映画「ウインド・リバー」を見る

ウインド・リバー WIND RIVER
2017年 アメリカ 107分
監督:テイラー・シェリダン
出演:コリー・ランバート(ジェレミー・レナ―)、ジェーン・バナー(エリザベス・オルセン)、ベン(部族警察長。グレアム・グリーン)、ナタリー・ハンソン(ケルシー・アスビル)、マーティン・ハンソン(ギル・バーミンガム)、チップ・ハンソン(マーティン・センスメイア―)、アン・ハンソン(アルシア・サム)、ウィルマ・ランバート(ジュリア・ジョーンズ)、ケイシー・ランバート(テオ・ブリオネス)、ダン・クロウハート(アペサナクワット)、アリス・クロウハート(タントゥー・カーディナル)、マット・レイバーン(ジョン・バーンサル)、ピート・ミケンズ(ジェームズ・ジョーダン)

アメリカ北部のワイオミング州ウインド・リバー先住民居留地
雪原で若いインディアン女性の死体が発見される。発見したのは猟師で合衆国野生生物局員のコリーである。
部族警察には殺人事件の捜査の権限がないため、FBIから捜査官が派遣される。が、やってきたのは、フロリダ生まれの新米の女性捜査官ジェーン一人だけ。
死者はコリーの亡くなった娘エミリーの友人ナタリーであり、死因は極寒の中を走り続けて冷気を吸い込んだことによる肺出血と判明する。
同時に彼女は数人にレイプされていたことがわかる。しかし、レイプを取り締まるのは州警察だが、居留地連邦政府の管轄で、殺人事件でないとFBIが捜査をすることはないという決まりがある。(つまり、居留地で起こったレイプ事件を捜査する機関はないということになる。)
殺人事件でないことが分かると捜査が打ち切られるため、ジェーンはFBIから応援を呼ぶことができず、コリーの協力を得て、単身、捜査に乗り出すのだった。
現代の話であるが、インディアン居留地は、警察やFBIの手が届かない、だだっ広い無法地帯となっていて、みんなが銃を持っている。西部劇さながらの状況にある。
麻薬売人の若者たちのアジトでの突然の銃撃、部族警察のメンバーと石油掘削所の警備員らとの一触即発の状態から抜け出たと思った矢先の激しい銃撃戦に度胆を抜かれる。
監督のシェリダンが脚本を手掛けた「ボーダーライン」では、颯爽と登場した女捜査官が過酷な状況の中でどんどん怯えた傍観者になっていって活躍することなく終わってしまったが、こちらのヒロインは骨のあるところを見せてくれる。
ナタリーの父であるインディアンのマーティンとコリーは友人同士である。自分も娘を亡くした過去を持つコリーが、娘の死を悲しむマーティンに率直で厳しい言葉をかけるシーンがあって、そこもよかったが、ラスト、二人が雪の中に座って語り合うところがたいへん趣深い。
娘の死を悼んでか、自らも死のうと思ってか、マーティンは、顔に青と白の塗料を塗って死化粧をしているが、やり方を知らないので自己流でやってみたと言う。そうした一言にも、文化が継承されず、僻地に追いやられたインディアンの悲壮な歴史が垣間見られると思った。

ウインド・リバー [DVD]

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