映画「君たちはどう生きるか」を見る(感想)

君たちはどう生きるか

2023年 日本 124分
監督・原作・脚本:宮崎駿
音楽:久石譲
主題歌:「地球儀」米津玄師
出演(声):牧真人(まひと。山時聡真)、牧正一(真人の父。木村拓哉)、久子(真人の母。木村佳乃)、夏子(真人の継母、久子の妹。木村佳乃)、ヒミ(あいみょん)、
アオサギ菅田将暉)、キリコ(柴咲コウ)、老ペリカン小林薫)、異世界の殿様・大叔父(日野正平)、インコの王(国村隼)、老婆のキリコ(大竹しのぶ)、ほかの老婆たち(竹下景子滝沢カレン阿川佐和子風吹ジュン

★ネタバレあります! 注意!!★

派手な宣伝は一切せず、突然の公開が話題となった宮崎駿監督の新作。
唯一の前情報のポスターが示す通り、鳥がたくさん出てくる映画だった。タイトルの本のことはちょっとだけ出てくる。
太平洋戦争中、空襲による病院の炎上で母を亡くした少年真人は、田舎で工場を営むことになった父とともに、母の生まれ故郷に疎開する。真人は母の妹で新しい母となる夏子に迎えられる。
地元の旧家であるらしい母の実家はとても広い敷地に何棟も建物があるお屋敷で、七人の小人のような七人の婆やが真人の面倒をみてくれるのだった。婆やたちは、湯ばあばやトトロに出てきたおばあさんなどこれまで見たことのある老婆がいっぱいという感じだ(キリコ婆さんだけが面長でちょっと容姿がちがっている)。
真人は森の中で謎めいた塔を見つけるが、そこは異世界への入口となっていた。つわりで苦しむ夏子が憑かれたように塔の奥に姿を消す。彼女を追って、また、死んだ母が生きているという怪しげなアオサギの誘いに乗って、真人は「下の世界」に入り込み、そこで不思議な者たちと出会う。老婆と同じキリコという名の船頭、塔の創造者で世界の王となっている大叔父、火をあやつる力を持つ少女ヒミ、インコの王様と軍隊、ペリカンたち、これから生まれてくるこどもたちの元となるわらわら(すみっこたちを思い出す)など。
少女でなく少年が主人公である。母を亡くし、継母となる叔母に複雑な思いを抱く少年が、不思議な世界で冒険をする。失った母を求める話の主人公は男の子が多いような気がする、「鋼の錬金術師」もごく最近の「ザ・フラッシュ」も死んだ母をよみがえらせようとするのは男(の子)だ。
老婆やカエルや魚やたばこや和洋折衷の建物や森や丘や草原や風や波などこれまで宮崎作品で目にしたことがあるイメージが次々と怒涛のように押し寄せてくる。見慣れたものばかりで目新しさに欠けるという感想も聞くが、これだけ集まると壮観だ。
夏子というやけに色っぽい大人の女性が出てきたと思っていたら後半になってヒミが出てきてやっぱりこういう美少女は出てくるのかと思いつつもちょっとガクッとなり(これは「紅の豚」で感じたのと同じ「ガクッ」だ)、しかも着ているのはメイドみたいな服だと思ったら、夫はアリスだという。この映画は少年版不思議の国のアリスなのだと。夫によれば真人はヒミの登場によって踏ん切りをつけて夏子を受け入れられるようになったのだというが、でも私は、ヒミの登場とその正体を知ってちょっと引いてしまった。母親が自分と同年代の少女となってそれもエプロンドレスを身にまとったアリスのいでたちで現れ、いっしょに冒険をするという発想は、斬新というよりはどうにも不気味だ。
鳥がたくさん出てきて楽しいが、飛行機は出てこない。唯一、出てくるのが、風防である。真人の父正一が経営する工場では戦闘機を作っているらしく、お屋敷に大量の風防が運ばれてきて、また運び出されていく。戦闘機の一部である涙滴型全方位風防(ゼロ戦展示を見に行って覚えた)というものだと思うが、これによって戦闘機のイメージが喚起され、戦時中の話であることが改めて示される。
アオサギの弱点が「風切りの七番」で真人がその羽を使った矢を使うのもちょっと作者の飛行機好きを思わせた。

 

ジブリのHPだけど、ここに映画の情報はほぼない

www.ghibli.jp

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