ドラマ「1883」(シーズン1全10話)を見る(感想)

1883 1883
U-Next配信  シーズン1:2021年~2022年
脚本:テイラー・シェリダン
監督:テイラー・シェリダン、クリスティーナ・アレクサンドラ・ヴォロス、ベン・リチャードソン
出演:ジェームズ・ダットン(ティム・マックグロー)、マーガレット・ダットン(フェイス・ヒル)、エルサ・ダットン(イザベル・メイ。ナレーションも)、ジョン・ダットン(オーディ・リック)
シェイ・ブレナン(サム・エリオット)、トーマス(黒人。ラモニカ・ギャレット)
ヨセフ(ドイツ人移民グループの通訳。マーク・リスマン)、リザ(ヨセフの妻。アンナ・フィアモラ)、ノエミ(ロマの女性。グラティエラ・ブランクシ)、
イニス(カウボーイ。エリック・ネルセン)、ウェイド(カウボーイ。ジェームズ・ランドリー・ヘバート)、クッキー(料理人。ジェームズ・ジョーダン)、コルトン(カウボーイ。ノア・ル・グロー)
チャールズ・グッドナイト(盗賊を追う男。ブレナンの知り合い。テイラー・シェリダン
サム(コマンチの青年。マーティン・センズメアー )

ドラマ「イエローストーン」の牧場創設者、初代ダットンの話。
1883年、元南軍大尉のジェームズ・ダットンは、妻のマーガレットと、娘のエルサ(18歳)、息子のジョン(4歳)とともに、開拓民として、新天地オレゴンを目指していた。
一家は、元北軍大尉でピンカートン探偵社の探偵(といっても雇われボディガードのような仕事)であるシェイ・ブレナンとその仲間トマス(ブレナンの元部下のようだ)が護衛を務めるドイツ移民の幌馬車隊に加わって旅に出る。ドイツ移民らは、馬に乗れず、通訳のヨセフしか英語をしゃべれない。水泳を禁じられていたため、川を渡る際にも泳げないという状態であった。
一行の旅は困難を極める。無法者たちの襲撃に遭い、毒蛇に噛まれ、河を渡る際に溺れ荷物を流され、竜巻で馬車を破壊され、誤解からインディアンの襲撃を受けるなどして、多くの者が命を落とし、はるばる故郷から運んで来た荷物の多くを失う。
18歳の少女エルサは、持ち前の奔放さと乗馬好きから、スカートを脱いでズボンをはき、カウボーイとなって荒野を駆けめぐる。恋仲になったカウボーイを亡くし悲嘆にくれるも、コマンチの青年との間に新たな恋が芽生える。雄大な荒野を駆ける、エルサのはつらつとした騎馬姿は心地よく、当作品の魅力となっている。
が、幌馬車隊の旅はあまりにも過酷で見ていてつらくなるところもあった。
ラスト、ダットン一家は、ある事情からオレゴンに行くのをやめ、モンタナ州のパラダイスヴァレーに居を構える決心をするのだが、その事情がまた悲しいのであった。
インディアンの扱いが独特である。凶悪で攻撃的な原住民とか、白人に迫害された気の毒な少数民族とか、これまでの映画やドラマにありがちな目線を離れ、同じ土地に生きる者として関わらざるを得ない相手といった感じで登場する。彼らの土地を通過する際に水の使用料を払い、悲惨な戦いに至るにも経緯があるという具合だ。コマンチの青年サムは性格が男前すぎだろうという気もするし、エルサとの恋をダットンやマーガレットが割とあっさり受け入れるのも当時の親としてどうかと思ったが、斬新ではあった。
ラスト、パラダイスヴァレーは7世代後にクロウ族に変換するという条件が提示される。李鴻章の100年後の香港返還を条件にした条約締結を思い出すが、これは「イエローストーン」のジョン・ダットン(ケヴィン・コスナー)に伝わっているのだろうか。

今回見たのは「1883」のシーズン1の10話、まだシーズン2,3と続くらしい。さらにハリソン・フォード主演で「1923」があり、「イエローストーン」もまだ続いている。長すぎてとてもじゃないが、全部見届ける自信がないのだった。
※「イエローストーン」シーズン4の第1話、第8話に、「1883」から10年後(1983か)の様子が描かれているシーンが登場しているらしい。

 

netflix「1883」紹介ページ

https://video.unext.jp/freeword?query=1883&td=SID0077947

 

