健さん一周忌で「恋と太陽とギャング」を見る(感想)

●恋と太陽とギャング
1962年 日本 東映ニュー東映) 87分
監督:石井輝男
原作:藤原審爾
脚本:佐治乾、石井輝男
出演:石浜伸夫(高倉健)、石浜典子(小宮光江)、常田(丹波哲郎)、真佐(清川虹子)、ルミ(三原葉子)、衆木(もろき)(江原真二郎)、光男(山下敬二郎)、嵐山(亀石征一郎)、亀さん(由利徹)、山内(千葉真一)、留美子(本間千代子)、黄(三島雅夫)、幹部A(山本鱗一)、子分A(日尾孝司)、子分B(八名信夫
★ネタバレあります!★
池袋、新文芸坐の「高倉健一周忌 健さんFOREVERあなたを忘れない」という特集プログラムで見た。
20〜30年前に、同じシリーズの「花と嵐とギャング」を見たが、こっちは初めて。
ゴージャスなホテルで密かに開かれている裏カジノの金を強奪しようとするギャングたちの話である。
健さんは、ソフト帽に背広といういでたちの、出所したてのどもりのギャング石浜伸夫の役。
冒頭、カジノに乗り込み、拳銃片手にパトロンぽい外国紳士の傍らに立つ日本人の美女をかっさらって、逃げる。女の手を引いて、夜の道を走り、路地裏に逃げ込む。やがて、二人の会話から彼らは夫婦であることが判明する。このオープニングがとてもいい。
伸夫の義母真佐は、かつて暗黒街で鳴らした姉御のようだが、今は落ちぶれている。
そんな真佐と伸夫に常田という気障な男から、カジノ強盗の話がもちかけられる。常田は、綿密な強奪計画をたてていた。
拳銃使いの衆木と嵐山、一時的にホテルを停電にするための電気技師の亀さん、金を運ぶ役の踊り子のルミ、ホテルのボーイのルミの弟光夫などが仲間に加わる。ルミは、常田の情婦というか、常田がルミの情夫というか、とにかく常田の頼みで、ルミは馴染み客の黄に計画実行に必要な金の出資を依頼する。
へっへっへと不気味に笑う衆木役の江原真二郎は、「花と嵐とギャング」でも「十一人のギャング」でも同じような、今で言う危ない奴の先駆けのような役回り。三原葉子に「気持ち悪い笑い方」と言われるが、確かに気持ち悪い。で、案の定、裏切りを企む。知り合いの堅気のパイロット、山内(千葉真一である。)に逃走のためのヘリの操縦を打診する。
光夫とルミも金を持って逃げるつもり、中国人の金持ち、黄もルミにめろめろなだけでなく、儲け話の臭いをかぎつけ、あわよくば横取りをとねらっている。
粋なオープニング、犯罪計画と人集め、あっちでもこっちでも裏切りの企み、ヘリによる逃走と来て、最後は海辺の掘立小屋にたてこもっての銃撃戦。ガラスを銃尻で割り、カジノの追手を迎え撃つ。信夫は、叫びながら1人外へ飛び出して、敵を次々撃ち倒すが、その一方で、盲目の可憐な少女が札束とは知らず、大空を行くヘリから紙幣をばらまく。銃撃戦の決着はわからないまま、必然性なく空しくもさわやかなラストとなる。めちゃくちゃぶりが楽しい昭和の日本B級ギャング映画であった。

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●花と嵐とギャング
1961年 日本 東映ニュー東映) 84分
監督:石井輝男
原作:藤原審爾「花と嵐とギャングたち」
脚本:佐治乾
出演:スマイリー健(高倉健)、香港ジョー(鶴田浩二)、佐和(小宮光江)、正夫(小川守)、圭子(荒井茂子)、まさ(清川虹子)、楽隊(江原真二郎)、ウイスパー(曽根晴美)、権じい(打越正八)、山藤/ツンパ(沖竜次)
20〜30年前に一度見たきりでほとんど覚えていないのだが、「恋と太陽とギャング」を見たついでに書いておく。
印象に残るのは、やはり不気味に笑う江原真二郎の「楽隊」。銃を楽器のケースに入れて持ち歩いていることから、こう呼ばれていた。
後半は、北海道に場所が移る。健さんが、逃げる相手を追って、北海道の広々とした土手の上を、拳銃をぶっ放しながら、走る。フルショットで、撃ちながら、走る。それが見ていて気持ちよかったことを覚えている。

花と嵐とギャング [DVD]

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「暗黒街の顔役・十一人のギャング」については、杉浦直樹さん追悼のときにこちらに感想を書きました。
http://d.hatena.ne.jp/michi-rh/20110923