「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を見る(感想)

マッドマックス 怒りのデス・ロード Mad Max: Fury Road
2015年 オーストラリア 120分
監督:ジョージ・ミラー
出演:マックス(トム・ハーディ)、フュリオサ(シャーリーズ・セロン)、スプレンディド(ロージー・ハンティントン=ホワイトリー)、キャパブル(ライリー・キーオ)、トースト(ゾーイ・クラヴィッツ)、ザ・ダグ(アビー・リー)、フラジール(コートニー・イートン)、ニュークス(ニコラス・ホルト)、イモータン・ジョー(ヒュー・キース=バーン)、リクタス(ネイサン・ジョーンズ)、人食い男爵(ジョン・ハワード)、武器将軍(リチャード・カーター)、スリット(ジョシュ・ヘルマン)、ドゥーフ・ウォリアー(ギター弾き。iOTA)
★設定の説明あり
破天荒な世界観で、かつて一世を風靡した荒廃近未来バイオレンスアクションシリーズの、同監督異主役による、30年ぶりの新作。
どこまでも不毛の砂漠が広がる近未来の世界。マックスは、独裁者イモータン・ジョー率いる軍事集団に捕えられ、“ハイオク”の血液を供給する「血液袋」として利用されていた。ジョーは、岩場に砦を築き上げ、水を一人占めし、子孫を残すため美しく健康な女たちを妻にしていた。ウォー・ボーイと呼ばれる短命で色白で痩躯の青年らは、ジョーのために戦い、名誉の死を遂げることを人生の目標としていた。
ある日、女性大隊長フュリオサとジョーの妻たちが逃亡を謀る。ウォー・タンクと呼ばれるタンク・ローリーで石油の調達に出かける際に、フュリオサは秘かに妻たちを乗り込ませ、途中進路を変えて、彼女の故郷である「緑の地」を目指す。裏切りに気付いたジョーが放った追手軍団と、逃げるフュリオサらと、「血液袋」として手枷足枷口枷を付けられて同行させられていたマックスが自由の身となり、三者入り乱れた壮絶な戦いが展開する。映画が始まってすぐのノンストップ疾走バトル・アクションに圧倒されるが、実は、ほぼ全編が疾走バトル・アクションなのだった。
マックスとヒュリオサらは手を組み、遂にヒュリオサの故郷に辿り着くが、そこはすでに汚染され不毛の地となっていた。彼らは再びジョーの砦に戻る決心をする。つまり、話としては、砂漠を往復するだけ。その行きも帰りもど派手なアクションが繰り広げられる。
説明はほとんどない。マックスは繰り返し亡くした子どものイメージを幻視するが、旧作を見ていない人や見ても内容をほとんど忘れている人には、だいたいのことしかわからないし、隻腕の女兵士フュリオサについては、少女の頃拉致され何度も逃亡を試みたという話から、その壮絶な人生を想像するしかないようにできている。
普通なら、これだけずっと激しいアクションシーンが続くと、逆に一本調子に感じられて飽きてしまうものなのだが、しかし、今回わたしは全然飽きなかった。アクションを見せるためのあの手この手の30年分のアイデアが、次から次へと披露され、「こう来るか、そんでもって次はこう来るか」と、わくわくどきどきしっぱなしだった。
例を挙げれば、冒頭、口枷を外そうとマックスがヤスリで頭の後ろをごしごしとこすりながら疾走するタンク・ローリーの屋根を走る、この口枷がなかなか外れないのがよい、タンク・ローリーを止めてマックスとフュリオサと美女たちが砂漠で取っ組み合うところも双方の必死さが伝わってきてよかった、ジョー配下の暴走軍団もいろいろ気をてらっていていい、騎兵隊ならラッパを吹くところをずうっとエレキギターを弾いているロック男(ドゥーフ・ウォリアー)がいるのが楽しい。ジョー側がフュリオサらのドライバーに狙いをつけ、いざ撃とうとすると妻の一人であるスプレンディドがばっと後部席のドアを開けて阻止するのも痛快だった(スプレンディドはジョーの子を身ごもっているため、ジョーは彼女を撃つことができないのだ)。車に立てたポールに登って高所からびよんびよんと揺れながら攻撃したり、キャブレターにガソリンを吹き込んでパワーアップしたり、無茶苦茶な攻撃手法を見せるかと思えば、フュリオサがマックスの肩を借りて長距離狙撃をするなど、古典的でちょっといい感じの細部もある。
ハーディのマックスは悪くないが、タイトルロールにしては地味で控え目である。フュリオサの方が目立っているという声も聞くが、しかし主役は、砂漠をひた走るウォー・タンクだろうと思った。
汚い、ひどいと言われようが、スピード感にあふれ、みもふたもなく、おおらかで、豪快、わたしにとっては、ここ最近で最も愛すべき映画である。

<関連映画>
マッドマックス(1979年) 監督:ジョージ・ミラー、主演:メル・ギブスン
マッドマックス2(1981年) 監督:ジョージ・ミラー、主演:メル・ギブスン
マッドマックス サンダ―ドーム(1985年) 監督:ジョージ・ミラー、主演:メル・ギブスン