以下、各話のあらすじを書く。

★最後まで筋が書いてあるので見ていない人は注意してください。★

1話 1883(67分) 1883
監督:テイラー・シェリダン
出演:クレア・ダットン(ダウン・オリヴィエリ)、メアリー・アベル・ダットン(エマ・マルドフ)、
冒頭は、1883年、グレートプレーンズ。幌馬車隊がインディアンに襲われている場面。女性のナレーション(エルサ)が、西部の過酷さを語る。倒れているエルサが起き上がると、周囲には移民やインディアンの死体が転がっている。馬に乗ったインディアンが近づき、エルサと言葉を交わす。エルサは死体から抜き取った拳銃でインディアンを撃つ。
場面代わって。元北軍大尉のブレナンは、天然痘で最愛の妻を亡くす。彼は、かつての部下(?)トーマスとともに、ピンカートン探偵社の探偵となり、新天地オレゴンを目指すドイツ移民の幌馬車隊の旅の護衛を引き受けるため、テキサス州フォートワースへ向かう。町へ向かう途中、ブレナンとトーマスは、ジェームズ・ダットンが無法者の襲撃を受ける場面に出くわす。ダットンが一人で複数の敵を相手に見事に撃退する様子を目撃する。
ダットンは、フォートワースで家族を待っていた。汽車に乗って、妻のマーガレット、娘のエルサ、息子のジョン、妹のクレアとその娘メアリー・アベルがやってくる。躾に厳しいクレアは、奔放な姪のエルサが気に入らず、なにかにつけ辛辣な小言を言う。
一方、ブレナンとトーマスが護衛を引き受けた幌馬車隊は、ドイツから来た貧しい移民たちで、西部で生きるすべを何もしらない集団だった。英語もしゃべれず、通訳のヨセフを介してなんとかコミュニケーションが取れるというありさま。ブレナンは、ダットンの腕を買い、幌馬車隊との合流を申し出る。ダットンはそれを承諾し、一行のオレゴンを目指す旅が始まる。

2話 意地と別れ(59分) Behind Us, a Cliff
監督:テイラー・シェリダン
出演:ジム・コートライト(実在した保安官。ビリー・ボブ・ソーントン)、ジョージ・ミード(北軍の准将。トム・ハンクス
冒頭、1862年南北戦争アイティータムの戦い後の様子が映し出される。ジェームズ・ダットンは、戦いに敗れた南軍の大尉として戦場で呆然自失の状態にある。北軍のミード准将がやってきてダットンの肩を叩く。
場面は1883年のテキサスにもどって。ダットンとブレナンは、町に牛を買いに行くが、値段が高すぎるので、野生の牛を集めることにする。ダットンは、ウェイドとイニス、二人のカウボーイを雇い、二人とエルサを連れて牛集めに出かける。
ダットンとブレナンらが留守のときに、キャンプに無法者のクライド・バーカーとその仲間がやってきて水を飲ませてくれという。クレアは石を投げて追い払うが、パーカーたちは戻ってきて、キャンプを襲う。銃撃により幌馬車隊の人々が倒れる。クレアの娘アベルも撃ち殺されてしまう。
キャンプに戻ったダットンとブレナンは、バーカー一味を追ってフォートワースへ。保安官のコートライトが、酒場ホワイトエレファントにいるバーカーらを見つける。コートライトは銃を抜こうとした彼らを早撃ちでもってことごとく撃ち殺す。
キャンプをたたみ、幌馬車隊は出発する。クレアはアベルの墓から動かない。ダットンが声をかけても、5人いた子どもを次々と亡くし、最後に残ったアベルまで失った彼女は絶望して自殺を図る。ダットンは彼女を埋葬し、一行は出発する。

3話 のりこえるべきもの (44分)  River
監督:クリスティーナ・アレクサンドラ・ヴォロス
出演:ノエミ(ロマの女性。グラティエラ・ブランクシ)、リザ(ヨセフの妻。アンナ・フィアモラ)
幌馬車隊の旅は過酷なものとなる。馬車の事故や獣や毒蛇の被害で死者が後をたたない。
行く手に大きな川が流れていて、一行は東へ大きく迂回して船で渡るか、危険な西への道を取るかの選択を迫られる。東への経路を取ると冬になってしまうが、厳しい冬を迎える前に旅を終えるべきという思いは、ダットンもブレナンも同じだった。
旅の途中で夫を亡くし、幼い息子二人を抱えているロマ(ジプシーのようなものらしい)の女性ノエミを不憫に思い、ブレナンとトマスはなにかと世話を焼いてやる。彼女から生活道具を盗んだ男たちを、ブレナンは隊から追放する。
ダットンは幼い息子ジョンを連れてシカ狩りに行き、狩りのやり方とともに、動物の命を奪うことの意味を教える。
二人のカウボーイと、マーガレットとエルサは牛を集めに行く。エルサは、馬を駆って牛を追うマーガレットを見て、今まで知らなかった母の一面を見る。エルサとカウボーイのイニスは恋の駆け引きのような会話を繰り返し、お互い惹かれつつある。
一行は、西へ向かうことを選択する。

