ジェンキンス(開発業者。ダニー・ヒューストン)、

<シーズン2から>マルコム・ベック(不動産開発業者。ニール・マクドノー)、カウボーイ(スティーヴン・ウィリアムズ)、キャシディ・リード(ケリー・ローバッハ)

<シーズン3から>
ロアーク(ヘッジファンド・マネージャー。ジョシュ・ホロウェイ)、エリス・スティール(マーケット・エクイティーズのマネージャー。ジョン・エメット・トレイシー)、ティーター(ジェニファー・ランドン)、ミア

WOWOWにて放映。シーズン1・2は放映終了(オンデマンド配信あり)。3を放映中。

★注意! 後半はシーズン1のあらすじを書いています!


モンタナ州イエローストーン国立公園に隣接するイエローストーン牧場。
ジョン・ダットンは、代々続く広大な牧場の経営者であるとともに地元の権力者でもある。家畜協会の代表を務め、州知事のベリーとも懇意にしている。
開発業者によって近接する土地が新たに買収され、イエローストーン牧場は、イエローストーン国立公園、ブロークンロック先住民居留地、宅地造成予定地に囲まれることとなった。部族政府の首長トーマス・レインウォーターは、白人に奪われた先祖の土地を取り戻そうとし、開発業者のジェンキンスはモンタナに新しいマンションやカジノを造成する計画を進めようとし、ダットンと対立する。
ドラマは、この三者の三つ巴の戦いとともに、ダットン家内部の複雑な家族関係を描いていく。兄弟中で最も危うさを感じさせるケイシーとその妻モニカと幼い息子テイトの行く末が気にかかるところだ。
これまでのアメリカ映画だったら、おそらくレインウォーターやモニカらインディアンとそれに寄り添う白人男性ケイシーが主役となり、牧場と町を牛耳るジョン・ダットンは対立する巨悪の大ボスといった役どころとなるだろうか。ところが、ここではその大ボスが主役である。レインウォーターは、インディアンのリーダーだが、虐げられた被害者ではなく、メキシコで育ったインテリで、祖先の地に戻ってきた政治家として大いなる野心を見せる男である。父を嫌っていたケイシーは、結局牧場に戻り、ジョンは父親らしい面も見せる。一概にだれがいい奴でだれが悪い奴とは言えない、複雑で重厚な人間たちの群像劇となっている。
ドラマでは、敵味方警察関係なく誰もがやたらと人を殺す。製作総指揮のシェリダンが監督した映画「ウインド・リバー」を見れば、アメリカの法制度の下、先住民居留地とその周辺地域がどれだけ法律に守られていない場所かよくわかるが、登場人物たちは現代なのに西部開拓時代のような無法ぶりを見せる。警察や行政も絡んで画策に加担し、事実を隠して首尾よく形を整えることがまかり通っている。ここでこの人(たち)がこの人(たち)を殺すのか!?と唖然とし、暗澹たる気持ちになることもしばしばである。シーズン2では、ベック兄弟を相手に血で血を洗う壮絶な殺し合いが展開する。
一方、雄大なモンタナの大自然を背景に、どこまでも広がる牧場での現代のカウボーイたちの仕事ぶりや生活が丁寧に描かれているのは興味深い。少年テイトの存在が、救いとなっていて、ジョン・ダットンが孫をかわいがるおじいちゃんとしての一面を見せる場面にもほっとする。

