映画「十三人の刺客」(1963年)を見た

十三人の刺客
1963年 日本 東映 白黒125分
監督:工藤栄一、音楽:伊福部昭
出演:島田新左衛門(片岡千恵蔵)、島田新六郎(里見浩太郎)、倉永左平太(嵐寛十郎)、平山九十郎(西村晃)、三橋軍太夫(阿部九州男)、樋口源内(加賀邦男)、堀井弥八(汐路章)、日置八十吉(春日俊二)、大竹茂助(片岡栄二郎)、石塚利平(和崎俊哉)、佐原平蔵(水島道太郎)、小倉庄次郎(沢村精四郎)、木賀小弥太(山城新伍
鬼頭半兵衛(内田良平)、浅川十太夫(原田甲子郎)、松平左兵衛督斉韶(菅貫太郎)、
土井大炊頭利位(どいおおいのかみとしつら。丹波哲郎)、おえん(丘さとみ)、牧野靭負(まきのゆきえ。月形龍之介)、牧野千世(三島ゆり子)、牧野妥女(まきのうぬめ。河原崎長一郎)、三州屋徳兵衛(木曽落合宿総代、水野浩)、加代(藤純子
三池崇史監督がリメイクを撮るというので、東映時代劇まつりで見た。
最初の方は、江戸時代の役職名や侍言葉の敬語がぼんぼん出てきて、交わされる会話の意味がよく分からなかったのだが、非道な殿様がいてその振る舞いに困り果てた家老が、幕閣の邸の前で切腹をして上訴した、ということらしいと分かってくる。
弘化元年(1844年)、明石藩家老間宮が、藩主松平斉韶(なりつぐ)の悪行を訴え、老中土井利位邸前で自決した。これにより土井は松平斉韶の暴君ぶりを知るが、将軍徳川家慶の弟である斉韶を処罰するわけにもいかなかった。が、将軍が斉韶を老中に抜擢するに及び、土井は危機感を募らせ、旗本島田新左衛門に斉韶の暗殺を命じる。新左衛門は、13人の刺客を集め、参勤交代で江戸から国元に向かう斉韶ら一行の襲撃を企てる。
7人とか11人とかタイトルに数字が出るとどうしても数えてしまうが、13人は多すぎて一度見ただけでは全員を把握できなかった。目立ったのは、嵐寛演じる新左衛門の片腕のような倉永、西村晃演じる凄みのある痩せた浪人平山、里見浩太郎演じる新左衛門の甥っ子で男前の新六郎。新六郎は、放蕩三昧で芸妓に養われて暮らしていたが、新左衛門の心意気に打たれ刺客に加わるのである。それと、200両と引き替えに刺客を引き受ける水島道太郎の佐原、決戦地落合宿で最後に加わる若者小弥太(山城新伍が若い!)といったところか。倉永が連れてきた一派はあまり顔と名が一致しないうちに終わってしまった。
菅貫太郎の悪い殿様ぶりがなかなかよいが、最悪の主君と知りながらも殿を守ろうと孤軍奮闘する家臣鬼頭半兵衛を演じる内田良平の終始険しい表情がよい。
斉韶に、最愛の息子と嫁を死に追いやられ、新左衛門の画策に一役買う、尾張藩の老侍牧野靭負を演じる月形龍之介も渋かった。
先手を打って、行く手を遮り、斉韶の性格から一行が取るルートを予想して、新左衛門は、落合宿という小さな宿場を町ごと買い取って、一行を待ち伏せる。
クライマックスの13対53の襲撃シーンは、とにかく長い。刺客たちは、斉韶ら一行を路地に追い込み、取り囲んで、高いところから矢を射り、槍で突き、地面に降りては刀を振り回して斬りつける。実は、彼らは敵も味方もほとんどが人を実際に斬ったことのない太平の世の侍であるため、斬り合いはめくらめっぽうな感じである。人が入り乱れて誰が誰かよくわからず、逃げているのがどっち側なのかもわからなくなり、誰がいつ死んだのかもわかりにくい。が、平山の死だけは、強烈に印象に残る。体型や渋さから「七人の侍」の宮口精二を引き合いに出してしまうが、かなり対照的な死に様である。
そんな乱戦が延々と続き、最後は新左衛門と半兵衛の対決。新左衛門は、武士の「一分」を口にする。
延々と続き、ぶつっと終わる。ハードボイルドだった。暗殺の密命から、人数集め、地図を用いた作戦会議、襲撃の準備といった筋立ても、銀行強盗を計画・実行するギャング映画などを思わせる。

●リメイクの方は、刺客が役所広司松方弘樹山田孝之伊勢谷友介沢村一樹古田新太、六角精児、石垣佑磨高岡蒼甫波岡一喜近藤公園窪田正孝伊原剛志、悪い殿様が稲垣吾郎、その家臣が市村正親

十三人の刺客 [DVD]

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