4話 命の分かれ目(55分) The Crossing
監督:クリスティーナ・アレキサンドラ・ヴォロス
エルサはスカートをドイツ移民の主婦がつくったズボンと交換し、ズボンをはく。馬に乗るのに便利だが、ズボンをはく女性は奇異な目で見られる。
エルサはイニスとキスをし、ふたりは恋人同士となる。
一行の行く手をブラゾス川が阻む。ダットンは、みんなが川を渡る手助けをするため、家族を連れて夜の間に向こう岸に渡る。翌朝、川は深く、水の量が増えている。ブレナンは、移民たちに荷物を減らすよう命じる。痛恨の思いで、ピアノを置いていく音楽家など、移民たちはブレナンの非情な命令にいやいやながら従う。
牛を渡すのは最後となるため、エルサとカウボーイたちは一番後に川を渡る。エルサは、移民が捨てたピアノを見つける。イニスにせがまれてピアノを弾く。物悲しい曲だ。楽しい曲を弾けよというイニスに対し、暗い曲しか練習しなかったという。
渡河は困難を極める。馬車が倒れたり、落ちて溺れ死ぬ人もいる。渡り終えたあと、家族を亡くし悲嘆にくれる移民たちの姿がそこかしこにある。

5話 毒と自由と(56分) The Fangs of Freedom
監督:クリスティーナ・アレクサンドラ・ヴォロス
ブラゾス川を渡った際に、食料を積んだ馬車が流されてしまう。わずかな食料を盗んだ男たちが、ブレナンに追放される。ブレナンに言われ、ヨセフが幌馬車隊のリーダーとなる。
マーガレットとエルサは裸で水浴をする。エルサはイニスとの恋に夢中。そんな娘にマーガレットは、性教育を施す。
亡くなったり追放されたりして、幌馬車隊の人数は1週間で半減する。
エルサはイニスと一夜をともにする。ダットンは、エルサとイニスの仲を許す。
ウェイドは、6頭の馬の足跡を発見する。丘の向こうにたき火の煙が見える。6人の男たちが一行を狙っている。幌馬車隊は、彼らの襲撃を受ける。イニスが撃たれて死んでしまう。
エルサは、捕らえられた犯人を撃ち殺す。

6話 悪魔との根競べ(51分) Boring the Devil
監督:ベン・リチャードソン
出演:クッキー(料理人。ジェームズ・ジョーダン)、コルトン(ノア・ル・グロー)、キャロル(リタ・ウィルソン)
一行は、レッド川沿いに進んでテキサス州オクラホマ州の境、ドーンズ渡し場にやってくる。
イニスの死で悲嘆にくれるエルサ。妻を亡くした経験を持つブレナンが彼女を慰める。「アパッチの言葉に、愛し合うことは魂を交換することだというのがある。相手の死は自分の一部を失くすことだから痛い。でも、彼の魂の一部は君の中にある。」と。エルサに、妻を亡くしなぜ生きているの?と聞かれ、ブレナンは「海へ行く。」と答える。「死んだ妻の悲願だったから、自分が行って妻に海を見せてやる。」と。
幌馬車隊の人々は渡し場で物資を調達する。トマスは、クッキーというベテランの料理人を雇う。ダットンは、カウボーイのコルトンを新たに雇う。マーガレットは、雑貨店主のキャロルと酒を飲んで酔っ払う。トーマスは、ノエミにフランス製のきれいな手鏡をプレゼントし、二人は一夜をともにする。
一行は、レッド川を渡って、インディアンの土地に入る。

