映画「トゥルー・グリット」を見る(追記あり 2011.4.24)

トゥルー・グリット True Grit
2010年 アメリカ 110分
監督:ジョエル・コーエンイーサン・コーエン
原作:チャールズ・ポーティス「トゥルー・グリット」(「勇気ある追跡」改題)
出演:マティ・ロス(ヘイリー・スタインフェルド/エリザベス・マーヴェル)、ルースター・コグバーン(ジェフ・ブリッジス)、ラビーフマット・デイモン)、トム・チェイニー(ジョシュ・ブローリン)、ラッキー・ネッド・ペッパー(バリー・ペッパー)、クインシー(ポール・レイ)、ムーン(ドーナル・グリーソン)、ヘイズ(ブライアン・ブラウン)、ハロルド(ブルース・グリーン)、熊男(エド・コービン)、コール・ヤンガー(ドン・ピール)、
★ネタばれあり★
ジョン・ウェインアカデミー賞を受賞したことで知られる1969年の西部劇「勇気ある追跡」のリメイク。少女が父の復讐を果たす物語である。
牧場の使用人チェイニーに父親を殺された14歳の少女マティ・ロスは、彼を捕えるため、連邦保安官ルースター・コグバーンを自費で雇う。父親に牧場の経理を任されていたらしいマティは、ビジネスと法律に詳しく、口が達者で、大人相手に一歩も退くことなく、てきぱきと駆け引きを行う。コグバーンは、ベテランらしいが、老いて、飲んだくれている。テキサスレンジャーのラビーフが加わり、3人はチェイニーが合流した無法者ネッドの一味を追ってインディアン居留地に足を踏み入れて行く。
「父の仇をわたしは取る!」という、「ワンピース」のルフィばりに明確で強固なビジョンを持った少女マティ・ロスに、凄腕保安官も誇り高きテキサスレンジャーもそして観客もぐいぐいと引っ張られていく。
クライマックスの1対4の対決は、オリジナルでジョン・ウェインが見せた馬上で手綱銜えて片手にライフル片手に拳銃というのとはさすがに違い、ブリッジスは馬上で二丁拳銃だったが、旧作のシーンを彷彿とさせる見せ場であった。
敵方のリーダー、ネッドの印象もオリジナルに近いものがある。悪党ながら割と紳士的で言動に筋が通っているという、昔懐かしい西部劇の無法者のボスの雰囲気を漂わせている。「ノーカントリー」であれだけ不気味な殺し屋を登場させたコーエン兄弟であるだけに、このあたりに彼らのオリジナルに対する敬意がこめられているようにも感じた。
というふうに、コーエン兄弟らしい乾いたケレン味がちらほら見受けられるつつも、骨太でストレートな西部劇に仕上がっている。
やたらと高い木につるされた死体を下ろすため、マティがやたらと高い木に登るシーンがとてもいい(高い所と木登りがが好きだからかもしれないが)。
エピローグは、25年後。39歳になったマティが、ウエスタン・ショーのテントを訪れ、コール・ヤンガー(ジェシー・ジェームズ率いる銀行強盗団の一員だった実在の無法者。服役していたが赦免されショーの興業をしていた。)からコグバーンの死を告げられる。マティは、亡き父の後を継いで大変苦労して牧場をきりもりしてきたらしく、見るからにこわそうなおばさんになっていて、コールの隣にいたフランク・ジェームズ(ジェシー・ジェームズの兄)をクズよばわりして去っていく。小生意気とはいえ、お下げ髪の可憐な少女だったマティの変貌ぶりがちょっと悲しいが、このあたりのハードボイルドな展開はコーエン兄弟の味か。


<追記>
機会があってもう一度映画館で見た。
1回目では気がつかなかったことがあったので、ちょっとメモ程度に追記しておく。
・最初と最後に柩を送るカットが同じような感じで入る。最初は、マティの父フランク・ロスの遺体を運ぶため。そうして最後は、マティがコグバーンの遺体を引き取って家の近くに埋葬するため。
・死体を置き去りにするシーンがいくつかあるが、それらがマティの視点でのトラックバックで撮られている。最初は、小屋の前にクインシーやムーンたちの死体を置いて行くとき。埋葬しないことを気にしていたマティは、馬上から遠ざかる死体をずっと見ている。ラスト、コグバーンが蛇に噛まれたマティを運ぶとき、射殺したネッドたちの死体が横たわる中を馬で進んでいくが、このときも運ばれるマティの視点で死体が遠ざかっていく。そして最後は、コグバーンが撃ち殺した馬のリトルブラッキーの死体。なんだかんだ生意気なこと言っているが、死体を置き去りにすることに痛みを覚える少女の思いが表されているのだろうかと思った。

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