「千の風になって」とジョン・ウェイン

先日、しばらく会っていない友人と電話で話をした。彼は、映画を通じて知り合ったかなり年季の入った西部劇ファンで、私より20歳は年上の人である。彼の話は、要約すると次のような内容のものだった。

「ちょっと前にヒットした歌「千の風になって」がもともとはアメリカの歌で、その詩をジョン・ウェインハワード・ホークス監督の映画で朗読したとかしないとかという話を小耳にはさんだ。僕は、最近の新しい歌にはあんまり興味がなくて、メロディを聞いたところ日本の歌にしか聞こえないし、そんなことはあるはずがないと思った。思ったんだけど、ジョン・ウェインと聞いちゃ、そのまま受け流すわけにもいかず、ずっと気になっている。若い人(わたしのことだ)ならわかるんじゃないかと思ったんだけど、君、知らんかね。」

で、こっちも気になって調べてみたら、どうも朝日新聞天声人語に載ったのが話の元らしい。
歌が流行る前の平成15年8月28日付の天声人語で、「千の風」というタイトルでこの詩のことが取り上げられ、ジョン・ウェインハワード・ホークスの葬儀の時に朗読したと書かれていた。

ウィキペディアによれば、「千の風になって」は、作家で音楽家新井満氏がアメリカの原詩を訳して曲をつけたとのこと。
原詩は、”Do not stand at my grave and weep”(私の墓の前に立って泣かないで)というアメリカではよく知られているもので、追悼の場などで読まれることが多いそうだ。
出どころについては、インディアンのあいだで語り継がれたという説もあるが、最も有力なのは、1932年、メリーランド州メアリー・フライという主婦が、事情があって親の葬儀に出られない友人をなぐさめるために茶色の紙袋に書きとめた、というものだ。
この作者不詳ってとこや、主婦ってとこや、茶色の紙袋ってとこなどが伝説っぽくていい。
駅馬車」の主題曲となっているアメリカ民謡「おれを淋しい荒野に埋めないでくれ」のタイトルと、どことなく通じるような気がしないでもなく、遅ればせながら興味深い発見だった。
ジョン・ウェインが、ホークスの墓前に立ち、あの声で以下の詩を読み上げるところをかってに想像してみると、ファンとしてはなかなか感じ入るものがある。

Do Not Stand at My Grave and Weep
             (Author Unknown)
Do not stand at my grave and weep,
I am not there. I do not sleep.
I am a thousand winds that blow,
I am the diamond glints on snow,
I am the sun on ripened grain,
I am the gentle autumn's rain.
When you awaken in the morning's hush,
I am the swift uplifting rush
Of quiet birds in circled flight.
I am the soft stars that shine at night.
Do not stand at my grave and cry.
I am not there, I did not die.