映画「ラッシュ/プライドと友情」を見る

ラッシュ/プライドと友情 RUSH
2013年 アメリカ 124分
監督:ロン・ハワード
出演:ジェームズ・ハントクリス・ヘムズワース)、ニキ・ラウダダニエル・ブリュール)、スージー・ミラー(ジェームズの妻。オリヴィア・ワイルド)、マルレーヌ(ニキの妻。アレクサンドラ・アリア・ララ)、クレイ・レゴッツォーニ(イタリア人レーサー。ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ)、ヘスケス卿(ジェームズのスポンサーの資産家。クリスチャン・マッケイ)、ルイス・スタンリー(デヴィッド・コールダー)、看護士ジェマ(ナタリー・ドーマー)、アラステア・コールドウェル(スティーヴン・マンガン)、スターリング・モスアリスター・ペトリ)、バブルス・ホースリー(ジュリアン・リンド=タット)、デティ・メイヤー(コリン・スティントン)、エンツォ・フェラーリ(アウグスト・ダラーラ)

★ネタばれというか、内容についての言及あり!

実在のF1レーサー、ジェームズ・ハントニキ・ラウダ。サーキットでの戦いを中心に、対照的な2人の男の関わりを描く。
イギリス人のジェームズは、陽気で女好き、繊細な部分もあるが、いきあたりばったりで、死を身近に感じれば感じるほど生きている実感を味わえると言い、勝つために命をかけることも厭わない。
オーストリア人のニキは、マシンの整備に自ら関わり、レースに際しても緻密な分析を行う、死の確率が20%を超えるレースには参戦しない、慎重な頭脳派で、頭がいい分いけすかない奴でもある。フェラーリの車を「豚だ」とけなして徹夜で整備させたり、車幅が規定と1.5センチ違うと通告してジェームズの優勝を取り消させたりするのだ。
フォーミュラ3(F3。メジャーリーグでいう3Aみたいなものか)のレースで初めて顔を合わせた2人は、以来、相手を強く意識し、ライバル同士となる。
2人はレーサーとして名を上げ、F1で活躍するようになる。1976年、チャンピオンのニキと、彼を王座から引きずりおろすことを悲願とするジェームズは、熾烈なトップ争いを繰り広げる。が、悪天候の中、決行された第10戦ドイツブランプリで事故が発生、ニキは全身火傷の重傷を負う。
肺からの吸引と言う過酷な治療を行うニキは、ジェームズがレースに勝ち続け、自分に迫ってくる様子をテレビのニュースで目にし続ける。
皮膚を移植し、傷跡が残る身体で、ニキは事故からわずか42日で復活、日本グランプリでの決戦に臨む。
F1については殆ど何も知らないのだが、レースのシーンはわくわくどきどきして見た。車があれだけ速くあれだけたくさん走っているのに、途中でそんなにわけがわからなくならなかった。
ニキが後に妻となる女性マルレーヌと出会うシーン。乗り合わせたイタリアのミーハーのあんちゃん2人がまたいい。彼らはマルレーヌに、ニキは有名なレーサーだと言うが、彼女は信じない。「レーサーは、長髪でセクシーでシャツのボタンを外している」もので、必要ないからと安全運転に徹するニキの運転ぶりを見て「おじいちゃんみたい」とまで言う。冷静沈着なニキが、女にいいところを見せるため、一般道でいきなり暴走するのは痛快だ。
復活して火傷のあとも生々しい姿で記者会見を行ったニキに対し、絵に描いたように嫌な質問をするジャーナリストを、後でジェームズがぶんなぐる。ニキがそのことを知らないのがいい。
あっさりした、男の友情を描いたドラマを久しぶりに見た。
説明過剰なセリフはなく、画面で伝える。でも肝心なことはちゃんと言う。
号泣はないが、じわじわくる。演者も観客も涙涙のドラマより、こういう方が私は好きだ。
最後のイタリアの小さな飛行場でのニキとジェームズのシーンは、場所がいいし、小型飛行機の周囲を移動しながら話すのがいいし、ジェームズが仲間に呼ばれてちょっとせかされているのがいいし、お互いに「チャンプ」と呼び合って別れるのがいい。
James Hunt: I'll see you on race day, champ.
Niki Lauda: You will, champ.

命がけの体験を共有し、互いに認め合った相手とさらりと別れる。アメリカのアクション映画の王道的ラストシーンだと思った。