映画「ハッピーフライト」を見る

監督:矢口靖史、協力:ANA、
主題歌:フランク・シナトラ「カム・フライ・ウィズ・ミー」、

出演:
ボーイング747-400、ホノルル行き1980便機内>鈴木和博/副操縦士田辺誠一)、原田典嘉/機長(時任三郎)、齋藤悦子/CA(綾瀬はるか)、田中真里/CA(吹石一恵)、山崎麗子/チーフパーサー(寺島しのぶ)、カツラの乗客(笹野高史)、クレームをつける乗客(菅原大吉)、新婚の乗客(正名僕蔵藤本静)、乗客(竹中直人)、CAに憧れる女子高校生、アロハシャツの家族連れ、
<ターミナル>木村菜摘/グランドスタッフ(田畑智子)、グランドスタッフ(平岩紙)、グランドマネージャー(田山涼成)、風邪で欠席の機長(小日向文世)、悦子の母(木野花)、悦子の父(柄本明)、太田/荷物を間違えられた乗客、航空機オタク三人組、
<オペレーション・コントロール・センター(OCC、航空会社部署)>高橋昌治/オペレーション・ディレクター(岸部一徳)、ディスパッチャー(肘井美佳中村靖日
<管制塔(国土交通省管轄部署)>管制官長谷川朝晴いとうあいこ江口のりこ宮田早苗
<整備部>ライン整備士(田中哲司)、ドック整備士(森岡龍
<野外>バードさん(ベンガル)、雑誌記者(森下能幸)、航空機を撮影する中年男コンビ

羽田空港。ホノルル行きの航空機が離陸し、緊急事態によって引き返してくるまでの顛末を描く。
国際線初搭乗の新米キャビン・アテンダント(CA)悦子と、このフライトが機長昇進試験を兼ねているコーパイ(副操縦士)鈴木がメインになっているが、機内だけでなく、フライトを見守り指示を出すオペレーション・コントロール・センター(OCC)、管制塔、客の対応をするターミナル・カウンター、ドックの整備士など、様々な部署で働くスタッフの様子が、てきぱきとテンポ良く描かれていく。飛行機を飛ばすために、これほどたくさんの人たちが関わっているのかと改めて驚かされる。(航空機への指示は、管制塔が行うものと思っていたのだが、この映画では、多くの指示を航空会社の部署であるOCCが出している。管制塔のスタッフは公務員ということになっているので国の機関らしいことはわかるのだが、こことOCCの関係というか、どういう役割分担になっているのかが、ちょっとわかりにくかった。)
とにかくすごい数の人が出てくる。スタッフだけでなく、乗客や航空機マニアなど、有名俳優も混じえた多数の登場人物には、端役にまで実はいちいち名前があるみたいだ。当然、ひとりひとりの出番は少なくなるのだが、みんな生き生きしていて好感が持てる。
威圧的で怖そうだが、頼りになるベテラン機長を時任が好演。寺島しのぶの演じるチーフパーサーの敏腕ぶりもすごい。片膝ついて低い姿勢からクレーマーの乗客をなだめるところなど、聞き分けの悪い殿を諫める時代劇の武将のようだ。グランドスタッフの菜摘を演じる田畑の元気のよさもよいし、「バードさん」のベンガルはなかなかしぶい(離着陸の障害になる野鳥の群れを空砲で脅して追い払う「バードさん(バードパトロール)」という航空スタッフの存在は初めて知った)。
前半は、航空業界のさまざまなお仕事の紹介を楽しく見ていられるが、後半は一転、それぞれの部署のプロがその手腕を発揮して緊急事態に対処する様子をはらはらどきどきしながら見守ることになる。
機内の報告から即座に事故の原因を究明し状況を把握する一方、台風の通過による天候の変化をチェックするOCCの面々、サービス係から保安要員へと変わるキャビン・アテンダントたち、そして、コクピットで刻々と変わる状況を見極めながら操縦する鈴木と脇で指示を出す原田。地上と上空での見事な連携は、宇宙飛行士の生還を描いたアメリカ映画「アポロ13」を思い出させる。専門用語が飛び交って素人には細かいことはよく分からないのだが、緊迫感はひしひしと伝わってくる。2時間弱、飛行機のことを、たっぷり楽しめる映画になっている。

ハッピーフライト スタンダードクラス・エディション [DVD]

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