◆シーズン1(ドラマの内容を書いています)
ダットン家の長男リーは、カウボーイとして牧場の維持管理をしているが、経営者としての自覚はいまひとつ、牛を巡るいざこざから先住民のロバート(モニカの兄)に殺されてしまう。
次男のジェイミーは、弁護士で父の役に立とうと頑張っているが、今一つジョンから認められず、次期司法長官選挙に出馬して、ジョンと対立することとなる。
長女のベスは、少女時代、落馬事故で母を亡くしたことがトラウマになっている。牧場を出て都会で投資ビジネスに辣腕を振るっていたが、父の手助けをするためイエローストーンに戻ってくる。
三男のケイシーは、父を嫌い、特殊部隊の兵士として戦地に赴いていたが、帰国して先住民のモニカと結婚し、息子のテイトとブロークンロック居留地で暮らしていた。が、居留地イエローストーン牧場との間の争いから妻子と別れ、牧場に戻ってジョンの後を継ぐ決心をする。
牧場は何人ものカウボーイを雇っている。カウボーイ頭のリップは、少年のころジョン・ダットンに拾われ、彼を慕い、時として非道な彼のやり方を受け入れ、牧場で生きてきた。Yの字をあしらったイエローストーン牧場の烙印は、牛だけでなく、カウボーイたちにも押されている。烙印のあるカウボーイは、臨時雇いのよそ者カウボーイとは一線を画し、牧場に守られるとともにそこから抜け出すことは難しくなっている。(烙印は、カウボーイだけでなく、ジョンの息子たちにも押されていることが、のちに明かされる。)

◆シーズン2,3
新たな敵ベック兄弟が登場、情け容赦ない攻撃にダットンが反撃する(シーズン2)、ジェンキンスに代わって遠大な開発計画を打ち出す大手開発業者が介入、イエローストン牧場は存亡の危機に立たされる(シーズン3)といった展開となっていく。状況が変わるにつれ、ジョン・ダットンとレインウォーターとの関係も変化していくのがおもしろい。

<シーズン1>
1.夜明け、2.口封じ、3.弔いの日、4.カウボーイの掟、5.重い絆、6.刻まれた記憶、7.敵か味方か、8.綻び、9.決別
<シーズン2>
1.遠雷、2.新たな始まり、3.無法者、4.悪魔の取引、5.命知らず、6.血の代償、7.オオカミの襲来、8.荒野の誓い、9.敵討ち、10.父から子へ
<シーズン3>
1.宿命の大地、2.大いなる野望、3.駆け引き、4.侵入者、5.罪なき死、6.絶望の果て、7.解かれた封印、8.殺すか殺されるか、9.悪より冷酷に、10.帝国の終わり

 

www.wowow.co.jp

 

映画「パワー・オブ・ザ・ドッグ」を見る(感想)

パワー・オブ・ザ・ドッグ The Power of the Dog
2021年 アメリカ / イギリス / ニュージーランド / カナダ / オーストラリア  127分 Netflix
監督:ジェーン・カンピオン
原作:トーマス・サヴェージ「パワー・オブ・ザ・ドッグ」
出演:フィル・バーバンク(ベネディクト・カンバーバッチ)、ジョージ・バーバンク(ジェシー・プレモンス)、ローズ・ゴードン(キルステン・ダンスト)、ピーター・ゴードン(コディ・スミット=マクフィー)

 

★ネタバレあります!★


1925年のモンタナの牧場が舞台。
フィルとジョージは、兄弟で牧場を経営している。フィルは見るからに粗野で男臭いカウボーイ野郎だが、弟のジョージは物静かで温和な男である。ジョージは、食堂で働いていた寡婦のローザと結婚し、妻として牧場に迎える。彼女には、亡くなった先夫との間にピーターという息子がいる。ひょろっとしていかにもへなちょこそうなインテリ青年で、最初に食堂で会ったときから、フィルはピーターをバカにしてからかい、ローズにも敵意をむき出しにする。
映画の宣伝文から、アメリカの牧場を舞台にした、兄、弟、弟の妻が繰り広げる男女の愛憎渦巻くドラマかと思ったのだが、違っていた。ピーターという青年が大きな役割を果たし、まさかのブロークバックマウンテンからの実は恐ろしい子という展開である。
最初はジョージ、その次は結婚して牧場へやってきたローズ、そしてピーターとフィルへと主観が転々と変るのはおもしろいと思った。主要4人の俳優もそれぞれいいと思った。
が、造花や杭やロープを使った、私でもわかる露骨なセックスの隠喩(というのか?)や、絵に描いたように飲んだくれていくローズや、しつこくしつこくブロンコのスカーフと戯れるフィルや、ピーターとフィルがたばこをこれもしつこく交互に吸いあうシーンなど、これみよがしというかあざといというかそんな風に感じられてしまい、わたしとしては好きになれない作風だった。
アカデミー監督賞を受賞するなど、世間的に高評価なのはマッチョをネガティブに描いているところとか性的なマイノリティを扱っているところなどがジェンダー的視点が重視されてきた時代に即しているからということなのだろうか。また、人によっては、マッチョそうに見えて実はインテリで繊細なフィルという人物の持つギャップがたまらないのだろうか。
牧場から望む山の遠景はよかったが、蛇行する道を車が牧場に向かう俯瞰ショットはそぐわないと思った。アメリカの西部の荒野では視点は地上にある方がいいとわたしは思っている。また、せっかく牧場を舞台にしているのに、フィルとジョージ以外のカウボーイはその他大勢の端役で、広大な牧場でのカウボーイの働きがあまり描かれていないのも残念だった。

