映画「ゴールデンスランバー」を見た

ゴールデンスランバー
2010年 日本 東宝 139分
監督:中村義洋、原作:伊坂幸太郎、音楽:斉藤和義
出演:青柳雅春(堺雅人)、樋口晴子(竹内結子)、森田森吾(吉岡秀隆)、カズ/小野一夫(劇団ひとり)、鶴田亜美(ソニン)、岩崎英二郎/宅配ドライバー(渋川清彦)、轟静夫/花火職人(ベンガル)、凛香/アイドル(貫地谷しほり)、キルオ/通り魔(濱田岳)、保土ヶ谷康志/下水道専門家(柄本明)、青柳一平(伊東四朗)、青柳照代(木内みどり)、佐々木一太郎/警察庁警備局総合情報課課長補佐(香川照之)、小鳩沢/ショットガンを撃つ警察庁警備局総合情報課刑事(永島敏行)、井ノ原小梅(相武紗季)、大杉/宮城県警本部長?(竜雷太)、児島巡査長(でんでん)、樋口伸幸(大森南朋)、矢島/地方テレビ局ディレクター(木下隆行TKO)、エレベーターの男(滝藤賢一
青年が突然首相暗殺犯に仕立てられ、必死で逃げる様子を描いた良質の巻き込まれ逃亡アクション。題名は、ビートルズの歌のタイトルで「黄金のまどろみ」の意味。
宮城県仙台市に住む30歳独身の宅配ドライバー青柳雅春は、大学時代の友人森田に釣りに誘われしばらくぶりに再会するが、森田は釣りに行こうとはせず、総理大臣がパレードをしている大通りからちょっと外れた脇道に車を止める。そして、たんたんとした調子で、恐るべき陰謀を打ち明け始める。
直後、パレードで大爆発が起きる。森田が車中で話し始めることで点火された物語は、急転直下に進み、あれよあれよという間に青柳は首相を暗殺した凶悪犯として追われる身になっていく。
この手際のよさは気持ちがいい。青柳は、大学時代のサークル仲間や、宅配会社の同僚岩崎(普通のあんちゃんぶりがナイス)や、通り魔キルオ(漫画っぽい不思議キャラ)や病院の患者で下水道専門家の保土ヶ谷(一番怪しげかも)などの協力と信頼を得て危機を脱していくのであるが、彼らとのやりとりは、ひとつひとついちいち気が利いている。何度も挿入される大学時代の思い出のエピソードや窮地を救ったアイドルとの関わりなどに組み込まれた伏線は、やがて次から次へときれいに開花していく。
何も言わずひたすらショットガンを乱射する刑事役の永島敏行、父親役の伊藤四朗、花火職人のベンガルなどおじさんたちの脇役もとてもいい。
★以下ねたばれあります★
が、あまり合点がいかないところはある。長年捨て置かれていた車(今30歳で、車のエピソードが大学4年の時としても6、7年は経っているはず)が、バッテリーを換えただけで動くのかとか、あんな短時間にあれだけの花火を仕掛けられるのか(ていうか1個で十分きれいじゃないか)とか、他にもいくつか。
それと、真犯人は明かされない結末について。本作の主眼はいかにして逃げるかにあり、権力に立ち向かうというのはまた別の話ということではあるのだろう。青柳が逆襲に出るには、例えば「96時間」のリーアム・ニーソンやボーン・シリーズのマット・ディモンばりの、工作員としての卓越した特殊技能などが必要と思われるが、彼の技能は宅配ドライバーのそれで、逃亡においては大変役に立ったが、反撃には役立ちそうにない。幹事長の反対勢力に接触するという手段も考えられるが、しかし、青柳は何が何でも身の潔白を証そうという強い執念や怒りを抱いているようにも思えず、結局生き延びてよしということになる。冒頭とラストの呼応は評判がよいし、青柳と樋口晴子が出会いそうでなかなか出会わないのも上手いと思うのだが、それでも、家庭持ちの元カノにはんこ押してもらってちゃんちゃんでは、小さくまとまってんじゃないのと思えなくもないのだった。

ゴールデンスランバー

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