映画「ジョーカー」を見る(感想)

ジョーカー JOKER

2019年 アメリカ 122分

監督:トッド・フィリップス

出演:アーサー・フレックス(ホアキン・フェニックス)、マレー・フランクリン(ロバート・デ・二―ロ)、ソフィー・デュモンド(ザジー・ビーツ)、ペニー・フレック(フランセス・コンロイ)、ランドル(グレン・フレシュラー)、ゲイリー(レイ・ギル)、トーマス・ウェイン(ブレット・カレン)、ブルース・ウェイン(ダンテ・ペレイラオルセン

★映画の内容に触れています★

 

※ちょっと奥歯にものがはさまったような感想になってしまいました。

バットマン」シリーズに登場する悪役ジョーカーがいかにして生まれたかを描く。
ゴッサム・シティの貧民街で、病弱な老母と二人で暮らす青年アーサーは、コメディアンになる夢を持ち、芸人を派遣する事務所に所属し、ピエロに扮して営業に出て日銭を稼いでいた。彼は以前は入院していたようだが、今は退院して、市の福祉支援サービスによって定期的にスタッフと面談している。
「ジョーカー」と言えば、古くはジャック・ニコルソン、新しくはヒース・レジャーが演じ、いずれも評判となった強烈な悪役である。“悪い”ピエロがひょうひょうとおどけ踊る姿は、鬼気として迫力があった。
が、心の病を抱えて7種類の薬を飲んでいるとか、笑いだすと止まらない病気の症状が出て本人は全然笑いたくないのに延々とひきつった笑いを続けなきゃならないとか、母親にも自分にも妄想癖があるとか、心優しい青年がひどい環境の中で追い詰められて精神を病んでいく様子が描かれ、そんなようなことが「ジョーカー」の背景にあったのだと言われても、なんだかなあというのが正直なところである。
混乱する路上で車上に立ち暴徒の喝采を浴びるピエロの扮装のアーサー、これぞ「ジョーカー」誕生の瞬間なのだろうが、そしてホアキン・フェニックスの立ち回りは確かにとてもかっこいいのだが、わたしには、それほど突き抜けるものが感じられなかった。このジョーカーが、これまで見たジョーカーたちのように悪意に満ちた笑顔で、警察陣やバットマンに向かって、おどけてみせる姿はあまり想像できないのだ。
やがてバットマンとなる少年ブルース・ウェインも登場する。こちらは、終始にこりともしない陰気な様子が、大人になってからの彼を彷彿とさせていた。
この映画はだいぶヒットしているようである。映画全体を通して現実とアーサーの妄想との境界があいまいに描かれているのが興味深く、ラストの方、ピエロ姿のアーサーがパトカーで護送される際に街で暴徒化するピエロたちの群れを目にするシーンは印象的で、そうした作劇的に秀逸なところが評価されているのならいいのだがと思う。