映画「ハングリー・ラビット」を見た

ハングリー・ラビット Seeking Justice
2011年 アメリカ 106分
監督:ロジャー・ドナルドソン、脚本:ロバート・タネン、トッド・ヒッキー
出演:ウィル・ジェラード(ニコラス・ケイジ)、ローラ・ジェラード(ジャニュアリー・ジョーンズ)、サイモン(ガイ・ピアース)、ジミー(ハロルド・ベリー)、トゥルディ(ジェニファー・カーペンター)、ダーガン警部補(サンダー・バークレイ)
★ねたばれあり。「ハングリー・ラビット」という謎の言葉についても書いてます★
ニコラス・ケイジ主演の巻き込まれものサスペンス。
ニューオリンズの高校で英語を教えている教師のウィルは、チェロ奏者の妻ローラと地味だが幸せに暮らしていた。
ある夜、ローラが暴漢に襲われ、重傷を負う。
ショックを受け落ち込むウィルにサイモンと名乗る謎の男が、不穏な申し出をしてくる。ちょっとした簡単な作業と引き換えに、犯人に報復をしてやるというのだ。
迷ったウィルは報復を依頼し、やがてローラを襲った犯人は何者かに射殺される。
サイモンは、私的に犯罪者を抹殺する組織、警察に変わって被害者の無念をはらす、”正義”の集団の支部長だったのだ。
半年後、サイモンはウィルに見知らぬ他人の殺害を要求してくる。
殺人を拒み続けたウィルだが、指定の場所に出向いたことから、殺人犯として追われる身となる。彼は、逃亡しながらも、わずかな手がかりからサイモンとその組織の正体を探っていく。
眉間にしわを寄せて高校生たちにシェイクスピアを説く高校教師のウィルと同様、映画も始めから終わりまで生真面目である。罠にはまって窮地に陥ってから反撃に出てサイモンとの対決に至るまで、全く遊びやのんびりしたところがなく、人によってはそれが平板に映ってしまうようだ。
私としては、終始手に汗を握る感じで楽しんだ。ウィルが敵の手から逃れようと高速道路を横切るシーンでのアクションなどかなり見応えがあった。
また、サイモンの指示で病院の自販機でチョコを買うシーンは、単にチョコを買う様子が大まじめに撮られているのが可笑しかったし、謎の警部補の尋問で「好きな色は?」と聞かれ、寄りによって「紫」と答えるのもなんだか可笑しかった。
が、なんといってもこの映画で効いているのは、邦題ともなっている、“The hungry rabbit jumps.”(飢えたうさぎは跳ぶ)という奇妙なフレーズである。何度も口にされるこの言葉は、組織の符帳である。頭文字を取って”hungry”は”human(人間)”、 “rabbit”は”reason(理性)”、 “jumps”は”justice(正義)”を表すという、アルファベットならではの暗号といった感じである。「ハングリー・ラビット」と意味不明の言葉が口にされるだけで、組織の人間であることや、組織の存在を知っていることが瞬時にわかる。合い言葉とはたいへん興味をそそられるものであるが、常々映画の中では今ひとつ活かされていないように感じていた。その妙味を存分に味わえたという点だけでも、観てよかったと思える映画だった。

ハングリー・ラビット [DVD]

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