 

www.netflix.com

映画「ウエスト・サイド・ストーリー」を見る(感想)

エスト・サイド・ストーリー  WEST SIDE STORY
2021年 アメリカ 157分
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:マリア(レイチェル・ゼグラー)、トニー(アンセル・エルゴート)、リフ(マイク・フェイスト)、ベルナルド(デヴィッド・アルヴァレス)、アニータ(アリアナ・デボーズ)、チノ(ジョシュ・アンドレス・リベラ)、エニボディス(アイリス・メナス)、バレンティーナ(リタ・モレノ)、クラプキ巡査(ブライアン・ダーシー・ジェームズ)、シュランク警部補(コリー・ストール)

★すじをバラしてます!★


往年の有名ミュージカル映画を、なんで今頃スピルバーグがリメイクするんだといぶかっていたのだが、旧作への敬意を存分に示しつつ、腹を据えて丁寧に作り込んだ良作だと思った。

1961年版は十代のころテレビで見た。広告のビジュアルのかっこよさにうきうきして楽しみにしていたら、両親が口を揃えて、そんなにおもしろくないよと言ったのだが、そんなわけあるまいと思って見始めて、冒頭の、ジーパンにシャツという普段着のアメリカの不良少年たちが突然路上で踊り出すシーンにすっかり惹きつけられてしまったのだが、その後の悲劇的展開を全く知らなかったので、物語半分くらいで、ラス・タンブリンとジョージ・チャキリスという主役級の二人があいついで死んでしまって愕然とし、その後いくらナタリー・ウッドががんばってもリチャード・ベイマーはちょっと押しが弱く、ガレージの「クール」のシーンはよかったのだが、二人のリーダーの死のショックが尾を引いて、興奮は尻つぼみに終わった記憶がある。予め、これは「ロミオとジュリエット」なんだと聞いていれば、もう少し、冷静に見られたかもしれない。

それでも、テレビで1回だけ見たにしては、私としてはだいぶ内容を覚えていた。You Tubeなどでちょこちょこ見直すと、ペンキ缶とか旧作で使われていた小道具が今回のリメイクでも生かされている。
少年たちがなじんでいる雑貨店を経営するのは、白人男性と結婚したプエルトリコ人のバレンティーナで、61年作でアニタを演じたリタ・モレノが好演しているのがとてもいい。
人種差別とかジェンダーとか貧困の問題を今風に扱っていて、旧作ではおてんば娘だった子(正直覚えていない)が、本作で登場するトランスジェンダーのエニボディズに入れ替わっているらしい。トニーやリフやベルナルドは悪くはないが、男たちはそれぞれの集団を構成する者として描かれていて(それが悪いということではない)、個人として際立っているのはアニタとマリアの2人の女であるように見えた。
唄と踊りについては、冒頭のジェット団とシャーク団の登場シーン、女たちが闊歩する「アメリカ・アメリカ」、非常階段とベランダの柵がもどかしいマリアとトニーの「トゥナイト」など、こちらのバージョンも楽しく見て聞いた。
旧作で俯瞰でとらえられたウエストサイドの街並みはすでになく、がれきが積まれた空地の上をクレーンのショベルが動き回る、オープニングとエンディングもよかった。

www.20thcenturystudios.jp

 

