「パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド」

1作目「呪われた海賊たち」は、呪われた海賊バルボッサ(ジェフリー・ラッシュ)とジャック・スパロウジョニー・デップ)のブラック・パール号争奪とのろいの金貨をめぐる物語。
2作目「デッドマンズ・チェスト」は、フライング・ダッチマン号のデイビィ・ジョーンズ(ビル・ナイ)とジャックとの「血の契約」と、ジョーンズの心臓の入った「デッドマンズ・チェスト(死者の宝箱)」の争奪と、ダッチマン号に囚われたウィル・ターナーオーランド・ブルーム)の父親の話が入り交じっていた。
で、今回はシリーズ3作目。登場人物が増え、1、2作目からの話が続いている上に、新しい話が加わるので、状況は複雑になっている。
東インド貿易会社対海賊の戦いをメインに、シンガポールの海賊サオ・フェン(チョウ・ユンファ)の登場、「海賊の墓場」への航海とそこからの生還、海賊の首領会議、ジョーンズと海の女神カリプソの話などが介入。ウィルとジャックの間でゆれるエリザベス(キーラ・ナイトリー)の女心に、ノリントンの切ない片恋も絡んで、彼女の恋の行方も気になるところ、とかなりもりだくさんである。
ノリントンの手柄によりデイビィ・ジョーンズの心臓を手に入れた東インド貿易会社のベケット卿は、フライング・ダッチマン号を支配下に治め、海賊殲滅をもくろむ。
一方、ウィルとエリザベスは、ヴードゥ教の予言者ティア・ダルマによって蘇ったバルボッサとともに、ジャックを救出すべく「海賊の墓場」に向かうが、海図を手にいれるため、シンガポールの海賊サオ・フェンを訪れる。バルボッサは、東インド貿易会社の脅威に対抗するには、海賊の団結が必要だとし、海賊首領会議の開催を提案、サオ・フェンの協力を得る。
「海賊の墓場」は生と死のはざま。デイビィ・ジョーンズとの血の契約を破って海の怪物クラーケンの餌食となったジャックは、ここに送られ、白昼の砂丘の世界で愉快に立ち往生していた。
ジャック・スパロウがいっぱい、というジョニー・デップ・ファンへのサービスともいうべきシーンが何回となく見られるが、今回は、海賊みんなの話になっていて、ジャックとウィルは、クライマックスまであまり目立たない。チョウ・ユンファも影がうすい。逆に活躍が目立ったのは、エリザベスとバルボッサ。エリザベスのお転婆ぶりは頂点に達し、文字通り最強の女海賊と化す。バルボッサは、1作目の悪役とはだいぶ印象が代わり、頼りになるおやっさんとしてリーダーシップを発揮しまくる。
「海賊の掟」の番人として、ローリング・ストーンズのキーズ・リチャーズが登場。海賊だが、ギターもつま弾く。
ということで話は込み入っている。ノリントンの剣がそういえば1作目でウィルが作ったものだったとか、愉快な二人組のひとりラゲッティの義眼が実は意味のあるものだったとか、小道具なども細かく見ていくと興味はつきないようではある。
が、長いし、途中でどうでもいいやと思ってきてしまうことも否めない。理屈を追うのは放棄してなんかごちゃごちゃしてるなあと漫然と受け流し、それよりゴージャスな映像を楽しむというのも見方のひとつという気がする。
クライマックスは盛り上がる。エリザベスの心が定まり、最後にデイビィ・ジョーンズの心臓を突き刺し、彼に替わって死者を送る船フライング・ダッチマンの船長となるのは誰かという決着もつく。なかなか切なくていい。
クレジットロールのあとに、さらなる美しいエンディングが待っているので、最後まで見届けたいと思ったら途中で席を立たないように。クレジットはかなり長いが、我慢して待ち続けたことが報われる瞬間が味わえるというものだ。

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