「カササギ殺人事件」のドラマをBS12で放映していたので見たのだが内容の細かいところを覚えていなかったので、小説も読み返してみた。
「カササギ~」の放映が終わったら、「ヨルガオ殺人事件」が始まったので、引き続き視聴したが、こちらは小説は読んでいない。(二つのドラマの放映は2026年5月~8月。書くのが遅くなった)
○カササギ殺人事件 MAGPIE MURDERS
<小説>
アンソニー・ホロヴィッツ著(2017)
山田蘭訳 創元推理文庫 上・下巻(2018)
小説は二重構造になっている。上巻は、アラン・コンウェイという作家の名探偵アティカス・ピュント・シリーズ最新作として表題と同じタイトルの作中のミステリ小説となっている。
1955年のイギリスの田舎町が舞台。パイ屋敷と呼ばれる邸宅の家政婦メアリが主人のサー・マグナス・パイとその妻フランシスが旅行中に邸内で死体で発見される。掃除中に階段を踏み外した事故死とされる。が、それから程なくして邸に泥棒が入り、そしてさらにその後サー・パイが何者かに斬殺される事件が起こる。名探偵アティカス・ピュントは、犯人とされつつあるメアリの息子ロバートの婚約者ジョージーの依頼で町にやってくる。マグナスの妹で財産分与を許されず邸から追い出されたクラリッサ、邸の庭師ブレント、牧師のオズボーン、医師のエミリア、町にやってきて骨董屋を営んでいるホワイトヘッド夫妻など、町の人々が紹介される。アティカスは、チャブ警部補に協力しつつ、町の人々に会って話を聞き、犯人をつきとめていく。
のだが、いよいよこれから犯人が明かされる。というところで上巻は終わる。そして、下巻に入ると話は現代(現実)となっていて、主役はアティカスから、いきなり、アラン・コンウェイのアティカス・シリーズの編集を担当してる出版社の社員スーザンへと変わり、彼女の一人称語りとなる。彼女は、新作「カササギ殺人事件」の原稿を読んでいたのだが、最後の章がなかったのである。ということで、読者は「カササギ殺人事件」の最後の謎解きを未完のまま放置された状態で、現代編に移行され、そしてアラン・コンウェイが自宅の塔から墜落死しそれが自殺か事故か殺人かという謎と小説の最終章はどこにあるのかという新たなミステリのお題にむりやり切り替えさせられるのだ。アランは、スーザンの会社の上司チャールズに遺書ともとれる手紙を送っていた。スーザンは、素人探偵となり、アランの家があったサフォーク州の田舎町に赴き、アランの元妻メリッサと息子のフレデリック、アランの姉クレア、アランの恋人ジェイムズ、映像プロデューサーのレドモンド、ファンド・マネージャーのジョン・ホワイト、牧師のロブソン、弁護士のサジット・カーン、ウェイターのリーなどアランと関わりのあった人々と、ロック警視に会って話を聞き、アティカス・ピュント・シリーズに隠された秘密と、アランの死の真相に迫っていく。その間、スーザンは恋人のギリシャ人アンドレアスからクレタ島でホテルを経営するからいっしょに来てくれと誘われ、また、妹のケイティを訪ねる。アランは昔教師をしていて、アンドレアスとケイティとは顔みしりなのだった。
コンウェイが、アティカス・シリーズに仕掛けたアナグラムの秘密と共に真相が明かされると、紛失していた「カササギ殺人事件」の最終章が見つかる。どうも現代編より、虚構の殺人事件の方が読みごたえがあったように思う。
○カササギ殺人事件 MAGPIE MURDERS <ドラマ>
2022年 全6話 イギリス BBCone
BS12で放映 2026年5~6月放映
監督:ピーター・カッタネオ
原作・脚本:アンソニーホロヴィッツ
出演:スーザン・ライランド(レスリー・マンヴィル)
アラン・コンウェイ(コンリース・ヒル)
アティカス・ピュント(ティム・マクマラン)
アンドレアス・パタキス(アレクサンドロス・ログーテティス)
チャールズ・クローヴァー(マイケル・マロニー)
ジェイムズ・テイラー/フレイザー(マシュー・ビアード)
ロック警視/チャブ警部補(ダニエル・メイズ)
クレア・ジェンキンス/クラリッサ・パイ(ピッパ・ヘイウッド)
ロブソン牧師/オズボーン牧師(チュ・オマンバラ)
マックス・ライランド/マグナス・パイ(ローカン・クラニッチ)
カマル博士/サジッド・カーン弁護士(サンジーブ・コーリ)
小説で上・下巻に分かれていた作中小説「カササギ殺人事件」とスーザンによるアラン・コンウェイ殺人事件のふたつのミステリは、ドラマではシーンが錯綜して同時に進行していく。混乱するといえば混乱するのだが、なかなか斬新なやり口だ。また、アラン・コンウェイは、実在の人物をモデルに小説の登場人物を作り上げているのだが、ドラマでは、実在する人間と作中小説にでてくる人物を同じ俳優が演じていて、ドラマならではの妙味を見せている。
