映画「海洋天堂」をシネサロン和光の上映会で見る

海洋天堂  海洋天堂 OCEAN HEAVEN
2010年 中国 98分
監督・脚本:シュエ・シャオルー薛暁路
音楽:久石譲
出演:ワン・シンチョン王心誠(ジェット・リー李連杰)、ターフー大福(ウェン・ジャン文章)、リンリン鈴鈴(グイ・ルンメイ桂綸鎂)、チャイ柴(ジュー・ユアンユアン朱媛媛)、水族館館長(ドン・ヨン董勇)、ターフーの母(カオ・ユアンユアン高圓圓)

★ネタというか、あらすじバラしてます★

ジェット・リーが、ノーヒーロー、ノーアクション、ノーギャラで、挑戦した人間ドラマ。
シンチョンは、水族館の技師として働きながら、21歳になる自閉症の息子ターフーを男手ひとつで育ててきたが、癌に侵され、余命いくばくもないことを医師から宣告される。自分の死後、一人残されるターフーを思い、彼はターフーが自分で身の回りのことができるように厳しく教え始めると同時に、彼を受け入れてくれる施設探しに奔走する。
絵に描いたような難病家族愛ものの設定で、アクションなしのジェット・リーなど、チャンバラなしの時代劇、銃撃なしの西部劇と同様で通常ならパスするところなのだが、上映してくれたのが、シネサロン和光という地元の市民団体、映画館のない和光市で市民ホールを使って定期的に映画を上映してくれているありがたい団体なので、とりあえず見に行ったのだった。
だからアクション映画好きの身からすればあまり期待せずに行ったのだが、これが、大陸的おおらかさというか、ゆるやかで、おしつけがましくなくてよかった。なにより、こうした題材にも関わらず、主演のジェット・リーはじめ、誰も泣かない。隣人のチャイがちょっと涙ぐんだり、ターフーがシンチョンに怒られてちょっとべそをかく程度である。号泣しなくても、悲しみや親の愛の深さは見ている者に伝わってくるのが、ほんとうによかった。
冒頭いきなり、親子心中のシーンで始まる。シンチョンは、海上に浮かんだボートのヘリにターフーと並んで座り、自分と彼の足に縄で重りをつけて飛び込む。が、次のシーンでは二人で家に帰ってくる。一瞬、さっきのシーンはラストシーンの先見せカットだったのかと思ってちょっと暗い気分になったが、実は泳ぎのうまいターフーが縄をほどいて自分も父も助けてしまったことがわかる。
後の方でもターフーを助けに着衣のままプールに飛び込んだシンチョンが逆にターフーに助けられるシーンがある。泳ぎが好きなターフーは、シンチョンの勤務先の水族館館長の好意によっていつもプールで泳がせてもらっているのだ。
この水族館の水槽やプールの映像がとてもきれいで、悲しい話をさわやかなものにしている。
シンチョンが、ターフーに自分は海亀だと言って、わざわざ着ぐるみっぽい甲羅をつくって背負って、そこまでやるのかというくらい滑稽な様子を見せるのだが、これがまたわかっていても、ラスト、水族館の大きな水槽で海亀とともに泳ぐターフーの姿を見てじんときてしまうのだった。
ターフーはすぐぬいぐるみをテレビの上に置く。シンチョンは、テレビの上に置くなと何度も注意する。ターフーを施設に預け、家に一人となったシンチョンは、ぬいぐるみをわざわざテレビの上に置いてみる。そして、シンチョンの死後、ターフーは、テレビの上に置いたぬいぐるみを取って他のところに置く。そうした細部も気が利いている。
水族館の館長、雑貨屋を営む隣人の女性チャイ、水族館で興行したサーカス一座の女ピエロのリンリン、ターフーの恩師の先生などとの交流も人情味があってよかった。

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