ブリムストーンの激突 Brimstone

疾走したヴァージルの恋人アリーを追って、1年間旅を続けてきた二人は、リオ・グランデ川に近いうらぶれた町プラシドで娼婦に身を落としたアリーを発見し、店の用心棒を倒して彼女を連れ出す。
ヴァージルとエヴェレットは、ブリムストーンの町で保安官助手の仕事を得て、3人は1つの家に腰を落ち着けることに。町では、もとギャングのボス、パイクが大きな酒場兼娼館を経営して羽振りを利かせる一方、兄弟愛教会(ザ・チャーチ・オブ・ブラザーフッド)の牧師ブラザー・パーシヴァルは、「戦闘的キリスト教徒」であるディーコン(執事)らを率いて勢力を伸ばし、町に乱立するサロンを片っ端から排除していた。パイクとパーシヴァルは裏で手を結んでいるように思えたが、やがてパーシヴァルは、パイクをも町から駆逐しようとし、二人は対立する。
町の二大陣営の対決というよくある話に、町の周辺で牛や人々を襲っては、死体に独特の矢を突き立てていく孤高のインディアン、バッファロー・カーフの話や、彼に襲撃され拉致され暴行された母娘をヴァージルたちが保護する話が絡む。
前2作と同様、主役の二人はあいかわらずとても強いので、気張っている者もそうでない者も死ぬときは容赦なく死に、争いごとは、あっさりと型が付く。
アリーは、あいかわらずアリーで、料理も歌もオルガンも下手だし誰とでもすぐ関係を持つし、後半ちょっといいとこを見せたということなのかもしれないが、おもしろみもだいぶ失われてしまって、どうにもうっとうしい女に見える。
チリカワ族とメキシコ人の混血であるポニーがしぶくてよい。彼は、パイクの手下だったが、インディアンを追跡するためヴァージルらに協力し行動をともにするうちに、やがて彼らの側につく。心に大きな傷を負いながらも次第に心を開いていく少女ローレルもよく、主役の二人にくわえ、無口な登場人物がさらに二人加わったという感じである。(2009.11)
引用:
「見合うぜ」俺が言った。「俺たちに」
「見合うな」ヴァージルが言った。
「俺」は、語り手のエヴェレット。「見合う」は「コメンシュレイト(commensurate)」とルビが付いている。ヴァージルは、知らない単語が出てくるとその意味を聞いて自分でも使おうとする。今回は、それがこの言葉。「同等の、相応の」と言った意味である。軍保安官が、ヴァージルとエヴェレットにブリムストーンでの保安官助手の仕事を提供したときにリスクに見合うほどの金は出せない、というときに用いた。これはその後、物語のクライマックス、町の実力者パイクとその手下たちとの25対2の対決に赴く前に二人が交わした会話の一部。