警官や牧師や医師/弁護士は職業でモデルにされたようだが、同じ一族なのに財産を全く分与されず邸を追われたクラリッサとアランの妹クレア、アティカスのチャラい助手フレイザーとアランの愛人ジェームズ(アランはゲイであることをカミングアウトして離婚している)、そして原作にはない、スーザンの父マックスとマグナス・パイを同じ俳優が二役で演じているが、いずれもアランの悪意の表出であるところが意地悪く共通する。
アティカスは、ホロヴィッツが脚本を手掛けた「刑事フォイル」の終わりの方のシーズンでフォイルがMI5で働くようになってからの上司バレンタインを演じたティム・マクマランで、いい味を出している。一方、現在編のヒロインのスーザンは、小説でもドラマでもいまひとつ魅力がかんじられないのが残念だが、ドラマでスーザンが行き詰っていると、いつのまにかアティカスが隣にいて彼女にアドバイスをするシーンが何度となくあって、そこはよいと思った。
○ヨルガオ殺人事件 MOONFLOWER MURDERS
2024年 全6話 イギリス BBCone BS12で放映 2026年7~8月放映
監督:レベッカ・ガットワード
原作・脚本:アンソニーホロヴィッツ
出演:スーザン・ライランド(レスリー・マンヴィル)
アラン・コンウェイ(コンリース・ヒル)
アティカス・ピュント(ティム・マクマラン)
アンドレアス・パタキス(アレクサンドロス・ログーテティス)
ロック警視/チャブ警部補(ダニエル・メイズ)
エイデン/アルジャーノン(ウィル・チューダー)
リサ・トレハーン/メリッサ・ジェームズ(ロザリー・クレイグ)
フランク・パリス/オスカー・ベルリン(マーク・ゲイティス)
これは本は読んでいず、ドラマだけ見た。
レギュラーのキャストは、「カササギ~」と同じ。スーザンは、出版社と上司のチャールズがあんなことになったせいか、出版業界に残ることをやめて、恋人のアンドレアスとともにクレタ島で小さなホテルを営んでいたが、経営はうまくいっていない。
そこへイギリスでホテルブランロウ・ホールを経営するトレハーン夫妻が訪ねてくる。娘のセシリーが失踪したのだが、スーザンが以前手掛けたアラン・コンウェイの著書「愚行の代償」が関わっているらしいというのだ。
「愚行の~」は現実に起きた事件をヒントに書かれていた。その事件は、8年前、ブランロウ・ホールでフランク・パリスという名の宿泊客が殺害されたというもので、従業員で前科のあるステファンが犯人として逮捕され、服役している。が、最近になって「愚行の~」を読んだセシリーは、本の中に真犯人のヒントがあったと家族に告げたあとで、失踪したのだった。謝礼を払うので、調査をしてほしいとトレハーン夫妻から依頼を受けたスーザンは、イギリスに赴く。
「愚行の~」は、ホテルのヨルガオ館で、往年のハリウッド女優のメリッサ・ジェイムズが何者かに絞殺されるという殺人事件を描いていた。アティカス・ピュントは、黒人女性の助手ケインを連れてホテルを訪れる。アティカスは、メリッサとトラブルがあった人間、ホテルの支配人夫妻、メリッサの夫フランシス、映画プロデューサーのベルソン、ファイナンシャル・アドバイザーのアルジャーノンらと、さらにメリッサの主治医コリンズ、メリッサの使用人母子らから話を聞いていく。
一方、スーザンは、セシリーの姉のリサ、セシリーの夫エイデン、フランク・パリスの弟夫妻、ホテルのジムトレーナーのコービーなどに会って話を聞くが、ロック警視からは邪魔者扱いされる。また、スーザンの妹のケイティは家を出て行った夫の借金のため経済的に追い込まれていた。
作中小説と現実が交錯する構成と、モデルとなった実在(ドラマの中での)の人物と作中小説の登場人物を同じ役者が演じている点も「カササギ~」と同じだが、本編では、現実編がさらに8年前の殺人事件と現在のセシリー失踪事件の二つに分かれる(密接な関連はあるのだが)ので、さらにややこしくなっている。スーザンを演じるマンヴィルが歳を取りすぎているのではと思わせることと彼女の個性的なファッションとオーバーアクションに抵抗があったのだが、何話もみているうちに慣れてきた感じ。アティカスは、「カササギ~」のときよりも所かまわず出現してスーザンに助言を与えるようになっている。なにこれと思う人もいるかもしれないが、わたしはなかなかいいコンビだと思う。
https://www.twellv.co.jp/program/drama/kasasagi/
https://www.twellv.co.jp/program/drama/yorugao/

