映画007シリーズ最新作「スカイフォール」を見る

007 スカイフォール SKYFALL
2012年 イギリス/アメリカ 143分
監督:サム・メンデス
出演:ジェームズ・ボンドダニエル・クレイグ)、M(ジュディ・デンチ)、マロリー(レイフ・ファインズ)、イヴ(ナオミ・ハリス)、Q(ベン・ウィショー)、タナー(ロリー・キニア)、キンケイド(アルバート・フィニー)、シルヴァ(ハビエル・バルデム)、セブリン(ベレニス・マーロウ)、パトリス(オーラ・ラパス


★ねたばれあります!!★


シリーズ50周年の23作目。
世界各地で潜入調査中のエージェントの名を掲載した極秘リスト、ハードドライブが盗まれる。犯人を追っていたジェームズ・ボンドは、大追跡の末に列車から海に転落し、MI6は犯人を取り逃がす。(※MI6は、イギリスの秘密情報部SIS(SECRET INTELLIGENCE SERVICE)の旧称で、軍情報部第6課(Military Intelligence section 6)の略だが、今でも使われているらしい。−ウィキペディアより−)
やがてリストに載っていたエージェントの名が公表され、MI6の本部が爆撃される。死んだと思われていたボンドは、実は南の島でのんびり過ごしていたが、MI6襲撃のニュースをテレビで見て復活の意を固める。
若いQやMの後継者が登場して、Mと007は、年寄り扱いされる。007はエージェントの再試験を受けてことごとく不合格という体たらくであるが、それでもMは強引に採用する。ダニエル・クレイグのボンドは実はこれまであまりのれなかったのだが、老いを感じるボンドを演じる彼はなかなかいい。
話はあまりスパイものっぽくない。敵は、悪の組織というよりは、Mに恨みを持つ個人シルヴァである。彼は元MI6のエージェントであり、Mと私的なつながりを持っている。国際的な謀略とか世界征服とか関係ないので、別にスパイでなくても成り立つ愛憎劇で、地味だ。
でも、おもしろい。
オープニングは、車、バイク、列車を駆使した豪快なアクションの連続でわくわくする。
上海の夜のネオン瞬く高層ビルでの、敵方の殺し屋パトリスとボンドの格闘シーンも見応えがあるし、シルヴァが正体を現す離れ小島が軍艦島なのもよかった。
かつてMに見放された凄腕エージェントのシルヴァと、Mが発砲命令を下したせいで味方の銃撃を受け海に落ちたボンド。MI6の非情なルールに従ってMに酷い目に遭わされた二人だが、シルヴァはMを恨み襲う側に、ボンドはMを守る側に分かれるのだ。
ノーカントリー」でおかっぱ頭の衝撃的な殺し屋を演じたバルデムが、今回はブロンドの長髪スタイルで、敵役のシルヴァを怪演。これが実にきもくてよい。「気持ち悪い」というより、この場合「きもい」というのがぴったりくる気がする。
クライマックスは、ボンドが自分の故郷であるスコットランドで、Mとともにシルヴァ一味を迎え撃つ。だだっ広い荒野の中にボンドの生家がぽつんと立っている。廃屋と化しつつあるその家で、戦闘が繰り広げられる。家に残された銃器はボンドの父が使っていた古い猟銃のみ、加勢する昔馴染みの猟師キンケイドも年寄りということで、ここでもまた懐旧感が漂う。
若いQとボンドとのやりとりもいいし、あの女性も出てきたりして、ファンサービスに抜かりはない。アストン・マーチンが登場して007のテーマががんがんと響き渡った日には、条件反射的に血がたぎってきて、感無量となった。