関連作:「ウエスト・サイド物語」(1961年)監督:ロバート・ワイズ。出演:ナタリー・ウッド、リチャード・ベイマー、ラス・タンブリン、ジョージ・チャキリス、リタ・モレノ

 

 

 

映画「ミークス・カットオフ」を見る(感想)

ミークス・カットオフ  MEEK'S CUTOFF
2020年 アメリカ 103分
監督:ケリー・ライカート
出演:エミリー・テセロ(ミシェル・ウィリアムズ)、スティーブン・ミーク(ブルース・グリーンウッド)、ソロモン・テセロ(ウィル・パットン)、ミリー・ゲイトリー(ゾーイ・カザン)、トーマス・ゲイトレー(ポール・ダノ)、グローリー・ホワイト(シャーリー・ヘンダーソン)、ウィリアム・ホワイト(ニール・ハフ)、ジミー・ホワイト(トミー・ネルソン)、インディアン(ロッド・ロンドー)

周辺の西部劇ファンからは不評な作品だが、いや、それなりに見ごたえはあるだろうと思って、早稲田松竹のケリー・ライカート特集で見た。
1845年、オレゴン。新天地を求めて西部へ向かう3家族の旅の様子を描く。
広大な西部の荒野、幌馬車、馬、銃、開拓者たち、西部の案内を務めるスカウト、はぐれインディアン、と西部劇の要素がたくさんあるので西部劇なんだろうが、岩場の銃撃戦も、無法者たちの仲間割れも、インディアンの襲撃も、酒場の殴り合いも、1対1の決闘も、縛り首も、保安官と保安官事務所と牢屋に拘留される酔っ払いも、馬の疾走も、スタンピードも、ガンマンと淑女あるいは酒場女との恋も、ない。
西部を目指す、テセロ夫妻、ゲイトリー夫妻、ホワイト夫妻とその息子の3組の家族は、ひたすら黙々と砂漠を進み続ける。案内人のミークは馬に乗り、男たちは幌馬車を駆るが、馬車は荷物でいっぱいで、乗れない女たちは長いスカートのすそを引きずって、ひたすら歩く。
タイトルのカットオフは近道の意味。どうやら、彼らは幌馬車隊にいたが、近道を知っているというミークの言葉を信じて隊とは別行動をとったらしい。が、2週間で着くと言われた目的地に5週間経っても着けないでいる。ミークが道に迷ったのでは、あるいは近道なんかないのでは、という疑惑が彼らの中に芽生えているが、ミークは意に返さない様子である。やがて、水が尽きそうになるが、水場も見つからない。
そんな中、カイユート族のはぐれインディアンに遭遇する。狂暴な種族だから殺そうという男たちをテセロ夫人のエミリーが止める。インディアンなら地理に詳しく、水場も知っているはずということで、彼に案内をしてもらおうとするが、まったく言葉が通じない。
通常の西部劇であれば、案内人はインディアンの言葉は多少わかっていて通訳の役目も果たすのだが、ミークはちんぷんかんぷんでここでも役に立たない。インディアンはけっこう長々としゃべるし、祈りの言葉のような唄も唄うが、だれも意味がわからない。エミリーは、インディアンに近づき、貸しを作るためだと言って、ほころびていた彼の靴を修繕してやるが、修繕し終わった状態の靴は画面には出てこない。いろいろと説明不足な映画で、それが悪いということではないが、一貫して登場人物たちが求める答えや結果はあいまいなままだ。だが、直した靴を履くインディアンの足元くらいは見たかった気がする。
この映画は、女から見た西部劇、男たちがヒーローを気取ってドンパチやってる間、女たちは黙々と退屈で過酷な日々の暮らしを営んできた、ということを伝えているのだ、といったことが劇場の解説文に書いてあった。そういう意味で歴史的な1作だと。
そう言われたら、西部開拓時代の女たちがどのような思いでどのようなことをしていたか、リアルなものを見てみたいと思ったし、物静かな開拓民家族のやりとりも見ていたかったし、夕陽に映える幌馬車隊、広がる荒野、馬と幌馬車の列を写す超ロングショットなど美しい画面にも惹かれたが、にも関わらず、頭では思っても、身体がついていかなかった。見ていたいのに、静かすぎて退屈過ぎて夜のシーンが暗すぎて、何度も寝てしまったというのが、正直なところだ。

