映画「グラン・トリノ」を見る

グラン・トリノ Gran Torino
2008年 アメリカ 117分
監督 クリント・イーストウッド
出演:ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)、タオ・ロー(ビー・ヴァン)、スー・ロー(アーニー・ハー)、ヤノビッチ神父(クリストファー・カーリー)、デューク(コリー・ハードリクト)、ミッチ・コワルスキー(ブライアン・ヘイリー)、スティーブ・コワルスキー(ブライアン・ホウ)、理髪師マーティン(ジョン・キャロル・リンチ)、スパイダー(ドゥーア・ムーア)

★ネタバレあります!★


長年連れ添った妻に先立たれた老人ウォルトは、二人の息子やその家族とはうまが合わず、住み慣れた家で愛犬とともに孤独な日々を過ごしていた。
ある日、隣に住むアジア系少数民族の少年タオが、ウォルトが大切にしているヴィンテージ・カー、グラン・トリノを盗みに入る。朝鮮戦争帰還兵のウォルトは、ライフルを手にタオを追い払う。タオは、不良の従兄弟スパイダーらにそそのかされていやいやながら盗みに入ったのだった。やがて、スパイダーらともめるタオを成り行き上助けたことから、ウォルトと隣のモン族一家との交流が始まる。ことあるごとに人種差別用語を連発し、神父にも悪態をついていた彼は、物怖じしないタオの姉スーと言葉を交わし、タオに働くことを教えるうち、次第に彼等とうち解けていく。が、スパイダーの一団が過激な行動をとるようになり、このまま放っておけないと考えたウォルトは、タオとスーのために、ある決意を胸に単身彼等のすみかに乗り込んでいく。
暴力には暴力をという解決方法を取らなかったイーストウッドに感動したということで、高い評価を得ているようだが、私は、これは、「ミスティック・リバー」(2003年)、「ミリオンダラー・ベイビー」(2004年)、「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」(2006年)、「チェンジリング」(2008年)と、このところ立て続けに厳しい人生に向き合う人々の姿をとことんまで突き詰めて描いてきたイーストウッドが、久々に肩の力を抜いて「夢」を描いた作品ではないかと思う。夢とはつまり、「かっこいい死に様を見せる」という老いた男の夢である。
肩の力を抜いたからと言って、手を抜いているわけでは決してない。
ウォルトの毒舌ぶり、頑固親父ぶりは、実に楽しくそして哀愁を誘う。床屋のマーティンとのやりとりなど、日本で言えば江戸っ子の粋な会話という感じなんだろうかと勝手に想像しながら聞くと、英語がよくわからなくてもおかしい。
懺悔を勧める神父が神学校出の若者であるというのもよく、彼がたびたび訪ねてくることで、夫に懺悔をさせてくれと頼んでいた亡き妻のウォルトを思う気持ちも伝わってくるような気がする。ついに懺悔をしに教会に赴いたウォルトが、肝心なことは一切告白しないのもいい。

台詞:「この3つを持って行け。WD-40、バイスグリップ、粘着テープ。有能なやつなら大概のことはこれで処理できる。」("Take these three items, some WD-40, a vice grip, and a roll of duct tape. Any man worth his salt can fix almost any problem with this stuff alone." Imdbより。拙い訳ですみません(^^;)
ウォルトが、タオに言った言葉。ウォルトは、フォード社の工場に長年勤務していた男で、機械を直すのが得意。家のガレージには、たくさんの工具が置いてある。ウォルトは、タオに建設現場の仕事を紹介してやるが、道具を持たない彼に自分の工具を貸してやる。WD-40は防錆潤滑剤、バイスグリップは工具メーカーの名だがレンチの代名詞となっているようで、いずれにしてもプロっぽいのである。

グラン・トリノ [DVD]

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