デンマーク製西部劇「悪党に粛清を」を見る(感想)

悪党に粛清を THE SALVATION
2015年 デンマーク・イギリス・南アフリカ 93分
監督:クリスチャン・レヴリング
出演:ジョン(マッツ・ミケルセン)、マリー(ナナ・オーランド・ファブリシャス)、クリステン(トーク・ラース・ビーケ)、ピーター(ミカエル・パーシュブラント)、ボイチェク(アレクサンダー・アーノルド)、
ヘンリー・デラルー大佐(ジェフリー・ディーン・モーガン)、ポール・デラルー(マイケル・レイモンド・ジェームズ)、コルシカン(エリック・カントーナ)、マデリン(エヴァ・グリーン)、
キーン町長(ジョナサン・プライス)、マリック保安官(ダグラス・ヘンシュオール)

★ネタバレというかあらすじの説明あり

デンマーク製の西部劇。
兄のピーターとともに、デンマークからアメリカ西部へ移ってきたジョンは、妻のマリーと幼い息子のクリステンを呼び寄せ、7年ぶりの再会を果たす。しかし、農場へ向かう途中、2人の男に襲われ、妻子は殺されてしまう。ジョンは、怒りにまかせて犯人たちを撃ち殺すが、その内の一人ポールは、町を牛耳る悪党デラルー大佐の弟だった。デラルーに捕えられたジョンは、激しい暴行を受け殺されかかるが、ピーターによって救い出される。が、ピーターも彼らに殺されてしまい、ジョンは、復讐を果たすため、悪党たちの粛清に向かう。
復讐をメインに据えたハードな西部劇である。妻と子を殺したポールをジョンが殺したせいで、町の人たちはデラルーに町の住人2人の命を差し出さねばならず、保安官はジョーに対し、妻子を殺されたことは気の毒だが殺した相手が悪かったとにべもない。姫と呼ばれるポールの妻マデリンは、インディアンに家族を殺され、舌を抜かれて話すことができない、ポールに拾われたのだが、ポールの死後はデラルーがむりやり自分のものとする。祖母を犠牲にされた雑貨屋の少年ボイチェクが、唯一ジョンに協力を申し出るが、彼もまた激しい銃撃戦で命を落とす。
スタイリッシュで趣味がよく、いまどき天晴れな、ぶれない西部劇である。
寡黙な元兵士のジョンを演じるマッツ・ミケルセンは、渋くてかっこよくて、銃を持った立ち姿もいい。
だが、私は、どうも真面目すぎて面白みに欠けると思った。ジョンもピーターもマデリンもデラルー他の人たちも悪くないのだが、西部に生きる者の心持や気概が伝わってこなかった。それはハードボイルドだからということではなく、スタイルを追うことに捉われすぎて、彼らの中身まで描く余裕がないように思えた。ちょっとした細部につながりを持たせることで、俄然、人は生き生きとして見えるものなのだが、そういうことはなかった。
ロケをした南アフリカの空気は湿っていて、アメリカ西部のようにからっとしていない。白昼の太陽もいまひとつギラギラ感に欠けるように思えた。それはしかたないとしても、より西部っぽくするために、タンブルウィード(アフリカにもあるそう)の10個や20個持ってきて、敢えてどんよりとした空の下で転がすくらいの遊び心でもあればなあと思ってしまうのだった。

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