 

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早稲田松竹のケリー・ライカート特集

 

映画「クライ・マッチョ」を見る(感想)

クライ・マッチョ CRY MACHO
2021年 アメリカ  104分
監督:クリント・イーストウッド
出演:マイク・マイロ(クリント・イーストウッド)、ラフォ(エドゥアルド・ミネット)、マルタ(ナタリアン・トラヴェン)、ハワード・ポルク(ラフォの父。マイクの元雇い主。ドワイト・ヨーカム)、レタ(ラフォの母。フェルナンダ・ウレホラ)、アウレリオ(オラシオ・ガルシア=ロハス)、マッチョ(雄鶏)

★映画のあらすじ書いてます。

元ロデオスターの年老いた男とメキシコの少年が国境目指して旅をする映画。
西部の荒野、メキシコとアメリカの国境、牧場、馬、と西部劇の要素満載である。
さらに、車好きに聞くところによると、マイクが乗る車がいろいろ変わるのも楽しいらしい。最初はシボレーのピックアップトラック。マイクが、メキシコに向かう旅に出て、牧場の馬の群れと並走する車はシボレー・サバーバン、ラフォといっしょになってからは、フォード、ベンツと乗り換えるそうで、その車の選択がかなり渋いらしい。けど、車のことはよくわからないので、そのおもしろさは味わえなかった。
妻子に先立たれ、仕事も引退して一人暮らしをしていたマイクは、元雇い主のポルクから、メキシコで元妻のレタと暮らす息子ラフォを引き取りたいから連れてきてほしいと頼まれる。豪邸で放蕩三昧の暮らしをするレタの元を逃れ、ラフォは雄鶏マッチョを相棒に闘鶏をしてストリートで暮らしていた。
ラフォはかなりたやすくマイクとアメリカの父のところに行くことを承諾するが、国境を目指す二人は、親権を持つレタの手下の追手や、誘拐ということで警察に追われる身となる。
追われる身なのに、途中、メキシコの町でレストランを営む美人の未亡人マルタと知り合い、都合よく牧場主に馬の調教を頼まれ、空き家の教会をねぐらにして、しばらくそこに留まることに。マルタやその孫娘たちと楽しく過ごし、ラフォはその中の年長の娘と仲良くなり、マイクとマルタもお互いに惹かれ合う。
旅を再開した道中、必ずしも父性愛からだけでない父の目論見を知ったラフォとマイクが諍いになったところへ、追手のアウレリオが登場。味方どうしが対立し不穏な空気になったところに共通の敵のインディアンが現れる、西部劇の作劇を思い出す。アウレリオはラテン系のイケメンで仕事をしているだけなのに、ひどい目にあってばかりで気の毒だ。
ラスト、金持ちのポークが自らラフォを迎えに来て、国境の向こう側で車に寄りかかって待っているのがいい。マイクに名残り惜しさを抱きつつ、父の待つアメリカに踏み出すラフォ。マイクはマルタのところに戻る気満々なのだった。
銃撃も激しい格闘もないが、荒野を風が吹き抜けるような開放感が、西部劇のそれを思い出させる。馬もよいが、マッチョという名の雄鶏がだいぶよく、タイトルロールだけのことはあると思った。

 

wwws.warnerbros.co.jp

 

雪で「網走番外地 北海篇」を思い出す(感想)

関東で久しぶりに雪が降った。つかの間の雪景色を見て、ちょっと前に録画で見たこの映画を思い出した。

 

