映画「藁の楯」を見る

藁の楯  わらのたて
2013年 日本(公開ワーナー) 125分
監督:三池崇史
原作:木内一裕「藁の楯
出演:銘苅一基(警視庁、警部補。大沢たかお)、白岩篤子(警視庁、巡査部長。松嶋奈々子)、奥村武(警視庁、警部補。岸谷五朗)、神箸正貴(警視庁、巡査部長。永山絢斗)、関谷賢示(福岡県警、巡査部長。伊武雅刀)、大木(警視庁、警部、銘苅の上司。本田博太郎)、清丸国秀(殺人犯。藤原竜也)、由里千賀子(タクシーの運転手。余貴美子)、蜷川隆興(資産家の老人。山崎努
財界の大物である老人蜷川は、幼い孫娘を殺した指名手配中の容疑者清丸に莫大な額の懸賞金をかける。清丸を殺害した者には10億円を支払うという広告が新聞に掲載される。
福岡に潜伏していた清丸は、身の危険を感じて福岡署に出頭する。
清丸は取り調べのため警視庁まで移送されることになり、懸賞金目当ての襲撃者を警戒した当局は、警護チームを編成する。警視庁警備部警護課4係(SP)の銘苅と白岩、同捜査一課刑事の奥村と神箸、そして福岡県警刑事の関谷の5人がメンバーとなる。
清丸を乗せた護送車の他に4台の同型の護送車を用意し、周囲を警備隊が取り囲むという、大がかりで物々しい警備の中、一行は高速道路を出発する。が、ネット上で「清丸サイト」というサイトが公開され、清丸の乗った車両がマーキングされるという事態が起こる。
銘刈らは、高速道路を下り、列車での移動に切り換える(この新幹線のロケは、台湾の高速鉄道で行ったそうだ。走行する列車は、日本の700系新幹線を改良した700T型)。が、やがて、清丸サイトには、清丸の乗る列車の車両が示され、一行は列車に乗っていた男たちの襲撃を受ける。
清丸をかくまっていた男、病院の看護師、警備隊員、暴力団風の男たち、中小企業の社長など、一般人とプロが入り乱れて様々な襲撃者が清丸を殺そうとする。銘刈らは、プロらしく事態に対処していくが、列車で神箸と関谷が脱落、残る銘刈・白岩・奥村の3人と清丸は、山間の駅で列車を降り、徒歩と車での移動となる。
清丸の位置の情報を漏らしているのは誰なのか。そして清丸国秀は守るに値する人間なのか。この二つの点に的を絞ったため、話はすっきりと明快に、そしてハードにぐいぐいと進む。
情報漏洩者の追及をめぐって、5人の警護者たちは仲間を疑わざるを得ない状況に陥る。
幼い少女を無惨に殺し、出所してすぐまた蜷川の孫娘を殺した清丸は、下劣で突飛な言動を繰り返す。藤原竜也の憎まれ演技は適度にスパイスが利いていて、警護チームのメンバーの憎悪を駆り立てていく。しかも、銘刈は無謀運転による事故で妻を亡くしていて、白岩は女手ひとつで小学生の男の子を育てていて、神箸は被害者の少女の無残な遺体を捜査現場で目にしている。彼らは清丸もしくは清丸のような男をより憎みやすい立場にある者たちなのだった。清丸を殺した方がいいのではないかという言葉は彼ら自身の口から何度となく発せられる。
人の顔のアップが多すぎると思わないでもなかったが、仲間を疑い、任務にも疑問を感じるような状況に陥った警護チームの面々の逼迫した気持ちを表しているのかもしれない。
犯人の人権という問題もあまり説教くさくなく描かれ、エンターティンメントとして楽しめる映画になっていると思う。
おまけ:私は見ていないのだが、犯罪者の護送中に懸賞金目当ての人々の襲撃を受けるという設定は、アメリカ映画の「S.W.A.T.」(2003年。監督:クラーク・ジョンソン、出演:サミュエル・L・ジャクソンコリン・ファレル)に似ているとのことだ。こちらは、護送される麻薬組織の幹部が、テレビの報道で「自分を逃がしてくれたら1億ドル払う」という宣言をするらしい。

藁の楯 (講談社文庫)

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