映画「ウルフマン」を見る

ウルフマン The Wolfman
アメリカ 2010年 102分
監督:ジョー・ジョンストン
特殊メイクデザイン:リック・ベイカー
出演:ローレンス・タルボット(ベニチオ・デル・トロ)、ジョン・タルボット卿(アンソニー・ホプキンス)、グエン・コンリフ(エミリー・ブラント)、シン(アート・マリック)、アバライン警部(ヒューゴ・ウィーヴィング)、マリーヴァ(ジェラルディン・チャップリン
満月の夜になると、凶暴な獣人に変身して人々を襲う狼男の悲劇を描く。
1890年代のイギリス。故郷ブラックムーアへ帰ってきた舞台俳優のローレンス・タルボットは、兄を惨殺した犯人を追ううち、狼男に傷を負わされ、自身もまた狼男になってしまう。
激しい襲撃シーンや死体の描写は生々しいが、映画のつくり自体はいたってオーソドックス。19世紀のイギリスの町並みや荒れた洋館やジプシーのキャンプやガーゴイルに爪をかけて遠吠えをする狼男のカットなどにも古風な雰囲気が漂う。
主演のトロは、男前でないところがよく、死んだ兄の婚約者グエンへの思いや意志に反して殺人を犯してしまう狼男の苦悩を味わい深く演じている。水辺でローレンスがグエンに水切り(回転をかけて石を投げて水面で石を跳ねさせるあれ)を教えるシーンなど、なつかしくて泣けてくる。
一方、ホプキンスは、自分の身に起こったことをむしろ楽しんでいる父狼男を喜々として怪演している。
衆人環視の中での変身やラストの狼男親子対決は、斬新でおもしろいが、全体の印象は、地味ながら雰囲気のあるクラシカルホラーの一品。
オリジナル:「狼男」(1941年アメリカ)監督:ジョージ・ワグナー、主演:ロン・チェイニー・ジュニア
おまけ(というか映画とは全く関係ないのですが):オリジナルは見ていないのだが、主人公のローレンス・タルボットいう名前、どこかで聞いたことがあると思った。和田慎二の漫画「スケバン刑事」というか、そのエピソードのひとつとして繰り込まれている、黒ばらのマリアが主人公の「大逃亡」という別作品漫画に出てくる神父さんの名前である。「スケバン刑事」の主要キャラ沼重三の育ての親で、「大逃亡」では鬼保護司だった沼さんが、「ローレンス・タルボット神父!」と叫ぶ大きめのコマがあったので、妙に記憶に残っていたのだ。あの名前は狼男からとったのかと今になって知ったのだった。