網走番外地 北海篇
1965年 日本 東映 90分
監督・脚本:石井輝男
助監督:内藤誠
出演:橘真一(高倉健)、大槻(田中邦衛)、鬼寅/四十二番(嵐寛寿郎)、葉山/十三番(千葉真一)、十一番(由利徹)、一〇八番(砂塚秀夫)、十九番(炊事班長。山本鱗一)、七番(吉野芳雄)、
安川(安部徹)、金田(藤木孝)、弓子(大原麗子)、浦上(杉浦直樹)、エミ(小林千恵)、雪江(宝みつ子)、孝子(加茂良子)、
志村社長(沢影謙)、田舎の親分大沢(小沢栄太郎)、山上(井上昭文)、水島(小林稔侍)、谷崎(水城一狼)、夏目(石橋蓮司

網走番外地シリーズ第4作。
冒頭は、お決まりの網走刑務所のシーン。仮出所を間近に控えた橘真一は、病を患う十三番の葉山のために特別料理を注文し、料理番の十九番といさかいになる。十九番の味方の看守は、怒って橘の仮出所を取り消すぞと脅してくるが、鬼寅の気迫に満ちた仲裁で事なきを得る。千葉真一が葉山の役で登場する(残念ながら出番はここだけ)。
仮出所した橘は、葉山に頼まれ、トラック運送会社を訪れて未払いの賃金を受け取り葉山の母に送金してやろうとするが、運送会社社長の志村は払う金を持ち合わせず、大雪で鉄道が通れない雪山の難所を行く運送の仕事を引き受ければ金が入るという。橘は運転手を引き受ける。
積荷の依頼人は、怪しげな男安川とその子分らしいチンピラの金田で二人も同乗する。橘の仕事ぶりを見届けようとしてか、志村の娘弓子も密かに荷台に忍び込む。
トラックは、釧路からペンケセップという町に向かう。
大雪の積もる山間の道を行くトラックには、脱走犯(浦上)、ケガをした少女(エミ)とその母(雪江)、心中に失敗した失意の美女(孝子)などの男女が次々に乗り合わせてくる。
ペンケサップの町で雪絵や孝子らを下ろし、橘は大沢組の親分を訪ねて、葉山の代わりにけじめをつけさせる。その後、橘と弓子は、安川と金田の命令でトラックで山に向かう。安川が運んでいたのは覚せい剤の材料で、彼らは山の中腹の雪原に野外精製所を急造し、橘と弓子にも手伝わせて覚せい剤を作る。できあがった覚せい剤はヘリで運ぶ段取りが立てられていた。覚せい剤ができあがると、安川は橘と弓子を殺そうとするが、出所してマタギとなっていた鬼寅が猟銃を持って登場、二人を救うのだった。
後半の雪原の戦いもなかなか面白いが、前半のトラックの旅のシーンがたいへん興味深い。
老若男女というよりは、善悪男女が一台のトラックに乗り合わせる。脱走犯の浦上は、なにかと雪江を気遣い、金田は孝子にやさしくする。安川は弓子を襲おうとして反撃を食らうなど、道中、様々な人間模様が繰り広げられる。ジョン・フォードの「駅馬車」みたいだと思っていたら、石井輝雄監督は「駅馬車」を意識してこの映画を撮ったという話もあるらしい。浦上の由紀子への紳士的な態度は「駅馬車」の元南部貴族の賭博師ハットフィールド(ジョン・キャラダイン)の将校夫人ルーシーに対する態度を思い出させるし、孝子のことが気になる様子の金田は、ダラス(クレア・トレヴァ)に惹かれるリンゴ・キッド(ジョン・ウェイン)のようでもある。「駅馬車」では、ルーシーが上流の婦人で、ダラスは酒場女であったが、こちらでは、逆に雪江が元娼婦で、孝子が上流のお嬢さんとなっているのもおもしろい。
ところで、タランティーノの「ヘイトフル・エイト」を見たとき、タランティーノが「駅馬車」を撮るとこんな感じになるのかなと思い、これはタランティーノ版「駅馬車」ではないかと思ったのだが、豪雪の中を行く馬車という設定を思うと、ひょっとして、この「網走番外地 北海篇」のタランティーノ版だったのかもしれないなどとも思えてきたりして、楽しい。

