映画「グリーンブック」でヴィゴ・モーテンセンを楽しむ

グリーンブック GREEN BOOK

2018年 アメリカ 130分

監督:ピーター・ファレリー

出演:トニー・リップ/バレロンガ(ヴィゴ・モーテンセン)、ドクター・ドナルド・シャーリー(マハーシャラ・アリ)、ドロレス・バレロンガ(リンダ・カーデリー)、オレグ(ディミテル・D・マリノフ)、ジョージ(マイク・ハットン)

アカデミー賞を受賞した、黒人と白人のおじさんのアメリカ南部道中記。

1962年のアメリカ。ニューヨークのナイトクラブで用心棒をしていたトニーは、店が改装で休業したため職を失ってしまう。新しい仕事は、黒人ピアニスト、ドクター・シャーリーの運転手兼用心棒だった。ドクは人種差別の甚だしいアメリカ南部へのツアーを行うため、腕っぷしの強いトニーを雇ったのだった。「グリーンブック」は、黒人が南部を旅するにあたってのガイドブックで、黒人専用の宿などが紹介されている

学があっておしゃれで品行方正のドクと、がさつな大食漢で賭け事や喧嘩が大好きなイタリア系のトニーのやりとりは、ちぐはぐで愉快である。

トニー役のヴィゴ・モーテンセンと言えば「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのさすらいの王子アラゴルン役で一躍名を馳せたが、私としては、アラビアを舞台にした「オーシャン・オブ・ファイヤー」で、砂漠で行われる過酷なレースに挑むアメリカのカウボーイ、フランク・ホプキンスを演じたときの彼が印象深い。いずれにしても男前のヒーローの役であり、この作品のチラシを初めて見てむっちりと太ったヴィゴを目にしたときはびっくりした。巨大なピザを折りたたんで食らい、ケンタッキー州に入るやケンタッキー・フライドチキンをバケツで買って車を運転しながら貪り食っては骨をぽいぽいと窓から投げ捨てる。服を脱げばお腹がでっぷり出ている。役作りとはいえ、あのストイックなフランクはどこに?と思ったが、ちょっとした間に見せる憂い顔などはまごうかたなきヴィゴ・モーテンセンで、逆にそこがよいと思うのだった。

がさつとはいえ、トニーはイタリア系の親族や仲間がたくさんいて、家族思いの頼れるやつである。マフィアのボスに目をかけられているが、金に困ってもやばい仕事は断る良識も持っている。

妻のドロレスに言われて不器用ながら手紙を書くが、見かねたドクが知恵を貸し、文面は途中からロマンチックなものとなる。ドロレスは手紙を読んでうっとりするが、実はちゃんとわかっていたことがラストで明かされる。

南部でドクはさまざまな人種差別に遭い、トニーは黒人の実情を目の当たりにする。

トニーは、貧困さから言えば自分の方がずっとブラックだとドクに言い、ドクは、黒人でもない、白人でもない孤独を訴える。

ツアーを終え、クリスマスの夜に地元に戻った二人は、それぞれの家に帰る。トニーの家ではにぎやかなクリスマス・パーティが宴たけなわであるが、一方、ドクはカーネギー・ホールの上の豪華マンションに一人さびしくたたずむ。「淋しい方から言わないと」というトニーの言葉に従い、ドクが勇気を出してトニーの家の玄関口に現れるラストは、ほのぼのとする。

ほどよく品のある、バランスの取れた良品だが、私としては口当たりがよすぎて少々物足りない気がしないでもない。

f:id:michi-rh:20190305160210j:plain

f:id:michi-rh:20190305160902j:plain
f:id:michi-rh:20190305160732j:plain