映画「ある決闘 セントヘレナの掟」を見る(感想)

ある決闘 セントヘレナの掟 THE DUEL  元のタイトル:BY WAY OF HELENA
2016年 アメリカ 110分
監督:キーラン・ダーシー=スミス
出演:エイブラハム・ブラント(ウディ・ハレルソン)、デヴィッド・キングストンリアム・ヘムズワース)、マリソル(アリシー・ブラガ)、アイザックエモリー・コーエン)、ナオミ(フェリシティ・プライス)、ロス知事(ウィリアム・サドラー)、モリス医師(ラファエル・スバージ)、マリア(キンバリー・ヒダルゴ)、カルデロン将軍(ホセ・ズニーガ)

★ネタバレあります★

「悪党に粛清を」に続くウェスタン・ノワール第二弾とか、「地獄の黙示録」西部版と聞いて、またも暗い西部劇かと思いつつも、せっかくの新作なので見に行った。
1886年、メキシコとアメリカの国境を流れるリオ・グランデ川に連日メキシコ人の遺体が流れ着く。州知事は、テキサス・レンジャーのデヴィッドに、上流の町マウント・ハーモンへの潜入捜査を命じる。町の有力者である説教師のエイブラハム・ブラントは、南北戦争中に名を知られた南軍兵士であったが、デヴィッドとはさらに深い因縁のある男だった。幼少のころ、ヘレナという町で、諍いからブラントに決闘を挑んだ父が彼に敗れて死んだのだった。その決闘はヘレナ式と呼ばれ、お互いの左手を縛った状態で小ぶりのナイフで攻撃するという過酷なものだった。(西部史に詳しい都築哲児氏によれば、これは実際にヘレナという町でこういう形式の決闘があったという記録が残っているらしい。)
デヴィッドは、いっしょに行きたいと言い張るメキシコ人の妻マリソルを伴ってマウント・ハーモンを訪れ、ブラントの勧めで新任保安官となる。説教師であるとともに資産家であるブラントは町に君臨していた。彼は美人のマリソルが気に入り、信仰を説いて彼女を取り込もうとする。町は閉鎖的で自ら訪れる旅行者はめったにいなかったが、ブラントが呼ぶ「客」は頻繁にやってきた。密偵を続けるデヴィッドは、ブラントとその一味が行っている残忍な「商売」を目撃する。
白い衣装に身をつつんだスキンヘッドのハレルソンが、派手で怖い説教師を不気味に演じて逆に爽快な感じさえする。対するヘムズワースも食われる主役に甘んじてはいない。腕の立つガンマンで、復讐心のみに捕らわれずブラントに対するのがよい。
ブラントの息子アイザックは、大物を父親にもつバカ息子で、かつての西部劇にもよく見られた役回り。だめな奴だが、父に認めてもらおうと悲壮な決意をしてデヴィッドにヘレナ式決闘を挑むものの、やはりあっさり敗れてしまって、ちょっと憐れを誘う。
最後の岩場でのデヴィッドとブラントの撃ち合いはたいへん見応えがある。血がやたら出るし、ブラントの動きに気づかないデヴィッドはいささか間抜け、それを女性に助けられるというのも定番すぎてなんだかなという感じだが、最近はとにかく多勢に無勢、敵が多けりゃ多いほど盛り上がるだろうといった設定のものが多くて(「マグニフィセント・セブン」も「グレート・ウォール」も然り)ちょっとうんざりしていたので、1対1の対決を丁寧に描いてくれたのが、よかった。

ある決闘~セントヘレナの掟~ [DVD]

ある決闘~セントヘレナの掟~ [DVD]