映画「殿、利息でござる!」を見る(感想)

殿、利息でござる!
2016年 日本 公開:松竹 129分
監督:中村義洋
原作:磯田道史「穀田屋十三郎」(「無私の日本人」文藝春秋所収)
主題歌:RCサクセション「上を向いて歩こう
出演:穀田屋十三郎(造り酒屋。阿部サダヲ)、菅原屋篤平治(茶師。瑛太)、浅野屋甚内(造り酒屋・金貸し。妻夫木聡)、とき(竹内結子)、遠藤幾右衛門(肝煎。寺脇康文)、千坂中内(大肝煎。千葉雄大)、穀田屋十兵衛(味噌屋。きたろう)、早坂屋新四郎(雑穀屋。橋本一郎)、穀田屋善八(小間物屋。中本賢)、遠藤寿内(両替屋。西村雅彦)、なつ(篤平治の妻。山本舞香)、音右衛門(十三郎の息子。重岡大毅)、加代(十三郎の娘。岩田華怜)、きよ(草笛光子)、先代・浅野屋甚内(山崎努)、萱場杢(出入司。松田龍平)、橋本権右衛門(代官。堀部圭亮)、伊達重村(仙台藩主。羽生結弦・友情出演)

 
★ネタばれあります!!★

江戸時代中期、仙台藩の宿場町吉岡宿で、町人たちが町を救うため、ある突飛な計画を思いつく。
吉岡宿は宿場町であるがゆえに、お上から伝馬役という馬による荷物運搬のお役目を仰せつかっていたが、報酬はなく費用はすべて地元持ちであった。百姓や町人は貧しい生業の上に伝馬役の負担を強いられ、生活は苦しくなる一方、夜逃げをする者もいた。
町を思う造り酒屋の穀田屋十三郎は、知恵者の菅原屋篤平治がぽろっと口に出した話に乗り気になる。
それは、藩に大金を貸し、その利息を伝馬役の費用に充てるというものだった。
そのためには千両(3億円)もの金を工面しなければならず、十三郎は仲間に声を掛け、資金集めに奔走する。篤平治の思惑とは逆に、肝煎※、大肝煎※もこの話に乗り気になる。
彼らは数年かけて千両を集め、ついに藩に願い出る。申し出は藩の出入司(会計係)である萱場にあっさり却下されるも再び試み、やっと通ったと思ったら思わぬ相場の落とし穴が待ち受けている、など計画は最後の最後まですんなりいかないのだった。

真面目だが深刻すぎず、ほどよいユーモアと泣ける話を交え、町の再生計画の立案から実行までを描いて、口当たりのよい集団人情話となっている。
しかし、集団劇とはいえ、これほどでしゃばった人物がいない映画も珍しい。
阿部サダヲ瑛太の名前が最初に挙がるのだろうが、肝煎の寺脇も、若い大肝煎の千葉も、居酒屋の女将の竹内も、代官の堀部も、みんなそれぞれにいい人ぶりを見せている。両替商の西村は金儲けしか考えない商人根性丸だしのせこいやつ、藩の会計係の松田はクールで無表情な融通のきかない役人だが、いずれもユーモラスに憎めない感じで描かれている。
後半は、ごうつくばりの高利貸しだと思っていた浅野屋の面々が実はとてもいい人たちに大逆転、妻夫木演じる目の不自由な美青年はまるで仏様のように神々しい笑みを人々に向けるのであった。そして最後は羽生結弦のさわやかな若殿さまが登場する。
みんなが同じくらいにいいところを見せる、この目立ち度均等ぶりはそうあるものではない。日本人好みなのかもしれないが、やっぱり目立ちたがりのヒーローが出てくるチャンバラ映画の方が個人的には好きだなと思った。

※肝煎(きもいり)は、江戸時代の村役人。西日本では庄屋、東日本では名主、東北・北陸では肝煎といったらしい。
 大肝煎は、いくつかの村を集めた地域の代表。(ウィキペディアより)

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