 

 

 

 

 

 

 

映画「レイジング・ファイア」を見る(感想)

レイジング・ファイア 怒火 RAGING FIRE
2021年 香港 126分
監督:ベニー・チャン
アクション監督:ドニー・イェン
スタント・コーディネーター:谷垣健治
出演:ボン警部(ドニー・イェン)、ンゴウ(ニコラス・ツェー)、
チン、ニン、ウォン、マンクワイ
イウ警部(レイ・ルイ)、フォック(銀行の会長)、副総監、ボン警部の妻(チン・ラン)

★途中までのあらすじを書いています★

 

現代の香港を舞台にしたハードなポリス・アクション。
実直な腕利き刑事と、上層部の裏切りによって犯罪者となり復讐に燃える元若手警官らとの戦いを描く。
香港警察のボン警部(公式サイトではチョンとなっているが、字幕ではボンとなっていた。Imdvでは、"Cheung Sung-Bong”とある)は、長年追い続けてきた凶悪犯ウォンとベトナムの売人との麻薬取引の情報を得て、一味を一網打尽にする計画を立てる。が、直前になってボンのチームだけが出動を禁じられる。
現場には、ボン警部の友人イエ警部率いる警官隊が乗り込むが、正体不明の武装集団が乱入し、居合わせた者たちを誰彼構わず殺傷し、麻薬を強奪して去る。イエ警部も犠牲になってしまう。ボン警部は、警察上層部の息子が起こした暴力沙汰を見逃せという上からの命令に背いたことで直前に任務から外されたのだが、そのため命拾いしたのだった。
襲撃者は、ンゴウとその仲間からなる元警官5人組だった。ンゴウは将来有望な若手で、ボン警部は部下として目をかけていた。ある日、大手銀行の会長フォック氏が誘拐され、犯人の一人を追うンゴウら6名の若手警官チームは、フォック氏の監禁場所を聞き出すため、犯人に暴行を加え、自白後に死なせてしまう。彼らは命令をした副総監の保護を得られず、フォック氏からもやりすぎだと言われ、嘘をつけないボン警部の証言によって、殺人の罪で収監され警察も馘になる。仲間の一人は自殺し、残った5人は出所後凶悪な犯罪者集団となり、警察とフォック氏への復讐をもくろむ。
激しい銃撃戦や、香港の街中でのスピード感に満ちたド派手なカーアクション、あの手この手の格闘シーンと、アクション映画の見せ場満載で、久々に血沸き肉躍る思いを味わった。
ドニー・イェンはこれまで浮世離れした役でしか見たことがなく、「イップ・マン」では詠春拳の達人で黒いチャンパオ(丈の長い中国服)を、「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」ではチアルートというジェダ寺院の守護者で僧侶っぽい服を着ていたので、普通のスーツ姿が新鮮だった。イップ・マンは、チャンパオの袖をまくって白い裏地が袖口に見えたら本気で戦う気になっているとわかったのだが、ボン警部は、上着を脱いで白いシャツの上に防弾チョッキの姿になったとき(なかなか似合う)が闘うときである。
ンゴウ役のニコラス・ツェーは初めて見たが、危険なイケメンを演じてかなり人気が出そうな感じである。
それまでのアクションも楽しめたが、最後のボンとンゴウの一騎打ちは、ナイフでの戦いから、長い棒を振り回しての戦い、そしてそこらにある大道具を倒したりよけたりと大暴れする二人が見られて見応えたっぷりだった。
本編は2人の戦いが終わったところで後日談もなくぶちっと終わるのが香港映画らしくていいのだが、その後クレジットでは、これが遺作となったベニー・チャン監督の姿とともに撮影現場の写真が次々と映しだされ、監督作を見るのは初めてにも関わらず、じんときてしまうのだった。

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