映画「ブリッジ・オブ・スパイ」を見る

ブリッジ・オブ・スパイ Bridge of Speis
2015年 アメリカ 142分
監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本: マット・シャルマン、イーサン・コーエンジョエル・コーエン
出演:ジェームズ・ドノバン(トム・ハンクス)、ルドルフ・アベルソ連のスパイ。マーク・ライランス)、トーマス・ワッターズ(判事。アラン・アルダ)、ホフマン(CIAエージェント。スコット・シェパード)、ブラスコ(CIAエージェント。ドメニク・ランバルドッツィ)、
ウルフガング・ヴォーゲル(東独の弁護士。セバスチャン・コッホ)、フランシス・ゲイリー・パワーズ(米軍パイロット。オースティン・ストウェル)、フレデリック・プライヤー(アメリカの学生。ウィル・ロジャース)、イワン・シスキン(ソ連KGB高官。ミハイル・ゴアヴォイ)、
メアリー・ドノバン(妻。エイミー・ライアン)、ロジャー・ドノバン(長男。ノア・シュナップ)、キャロル・ドノバン(長女。イヴ・ヒューソン)、ペギー・ドノバン(次女。ジリアン・レブリング)、ダグ・フォレスター(ドノバンの部下。キャロルのデート相手と思われるが、はっきりとは示されない。ビリー・マグヌッセン)

★ネタバレあります! これから見る人は読まない方がよいと思われ。★





1950〜60年代の冷戦下の米ソ。ソ連のスパイ、アベルの弁護を引き受けた民間の弁護士ドノバンが、ベルリンの壁が作られた直後の東ベルリンで、米ソのスパイ交換の交渉に挑む。(あらすじを手短に説明できる映画は、久しぶりで気持ちがいい。)
先に見た家人から、「基本的に、ETだ。」と聞かされていた。つまり、たまたま知り合った異邦の友を、無事故郷へ帰してやるという話だという意味なのだが、そのせいか、ソ連のスパイである初老の物静かな男アベルが、ETに見えてしまってしかたがなかった。彼の置かれた苦境を思ってドノバンが「恐くないか?」と尋ねるたびに、「それが役に立つか?」とクールに返す彼の、ギョロ目できょとんとしたたたずまいが、どうにもETなのだった。
保険会社の顧問をやっているドノバンが、死刑求刑を受けたアベルの助命のため、判事の家を訪ねて説得するところがよい。彼を生かしておく理由として、「保険」を持ち出すところが、すごくアメリカ人的だと思った。これほど合理的な危機管理の観念は、日本人にはあまりないのではと思った。
交換が成功したとしても、当のスパイたちにはどのような未来が待っているのか。捕まる前に死ねと言われていたのに毒を飲めず捕虜となったアメリカ空軍のパイロット、パワーズは、友に抱擁で迎えられるが、帰りの機内の様子からはとても歓迎されているように見えない。
アベルは、別れ際にドノバンに言う。自分の行く末はソ連側の者が「抱擁で迎えるか、だた私を後ろに座らせるかでわかる。」と。ドノバンが見ていると、アベルを迎えに来た男は抱擁せず、彼を車の後ろの座席に座らせる。これを見て、観客もドノバン同様、「抱擁じゃなかった。彼は処刑されるのだ。」と思ってとても残念な思いをする。はずなのだが、なぜか、ここで私は、ひょっとして抱擁の方が「死」を意味していたのではないかと「気づいた」。(アベルは、抱擁と後ろの席のどっちがセーフでどっちが死を意味するのかは、はっきり言っていないのである。)理由はわからないが、スピルバーグの演出がそう思わせたとしか言いようがない。だから、最後に字幕でアベルが無事だったことが報告されても「え?」とは思わず、やっぱりなとうなづいたのだった。
タイトルのブリッジは、スパイ交換が行われたグリーニカー橋のこと。

<セリフ>
ドノバン:怖くないか?
アベル:(怖がることが)役に立つか?
James Donovan: Aren't you worried?
Rudolf Abel: Would it help?

以下は、アイルランドアメリカ人のドノバンが、いけすかない態度をとるドイツ系アメリカ人のCIAエージェント、ホフマンに、アメリカ人と憲法について説くところ。
James Donovan: My name is Donovan, Irish, on BOTH sides of father and mother. I am Irish, you are German. But what makes us Americans? Just one thing, a one, a... The rulebook. We call it the Constitution and agree to the rules, and that's what makes us Americans. It is everything that makes us Americans.