映画「アゲイン 28年目の甲子園」を見る

アゲイン 28年目の甲子園
2014年 日本 公開東映 120分
監督:大森寿美男
原作:重松清「アゲイン」
主題歌:浜田省吾「夢のつづき」
出演:坂町晴彦(中井貴一工藤阿須加<高校時代>)、戸沢美枝(波瑠)、沙奈美(門脇麦)、高橋直之(柳葉敏郎)、山下徹男(村木仁。キャッチャー、少年野球チームのコーチ)、松川典夫/ノリ(太賀)、柳田建司(西岡徳馬)、立原裕子(和久井映見)、高橋夏子(堀内敬子
野球の話とは言え、鼻っから泣かせるのが狙いのような宣伝に、見に行く気をなくしていたのだが、知人の映画ライターの田中雄二氏が野球が好きなら見て損はないというので行った。
安易な泣かせ話でなく、高校時代の野球仲間との友情や、複雑な関係にある父と娘の心情がきちんと描かれていてよかった。
元高校球児たちが母校のOBでチームを作って甲子園を目指す「マスターズ甲子園」。その事務局を務める神戸の大学の研究室のスタッフである美枝は、両親の離婚によって生き別れた父を震災で亡くしていた。その父は高校野球の名門川越学園で野球部に属していた。美枝は、父の高校時代の野球部のキャプテンだった坂町を訪ね、マスターズ甲子園への参加を勧誘する。が、この代の野球部員たちの間には、複雑な事情があった。甲子園出場を決める県大会決勝前夜に、美枝の父、ノリこと松川典夫が傷害事件を起こし、川越学園野球部は試合出場を辞退、坂町らの甲子園への夢は決勝試合前に断たれてしまったのだ。
46歳の坂町は、実家で独り暮らしをしている。離婚した妻は娘の沙奈美を引き取って再婚していた。が、沙奈美は養父とうまくいかず、実父の坂町には捨てられたという思いを抱いている。大学生になった沙奈美は久しぶりに再会した坂町に対し、投げやりでとげとげしい態度を取る。
映画は、かつての野球部の面々が再会して再び甲子園を目指す中でノリの起こした事件の真相を明かしていくとともに、坂町と美枝の、それぞれの娘と父に対する思いを描いていく。
ノリが事件を起こした経緯については大体予想がついてしまい、若干できすぎの感もしてしまうのだが、毎年出せない年賀状をチームメイトに書いていたことや、年賀状を書く父の姿が美枝にとって数少ない父の思い出であることはよかった。
マスターズの県大会決勝戦、かつてのライバル所沢工業チームの「うちは毎年マスターズで甲子園行ってるから今年は譲りますよ」という申し出を断り、勝負に挑んで、太めのキャッチャーで打者の山下がここぞというところで打つ場面は、すかっとした。
父を亡くした美枝と、娘とうまくいかない坂町が、互いに相手の存在を父と娘のそれに重ね合わせ、心を通わせていく様子が、押しつけがましくなく描かれていてよかった。
ラスト近く、美枝が沙奈美に坂町のことをいろいろ伝えたであろう、二人のやりとりの部分が省略されているのもあっさりしていていい。
チームメイトの高橋が失業していながら妻子とうまくいっているのはほっとするし、山下の太った息子が父の活躍にすぐ涙ぐむのもほほえましかった。
いろいろな部分でいい感じにバランスがとれている映画だと思った。
ポイント:「一球人魂」(「人」の字はまちがいではありません。)
おまけ情報:「マスターズ甲子園」は2004年から実際に開催されている大会で、神戸大学内に事務局がある。

「アゲイン 28年目の甲子園」公式HP
http://www.again-movie.jp/