「ブレードランナー2049」と「ブレードランナー」(感想)

ブレードランナー2049 BLADE RUNNER 2049
2017年 アメリカ 163分
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:K(ライアン・ゴズリング)、リック・デッカードハリソン・フォード)、ジョイ(アナ・デ・アルマス)、マリエット(マッケンジー・デイヴィス)、ラヴ(ウォレス社勤務のレプリカントシルヴィア・フークス)、アナ・ステリン(記憶デザイナー。カルラ・ユーリ)、ジョシ警部補/マダム(Kの上司。ロビン・ライト)、サッパー(農夫・旧型レプリカントの逃亡者。デイヴ・バウティスタ)、ニアンダー・ウォレス(ジャレッド・レトー)、フレイザ(レプリカント解放同盟リーダー。ヒアム・アッバス)、ガフ(エドワード・ジェームズ・オルモス)、レイチェル(ショーン・ヤング

★ねたばれあり!!★

35年ぶりの続編は、設定としては30年後の世界である。
主人公は、新型レプリカントのK。Kは記号で、名前はない。彼は、旧式のレプリカントを狩るブレードランナーで、LAPDロサンジェルス市警)の警官である。
彼が解任した(射殺した)レプリカントのサッパーの住まいから女性レプリカント(実はレイチェル)の遺骨がみつかり、彼女が妊娠・出産していたことが判明する。
本来生殖能力のないはずのレプリカントの子どもの存在は世の秩序を乱すとして、Kの上司のジョシ警部補は子どもをみつけて抹殺するようKに命じる。一方、レプリカント不足からその生殖を考えるレプリカント製造元ウォレス社の代表ウォレスは、研究のため、子どもを見つけてつれてくるよう、会社幹部の女性レプリカント、ラヴに命じる。
レプリカントは成人の状態で作られるため、子どものころの記憶は記憶デザイナーによって作られた物が移植されているのだが、Kは、子どもを捜すうち、自分の子ども時代の記憶が作り物ではなく、本当にあったできごとだったことを知る。自分がレイチェルの産んだ子どもだと思った彼は、子どもの父であるデッカードに会いに行く。デッカードは、放射能濃度が高く無人と化したラスベガスのカジノで隠遁生活を送っていた。
ネオンサインが映える、雨の止まないロサンジェルスの街の風景や、女レプリカントであるラヴの非情さと戦闘能力の高さなどが前作を思わせる。老人となったガフ(役者さんも同じ)が出てきて折り紙を見せるのもなつかしかった。
前作でデッカードレプリカントのレイチェルと恋に落ちるが、Kは、AI搭載のフォノグラムの美女ジョイが恋人である。Kを愛するジョイは、まるでドラマに出てくる幽霊のように、生身の女性の身体に同化して、Kと交わりたいという望みを叶える。彼女とKとのやりとりは十代の恋人同士のようにぎこちなくて切ない。
設定が込み入っていて、映画を見ただけではよくわからない。前作を見ていないとわかりにくいし、検索して確認しないとあいまいなことも多い。さらに検索してもわからないことがあって困る。例えば、木でできた馬の玩具の記憶はだれがなんのためにKに植え付けたのか、結局はっきり示されない。いろいろわからない部分があるのはハードボイルドにはよくあることなのだが、この場合はなんだかまあいいやと思えず、釈然としない感じが残った。
殺伐とした世界を主人公の男が物憂げに行く様子は、前作の雰囲気が引き継がれているように感じられてよかったが、進み具合はゆっくりだ。自分の出自を求めてさまようKに共感できるかどうか。ゴズリングは悪くなかったが、当事者になってしまっているので、どうにもウェットだ。わたしは、前作は、主人公が傍観者として、関わった者たちの生きざまを目にしてやりきれない思いに浸るというチャンドラー的ハードボイルドの哀感が味わえるところがよかったので、そういう意味ではちょっと違った。コアなファンの間では、デッカードレプリカントであるという説があるらしいが、わたしは、だから、デッカードレプリカントでなくていいと思う方である。

ブレードランナー  BLADE RUNNER
1982年 アメリカ 117分
監督:リドリー・スコット
原作:フィリップ・K・ディックアンドロイドは電気羊の夢を見るか?
出演:リック・デッカードハリソン・フォード)、レーチェル(ショーン・ヤング)、ガフ(エドワード・ジェームズ・オルモス)、ロイ・バティールトガー・ハウアー)、プリス(ダリル・ハンナ)、リオン・コワルスキー(ブライオン・ジェームズ)、ゾーラ(ジョアンナ・キャシディ)、セバスチャン(ウィリアム・サンダーソン)、エルドン・タイレルジョー・ターケル)、ハンニバル・チュウ(眼球製作者。ジェームズ・ホン)、ホールデンモーガン・ポール)

1982年に、公開前に渋谷パンテオンの試写でみた。たいへん気に入ったが、当時はあまり話題にならず。
私としては、映像美とか、レプリカントアイデンティティーとかいうことより、雰囲気のあるハードボイルドだから好きだった。雨の降り続く近未来のロサンジェルスの、けばけばしくも暗く沈んだ雰囲気、孤独で物静かなデッカード、やたら強い女レプリカントのプリス、デッカードを助け雨の中でうつむきつつ逝くロイ、折り紙を残すガフ、といったものがそれぞれよかった。ラストのデッカードのナレーションもハードボイルドならではで好きだった。1992年のディレクターズカット(116分)は見ていない。