映画「サロゲート」を見る

サロゲート Surrogates
アメリカ 2009年 89分
監督:ジョナサン・モストウ
出演:トム・グリアー(ブルース・ウィリス)、ジェニファー・ピータース(ラダ・ミッチェル)、マギー・グリアー(ロザムンド・パイク)、ストーン(ボリス・コジョー)、キャンター(ジェームズ・クロムウェル)、キャンターのサロゲート(ジェームズ・フランシス・ギンティ)、ボビー(デヴィン・ラトレイ)、ストリックランド(ジャック・ノズワージー)、予言者(ヴィング・レイムス
人間の身代わりとなって行動するロボット、サロゲートが普及した近未来のアメリカ。
人々は、自宅で椅子に寝そべってオペレーターとなり、外に出て実際に仕事や遊びをするサロゲートを動かしていた。サロゲートは、金をかければいくらでも自分の望むような姿にすることができる。当然のように、ほとんどのサロゲートが、若くスリムな美男美女である。サロゲートが普及したせいで、犯罪や伝染病や人種差別はほとんどなくなっていた。
が、少数派ながら、サロゲートを拒む人々がいて、彼らは、独立区を形成し、点在するコミュニティで暮らしている。彼らはのリーダーは「予言者」と呼ばれていた。
ある日、サロゲートの発明者キャンター博士の息子のサロゲートが何者かに襲撃され、彼を動かしていた息子本人までが脳を破壊されて死亡する。
未知の武器を用いた殺人犯を追って、FBIのグリアー捜査官とピータース捜査官のサロゲートが捜査を開始する。が、犯人は、サロゲートが立ち入ることを禁止されている独立区に逃げ込む。追跡中に仲間を殺された憤りから、グリアー(のサロゲート)は独立区に侵入して犯人を追い、サロゲートを嫌う独立区住人達の攻撃を受けて破壊されてしまう。
サロゲートを失ったグリアーは、停職処分を受けるが、生身の身体で外に出て独自に捜査を再開する。

サロゲートのグリアーが、やけにつるんとした顔のブルース・ウィリスなのが可笑しい。対して生身の方は、髪が薄く傷だらけで皮膚もちょっとたるんでいて、でも、それがかえってなごむ。久しく外に出ていなかった彼が、しゃかしゃか歩くサロゲートたちをよけながらよろよろと通りを歩く様子は妙に説得力がある。サロゲートの充電装置が街のあちこちに見られたり、中古屋があるのもおもしろかった。
グリアーのサロゲートが次から次へと建物に飛び移っては着地してまた飛んでと独立区で犯人を追う場面や、ピータースのサロゲート(中身は別)が車から車へ飛び移って街中の大通りを逃走する場面など、身体能力抜群のサロゲートの追跡劇は、見ていて楽しい。ピータースのサロゲートは、いろいろ中身が変わるが、一貫してブロンドの美女なのがよい。
サロゲート映像監視ルーム(とでもいうのか)の職員で、生身のままのでぶのボビーもよかった。危機一髪というところで、頭脳の冴えを見せるのが痛快だった。
しかし、グリアーとその妻は幼い息子を亡くしたショックから引きこもりがちになり、サロゲートを使用することになったというのは分かる気がするが、ここまでサロゲートが普及する社会というのはいかがなものか。
ジェームズ・ティプトリー・ジュニアのSF小説接続された女」を思い出したが、あれは容姿に自信のない女が選ばれてこの映画にあるようなオペレーターにさせられるという設定で、ひどく暗く気の滅入る話だったように記憶している。
また、パーマンコピーロボットも思い出したが、あれは、正義の味方として働いているあいだ、留守番をしてもらうためのものだったので、用途としては全く逆だといえる。
ロボットに働かせてその間遊ぶというのならまだしも、健全な人がただ寝そべって指令を出しているというのはどうなんだろう。身体を動かしたいという欲求や、きれいで整いすぎるものに対する違和感は、少数派にとどまらず、もっと多くの人が持つと思う。SFの設定につっこんでみてもしようがないのだが、生身の人間とサロゲートが混在しているくらいがアメリカらしいと思った。
ちなみにタイトルの「サロゲート」は、代理人、代用物といった意味。

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