映画「シン・ゴジラ」を見る(感想)

シン・ゴジラ SHIN GODZILLA
2016年日本 東宝 120分
総監督・脚本・編集:庵野秀明
監督・特技監督樋口真嗣
准監督・特技総括:尾上克郎
音楽 鷺巣詩郎伊福部昭

★大きなネタバレあり。注意!!★



出演:矢口蘭堂内閣官房副長官巨大不明生物特設災害対策本部事務局長→同副本部長、特命担当大臣長谷川博己)、赤坂秀樹内閣総理大臣補佐官内閣官房長官代理。竹野内豊)、カヨコ・アン・パタースン(米国大統領特使。石原さとみ)、志村祐介内閣官房副長官秘書官。高良健吾)、
大河内清次(内閣総理大臣大杉漣)、東竜太(内閣官房長官柄本明)、花森麗子(防衛大臣余貴美子)、財前正夫(統合幕僚長。国村隼)、里見祐介(農林水産大臣→総理大臣。平泉成)、泉修一(保守第一党政調副会長→内閣総理大臣補佐官松尾諭) 、内閣危機管理監(渡辺哲)、内閣府特命担当大臣中村育二)、国土交通大臣矢島健一)、 総務大臣(浜田晃)、文部科学大臣手塚とおる)、
尾頭ヒロミ環境省自然環境局野生生物課課長補佐。市川実日子)、森文哉(厚生労働省医政局研究開発振興課長・医系技官。津田寛治)、安田龍彦(文部科学省研究振興局基礎研究振興課長。高橋一生)、間邦夫(生物学者。国立城北大学大学院生物圏科学研究科准教授。塚本晋也)、
統合幕僚副長(鶴見辰吾)、タバ戦闘団長(ピエール瀧)、東部方面総監幹部幕僚長(橋本じゅん)、東京都知事光石研)、東京都副知事藤木孝)、警察庁長官官房長(古田新太)、警察庁刑事局局長(モロ師岡) 、防災課局長(諏訪太朗)、外務省官僚・臨時外務大臣嶋田久作)、外務省官僚・新政務担当総理秘書官(神尾佑)、資源エネルギー庁電力・ガス事業部原子力政策課長(野間口徹)、警察庁危機管理担当要員(加藤厚成)、消防庁危機管理担当要員(阿部翔平)、原子力規制庁監視情報課長(黒田大輔)、経済産業省製造産業局長(吉田ウーロン太)、官邸職員(片桐はいり)、消防隊隊長(小出恵介)、自衛隊員(小林隆斎藤工KREVA石垣佑磨)、生物学者原一男犬童一心緒方明)、ジャーナリスト(松尾スズキ川瀬陽太三浦貴大)、避難者(森廉前田敦子ほか)、牧悟郎博士(岡本喜八。写真のみ)、野村萬斎ゴジラモーションキャプチャ
(※出演者の氏名・役職については映画を見ただけではとても把握しきれず、映画.com、ウィキペディアなどを参照しました。)

東京湾に突如として現れた巨大不明生物ゴジラ
未曽有の特殊災害に直面し、政府関係機関の人々は必死の対策を試みる。対応は後手に回り、そのくせすぐに事態を楽観するやつがいるとはいえ、てきぱきと早口で発言していく官僚の人々はけっこう有能そうである。
いったん水中に引き返したゴジラは、進化を遂げさらに巨大化した姿を現し、鎌倉に上陸して武蔵小杉を通って東京に向かう。自衛隊の攻撃は効果がなく、日本政府はアメリカ軍に救援を求めるが、ゴジラ放射性物質のビームを放出して町を破壊する。(わたしは「エヴァンゲリオン」はよく知らないのでそれを思わせる要素はわからないのだが、進化前の芋虫のようなゴジラの瞳孔の開いた目はトトロとか猫バスのそれに似ているように感じられ、ゴジラが放つレーザービームは昔のゴジラの火炎放射というよりは「ナウシカ」の巨神兵みたいで、ジブリっぽいところがあると思った。)
ゴジラは、東京の街を破壊し汚染しながら丸の内までやってくるが、エネルギーを使い果たして東京駅の前で休眠状態に入る。
その際、総理大臣を初めとする閣僚は霞が関から退避を試みるが、彼らを乗せたヘリがゴジラの襲撃を受け、内閣は壊滅状態となる。急遽農林水産大臣が総理代理にしたてられ、臨時の新内閣が発足する。
ゴジラを「駆除」できなかったため、アメリカは国連に話を持ち込み、国連安保理は熱核攻撃を決議し、ゴジラが休止している2週間のうちに東京都民360万人の避難を要請してくる。
しかし、その一方、巨大不明生物特設災害対策本部巨災対)は、ゴジラの血液を凍結させる作戦(ヤシオリ作戦」※命名)の準備を進めていて、国内における(広島・長崎に続く3度目の)核攻撃を断固阻止せんとする日本政府は、国連軍への参画を遅らせるようフランスを説得し、アメリカの協力を得て、同作戦の決行に臨む。
前半は、現状把握と対策の検討を行う内閣の会議の様子が延々と続く、ポリティカル・アクション風。後半は、東京、丸の内を舞台としたゴジラ対日本人の戦いとなる。
伊福部昭の「宇宙大戦争マーチ」が満を持して鳴り響く中、無人戦闘機による攻撃で丸の内の高層ビルが次々と破壊されてゴジラに崩れかかり、無人新幹線爆弾がその足元をすくう。倒れたゴジラの口元にすかさずこの作戦のためだけに急造されたであろう特殊重機が押し寄せ、氷のような血液凝固剤をゴジラの口中に噴射する。ゴジラが動くと、電車攻撃第二弾の無人在来線爆弾が発射される。わたしは特に鉄道ファンではないのだが、この「無人在来線爆弾」には、その秀逸な命名とともに、今回最もぐっと来てしまった。映画の冒頭からゴジラ出現場所の地名や登場人物の役職・氏名の字幕を事細かく挿入してきたのは、この漢字七文字のスーパーを出したいがためだったのではないかと思いたくなるくらいだ。冷静に考えるとばからしいことを大真面目にやる、怪獣映画というか少年冒険ロマンというか、最新技術を駆使したゴージャスな映像の中にアナログな活劇の魅力を追及する、筋の通った強固な信念が感じられるのだった。
メインキャスト以外にも、数々の俳優たちや映画監督らがこぞってちょっとの出番に顔を見せる、膨大なアイウエオ順の出演者クレジットに、国民的映画の醍醐味を感じた。
※注)「ヤシオリ」は、「日本書紀」に出てくる「八塩折之酒」の「八塩折(やしおり)」、須佐之男命(スサノオノミコト)が八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治するときに飲ませた酒の名前だそうである。(ウィキペディアより)