映画「レヴェナント:蘇えりし者」を見る(感想)

レヴェナント:蘇えりし者 THE REVENANT
2015年 アメリカ 156分
監督:アレハンドロ・G・イニャリトゥ
撮影:エマニュエル・ルベツキ
音楽:坂本龍一、カーステン・ニコライ
出演:ヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)、ジョン・フィッツジェラルドトム・ハーディ)、ジム・ブリジャー(ウィル・ポールター)、アンドリュー・ヘンリー隊長(ドーナル・グリーソン)、ホーク(フォレスト・グッドラッグ)、エルク・ドッグ(ドウェイン・ハワード)、ポワカ(メラウ・ナケコ)、ヒクックHikuc(アーサー・レッドクラウド

★あらすじの説明あります!!★

「リメインズ 美しき勇者たち」(1990年)という千葉真一監督、真田広之主演の熊退治の小気味よいアクション映画があって、なんとなくタイトルが似ているし、内容もかぶるなと思ったのだが、本作でディカプリオが闘う相手は、熊というよりは怪我と酷寒の大自然である。映画の大半を、彼はまともに歩くことなく、横たわるか地面を這いずって過ごす。
なんの予備知識もなく、ディカプリオ主演で、「バードマン」のイニャリトゥ監督によるアカデミー賞受賞作だからと思って見に行くと、血と傷と痛さと死体の多さとあまりの寒さにショックを受けるかもしれない。でも、こういう映画だと腹を括っていったら、手ごたえは素晴らしかった。個人の嗜好を超えて、そのパワーに圧倒される数少ない映画のひとつだと思う。(というか、私はどうもこういうパワフルな姿勢の映画に弱いのだなと改めて気づかされた。)
1823年、アメリカ、ロッキー山脈。狩猟チームのガイドをしていたヒュー・グラスは、大きな灰色熊(グリズリー)に襲われ、瀕死の重傷を負う。足を折られ、背中を爪でえぐられ、喉を裂かれるなど、この襲撃シーンはすさまじく、痛い。
アリカラ族に追われ、雪山の険しい斜面を行かなければならず、ヘンリー隊長は担架に横たわったグラスを連れていくことを断念し、ベテランのハンターであるフィッツジェラルドと若者ブリジャー、およびグラスの息子でポーニー族とのハーフであるホークの3人に彼を看取るよう託していく。が、フィッツジェラルドは、いつまでたっても死なないグラスを厄介に思い、ブレジャーの見ていないところでホークを殺し、アリカラ族の追手が迫っていると嘘をついてブレジャーを説得し、まだ息のあるグラスを墓穴の中に半ば埋めたままにして去る。
残されたグラスは、地面を這いずり、木や草を食べ、やっとたどり着いた川辺でエルク・ドッグ率いるインディアンの一団に追われて川の中に逃れ、急流を流される。なんとか岸にたどり着いた彼は、通りすがりのはぐれインディアン、ヒクック(IMDBにHikukとある、日本語表記が見つからず)に出会い、バファローの肉を分けてもらい、二人で旅をすることに。吹雪の夜、何もない荒野で、ヒクックは高熱に苦しむグラスのため枯れ木の枝を切って急ごしらえのテントを作ってやる。が、ヒクックは、フランス人の毛皮商人一行に殺され、その一行もエルク・ドッグらの襲撃を受ける。グラスはヒクックの馬を奪い返して逃げるが、馬ともども崖から落ちたうえに再び吹雪に見舞われ、馬の死体から内臓を掻き出しその体内に入って暖を取り一夜を過ごす(この件り、「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」冒頭の氷の惑星でのハン・ソロによるルーク救出を思い出す)。
グラスは狩猟チームのいるカイオワ砦にたどり着き、幽霊を見るような目で迎えられる。仇敵フィッツジェラルドは姿を消していて、グラスは隊長とともに彼を追う。
宣伝では、復讐劇ということになっているが、映画のメインは、グラスの壮絶なサバイバルである。セリフは少なく、ディカプリオの息遣いばかりが耳に残る。ドアップのあまり、彼の息で画面が白く曇ったりもする。彼は大概低い位置にいるので、木々を見上げる主観ショットがやたら入るのも印象的だった。時折挿入される幻想的な夢のシーンが、「バードマン」の監督であることを思い出させる。
荒野で遭遇したグラスとヒクックが、バファローの死体を挟んで生のレバーを貪りながら、お互いの顔をじっと見据える。このシーンがすごくよかった。

<ヒュー・グラスらについて>
西部劇ファン仲間で西部史に詳しい筑紫哲児氏から教えてもらった。
氏によれば、ヒュー・グラスは実在の人物で、熊に襲撃されながらも生還したマウンテン・マンとしてアメリカでは名の知られた男であり、伝記や小説が数多く書かれているという。
熊に襲われて大けがを負い、仲間に置き去りにされながら、6週間かけて6マイル(320km)先にあるカイオワ砦に戻ったというのは事実らしい。フィッツジェラルドとブリジャーは実在したが、グラスがポーニー族の女性と結婚し、息子を設けたというのはフィクションだということだ。ちなみに、当時19歳の若者だったジム・ブリジャーは罪を許され、のちにロッキー越えのパスを発見した一員となったり、砦を建てて開拓民を助けたりしてアメリカ西部のマウンテン・マンの代表的存在となったそうである。
リチャード・ハリス主演「荒野に生きる」(1971年)は、グラスの名は使われていないが、同じ題材を用いた映画。

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