映画「カウボーイ&エイリアン」を見る

カウボーイ&エイリアン Cowboys & Aliens
2011年 アメリカ 118分
監督:ジョン・ファブロー
原作:スコット・ミッチェル・ローゼンバーグ「カウボーイ&エイリアン」(コミック)
出演:ジェイク・ロネガン(ダニエル・クレイグ)、ウッドロー・ダラーハイド大佐(ハリソン・フォード)、エラ(オリヴィア・ワイルド)、ドク(サム・ロックウェル)、ナット・コロラド(アダム・ビーチ)、エメット(ノア・リンガー)、ミーチャム(クランシー・ブラウン)、タガート保安官(キース・キャラダイン
周囲での評判はあまりよくないが、なかなか楽しい変り種西部劇だった。
アメリカ西部。正体不明の飛行物体に家族を連れ去られた町の男たちが、追跡隊を編成して、敵を追う。一行を率いるのは町を牛耳るボスのダラーハイド大佐で、彼の部下と、記憶喪失に陥ったお尋ね者ジェイク・ロネガン、妻をさらわれた医者兼商店主のドク、保安官の祖父をさらわれた少年エメット、牧師のミーチャム、謎の女エラなどが加わる。
道中、ジェイクの元駅馬車強盗仲間やアパッチ族が絡み、やがて一行は敵の本拠にたどりつくが、それは宇宙から飛来した塔のような宇宙船だった。
ニューメキシコでロケをしたとのことで、西部の雄大な風景が堪能できる。荒野を行く追跡隊の面々は、それぞれ個性が出ていてよい。ハリソン・フォードが頑固なボス役を好演している(ラストの宇宙船内でのエイリアンとの対決では、インディ・ジョーンズのようにも見えるが)。旅を通してたくましくなっていくのは少年エメットだけではなく、慣れない銃を手にするドクもしかりである。牧師のミーチャムが死んで埋葬されるとき、他に誰もいないため、ドクが苦手そうに追悼の辞を述べるシーンがいい。難点は、主演のクレイグが、ちょっと暗めであまりカウボーイっぽくないことだ。強いし、敵の飛行物に飛び移るアクションも見せてくれるが、荒野を行く西部男は、やはりもうちょっとからっとしていてほしい。
タイトルで西部劇ファンとSFファンの双方を引き込もうとして、どちらからも引かれてしまったか。敵がエイリアンという時点でアウトという西部劇のオールドファンもいるようだ。かつては、無法者と保安官、あるいは元北軍兵士と南軍兵士など、対立する白人の男たちが共通の敵であるインディアンの襲撃を受け、手を組んで立ち向かったものだが、今回は、白人とインディアンが手を組んで共通の敵エイリアンをやっつける。もはやインディアンを敵にできなくなってしまったため、醜悪なエイリアンを敵に仕立ててやっつけ放題という塩梅である。要はやっつけられる悪い敵がいれば誰でもいいのであって、こうしたシフトがさらに進めば、エイリアンとカウボーイが手を組んで、実は一番悪かった白人一味をやっつけるといったことなども起こるかもしれない。この事態を、志が低いと批判的に見るか、まあ活劇ってそんなもんだからと受け入れるかは、見る人によって違ってくると思われる。
が、それにしてもSFと思ってみると、あまり楽しくないと思われる。エイリアンの造形にも、他の異星人が地球人に成りすまして救援に来るという設定(「ヒドゥン」やスターシャを思い出させる)にも目新しさはなく、彼らがなんで金(きん)をほしがるのかとか、あれだけ人をさらう理由も一応人間の弱みを知るためといってはいるが、いまひとつよくわからない。あえて言えば、ワイヤーのようなもので一人ずつさらっていくという方法は、アナログすぎて逆におもしろかった。しかし、「スーパー8」といい、本作といい、エイリアンの設定が安易すぎる、もっときちんと詰めてほしいと思った。

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