映画「ミスター・ガラス」を見る

ミスター・ガラス  GLASS
2018年 アメリカ 129分
監督・脚本:M・ナイト・シャマラン
出演:ケヴィン・ウェンデル・クラム/パトリシア/デニス/バリー/ヘドウィグ/ビースト/他(ジェームズ・マカヴォイ)、デヴィッド・ダン(ブルース・ウィリス)、イライジャ・プライス(サミュエル・L・ジャクソン)、ケイシー・クック(アニヤ・テイラー=ジョイ)、ジョセフ・ダン(スペンサー・トリート・クラーク)、イライジャの母(シャーレイン・ウッダード)、エリー・ステイプル医師(サラ・ポールソン

★注意! 本作だけでなく、「アンブレイカブル」や「スプリット」についても、いろいろネタバレしてます! 結末についても書いてます!★










アンブレイカブル」(2000年)のデヴィッドとイライジャ、「スプリット」(2016年)のケヴィン(他多数の人格)が再登場する。
アンブレイカブル」は見ていないので見てから行きたかったのだが、時間がなかったのでやむを得ず内容をざっと検索してあらすじや登場人物を知ってから見た。
「スプリット」は公開時に見たので、まだけっこう覚えている。ケヴィンは、子どものころ母から虐待され自身を守るために多数の人格を生み出してしまった多重人格者である。人格が表に出ることを「照明」が当たると言い、オリジナルの人格であるケヴィンはめったに出てこない。24人の人格があるらしいが、主に出てくるのは、パトリシアという女性、潔癖主義者のデニス、陽気でおしゃれなバリー、永遠に9歳のヘドウィグなど、そして、凶悪な誘拐殺人犯、半獣半人のビーストがラストに登場する。

デヴィッドは、不死身の強い身体を持つだけでなく、犯罪者に触れただけでその罪を感知するという能力も持つ。彼は、息子のジョゼフ(「アンブレイカブル」の子役によく似ていると思ったら、大人になった本人が再び同じ役で出演)の協力を得て、犯罪者を見つけて密かにやっつけるという地味なヒーロー活動をしていた。ある日、ヘドウィグと路上ですれ違って接触したデヴィッドは、彼(ビースト)が監禁した若い女性たちを殺すビジョンを見る。彼は女性たちの監禁場所に侵入してビーストと対決するが、警察が駆け付け、二人はフィラデルフィアのとある施設に収容される。
精神科医のエリー・ステイプルは、二人を対象にスーパーヒーローについての研究を進める。彼女は、デヴィッドとビーストが自分をスーパーヒーローだと思っているのはすべて妄想で、スーパーヒーローなど存在しないという持論を証明しようとする。このエリーがもうちょっと魅力的かおもしろければよかったのに、そうでもないので彼女の話は退屈である。
そしてその施設には、薬を投与され、廃人のようになったイライジャも収容されていた。(「アンブレイカブル」のあらすじによると、イライジャは、とてつもなく高い知能を持つが、全身の骨が非常に弱く、ちょっとした接触によっても骨折してしまうという異常体質に生まれついていた。コミックコレクターであり、スーパーヒーローの存在を信じる彼は、デビッドが不死身であることを証明するため、列車事故を起こすという犯罪を犯し、収監されていたのだ。)タイトルの「ミスター・ガラス」はガラスのような身体を持つイライジャのことである。

異能者と異能者の対決、デイヴィッドの子ども時代の事故によるトラウマ、多重人格者の目まぐるしい人格の入れ替わり(「スプリット」同様、マカヴォイが文字通りのひとり舞台で怪演している)、虐待されて育ったもの同士の心の通い合いなど、いろいろな要素が入り混じってきて、さらにケヴィンの亡き父親についての新事実が発覚し、この映画はどこへ行きたいのかと戸惑い始めたころ、実は廃人のふりをしていたイライジャが目覚めたように行動を開始する。
彼は、デヴィッドとビーストを解き放つ。新設されたタワーで派手に対決だと言いながら、しかし、タワーに行きつくどころか、施設の前の芝生広場で、デヴィッドとビースト、警察を交えた戦いが始まり、ジョゼ、ケイシー、イライジャの母も駆けつけ、彼らの目の前で、乱戦が繰り広げられる。
最も暴れるのは、最強の力を持つビーストだが、彼を止めるのはデヴィッドではなく、「スプリット」における事件の被害者の少女の一人だったケイシーである。彼女は自分自身も叔父から虐待を受けていたので、ケヴィンに深い共感を抱いていた。暴れるビーストに、母によるアイロン型の火傷の跡が見られるのが切ない。彼女の腕の中で、ケヴィンとして息を引き取るシーンは、唐突に涙を誘う。
デヴィッドは苦手な水で攻められ、イライジャはビーストに全身の骨を折られ、二人とも悲惨な最期を迎える。
ステイプルは、世の中の力の均衡を乱すスーパーヒーローは必要ないと主張する謎めいた団体に所属していた。結果的に3人を葬り去ったことで彼女の使命は果たされたかに見えたが、しかし、イライジャは生前にネットでの反撃を仕組んでいたのだった。

スーパーヒーロー映画なのに出てくるのはおじさんとおじいさんでみんな陰気で、みんな心に傷を負っていて、みんな死んでしまう。映画の着地点は、スーパーヒーローはいるのだという訴えということになるのだろうか。シャマランらしい(という言い方もなんだが)、変に散らかった、このすっきりしなさぶりを楽しめれば、かなりおもしろい映画だと思う。

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