映画「飛べ!ダコタ」を見る

飛べ!ダコタ
2013年 日本 配給アステア 109分
監督:油谷 誠至(あぶらたに せいじ)
音楽:宇崎竜童、主題歌:石井里佳「ホームシック・ララバイ」
出演:森本千代子(比嘉愛未)、木村健一(窪田正孝)、森本新太郎(村長。柄本明)、村上敏江(洞口依子)、高橋源治(消防団長。ベンガル)、浜中幸三(校長先生。螢雪次朗)、石川(通訳をさせられる大学講師。山本浩司)、佐吉(綾田俊樹)、木村とよ(中村久美)、篠田和子(芳本美代子)、松乃(園ゆきよ)、望月(佐渡稔)、ブラッドリー少佐(機長。マーク・チネリー)、ディヴィット少尉(ディーン・ニューコム)、母の写真を入れたペンダントを持つイギリス兵、太めのイギリス兵、上海総領事


予告編で目にしたダコタに釣られて見に行く。
太平洋戦争終戦後まもないころ、佐渡島の村で実際にあった出来事がベースになっている。
昭和21年(1946年)1月、佐渡島高千村の海岸に、外国の飛行機が不時着する。機はイギリス空軍の輸送機ダコタ(DC-3)で、数名のイギリス兵と東京に運ぶ途中だった上海総領事を乗せていた。
終戦から1年も経っておらず、複雑な思いを抱く島の人々は、元敵国の兵士たちへの対応に戸惑う。が、村長の新太郎(柄本明が好演)は、自宅で経営する旅館へ招くことを決意し、娘の千代子は彼らを快く迎える。
島の人々は、それぞれ事情を抱えている。消防団団長の高橋は、息子を戦争でなくしている。敏江は息子の戦死の報せを信じず、生還を待っている。海軍兵学校で訓練中に足を負傷して帰ってきた健一は、自宅にこもり、鬱々とした日々を過ごしている。千代子と健一は互いに想い合っているが、健一は彼女に対しても心を閉ざしたままだ。手のひらを返したように軍国主義から民主主義に一転した社会に対し、彼が胸の内に抱える怒りとやりきれなさが推し量れて、切ない。
村に「のた」と呼ばれる大波がくる時季になる。「のた」は、「来るかもしれないし、来ないかもしれない。だが、来たら手遅れだ」というもの。島の人々は、力を併せて人力で海岸にあった飛行機を高台まで引き上げる。機長のブラッドリー少佐が感謝の言葉の途中で感極まって口ごもり、それまで話した内容を通訳しようとする青年(石川)を、村長が、その必要なはないと押しとどめる。なんでもかんでも説明過剰の昨今の風潮にあっては、稀少な、いい場面だ。
飛行機の整備がすんでも、離陸するためには滑走路が必要だった。そこで海岸に500メートルの滑走路を造ることになる。イギリス人と島の人々が総出で石を運び、並べ、固める工事を行う。
出発の日、島の人々が海岸に並んで見守る中、ダコタは、完成した滑走路を走行して、飛び立っていく。
予告編やチラシの宣伝からほぼ想像される通りの展開、ほぼ想像されるいい話が、たんたんと描かれる。島の人もイギリス人も地味だがそれぞれ丁寧に個性が描かれている。佐渡の海が美しく、千代子がたびたび訪れる海岸の斜面の東屋に吹く海風は強くて寒いが、気持ちがよさそうだ。押しつけがましいところがなく、見ていて心地のいい映画である。
が、飛行機に関しては、物足りなかった。タイトルにダコタとあるが、主眼は人間ドラマの方に置かれ、飛行機への思いはうすい。整備の様子があまり描かれず、どこが壊れたのか、ちゃんと直せたのかが不明で気になる。最後の離陸のシーンも感動的だと思うのだが、飛行機好きとしては、もっとダコタが見たかった。滑走路を走行するにあたっては、これでもかというくらい、いろいろなアングルで撮って魅せてほしかった。やったあ! 飛んだあ!ともっと高揚したかったというのが、正直なところだ。
補足:舞台となる高千村は、佐渡島北部沿岸の村で、明治22(1889)年に発足、昭和31(1956年)に北海村と合併して相川町となり、2004年の大型合併で佐渡市に組み入れられる。現在、佐渡市に高千という地名が残っている。
http://www.tobedakota.com/

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