7話 黄色い髪の稲妻 (53分) Lightning Yellow Hair
監督:クリスティーナ・アレクサンドラ・ヴォロス
出演:サム(マーティン・センズメアー )、チャールズ・グッドナイト(盗賊を追う男。テイラー・シェルダン)
旅を続ける幌馬車隊とダットン一家。コマンチの若者二人が姿を現す。ブレナンは、水を使う代金を払い、二人を夕食に招待する。牛を一頭つぶし、クッキーは料理の腕をふるう。
コマンチの若者サムは、エルサの馬ライトニングをほめる。エルサとサムは馬のレースをして、エルサが勝つ。サムは、ライトニング(稲妻)は君だという。「黄色い髪の稲妻」とエルサを呼ぶ。エルサは、ブロンドの髪を切ってサムに渡す。サムは、ナイフをエルサに献上する。サムは、エルサの髪で馬の細工物をつくって置いていく。
クッキーがいなくなる。嵐が来るのでさっさと避難していたのだ。嵐とともに竜巻もやってくる。
竜巻が一行を襲う。死者は出なかったが、馬車が飛ばされ、多くの者が持っていたものを失くす。ノエミの馬車も壊れる。トマスにもらった鏡も割れてしまう。竜巻のどさくさでエルサとサムはキスをする。
ダットンらは、散らばった牛や馬を集める。クッキーが戻ってくる。
低地に集まっていた牛を、13人の盗賊が盗もうとしていた。ダットン、ブレナンらと銃撃戦となる。エルサは盗賊3人に追われる。サムと相棒が駆けつけて3人を殺す。盗賊を追っていた男、グッドナイトが登場。ブレナンの知り合いだった彼は、助けに回る。
エルサを心配してやってきたマーガレットは、馬をよこせと銃を向ける盗賊を撃ち殺す。

8話 嘆きという名の降伏(55分) The Weep of Surrender
監督:ベン・リチャードソン
ダットンとカウボーイたちは、散らばった馬を集める。
サムは自分の部族のキャンプにエルサらを連れていく。エルサは、ズボンが破けてしまい自分で繕ったが、インディアンの女性に黄色いチャップスを作ってもらう。
幌馬車を失い、一行の移動速度は大幅に落ちる。冬前にオレゴンに着ける可能性は低い。一行は、オレゴンを目指すか、コロラド州デンバーへ目的地を変えるか選択を迫られる。ブレナンの強硬なやり方に反感を抱いていたせいか、移民たちはダットンを信頼しているとブレナンはダットンに言う。彼らを導くのは君だと。彼らは、オレゴンを目指す決断をする。
エルサは、サムとの結婚を決意するが、オレゴンまでは幌馬車隊や家族といっしょに行き、それから戻ってくるとサムに約束をする。エルサは、サムにもらったカラフルで露出の多い部族衣装の上衣を着る。
馬車をなくした移民たちは慣れない馬に乗る。トマスは、ノエミに乗馬のアドバイスをする。馬の頭ではなく、進む方向を見るのだと(わたしが乗馬体験をしたとき、コーチに同じことを言われた)。ヨセフの妻、リズも馬に慣れてくる。

9話 蒼天の雲(56分) Racing Clouds
監督:ベン・リチャードソン
出演:ラコタ族の男たち(トカラ・ブラック・エルク、グレイ・ウルフ・ヘレーラ)
リザの乗る馬が毒蛇を踏み、リザは落馬して重傷を負う。リザに駆け寄ったヨセフは足を毒蛇にかまれる。
ブレナン、トマス、ダットンは、馬泥棒に襲撃されたラコタ族のキャンプをみつける。そこでは女性と子どもたちが惨殺されていた。足跡をつけてしまったブレナンらは、自分たちの幌馬車隊が犯人だと思われ、ラコタ族に復讐されることになると考える。
ダットンはマーガレットに事情を話しキャンプで待つように言い、自分たち3人は無実を証明するため、馬泥棒たちを追う。3人は、ワイオミング牧場主協会のものだという男たちにでくわすが、彼らこそが馬泥棒で、3人は彼ら全員を皆殺しにする。
料理人のクッキーは、キャンプで待つのは危険だと言って、砦に向かう。一行は、彼について行く。マーガレットは、砦に行くのにエルサが露出の多いインディアンの服を着ているのはまずいと言って、ワンピースドレスに着替えさせる。一行は、復讐に燃えるラコタ族の男たちに出くわし、激しい襲撃を受ける。クッキーは殺される。エルサは襲撃者を減らすため、おとりになって馬を駆る。ラコタ族の戦士が数騎追ってきて、エルサは矢で射られ、落馬する。追手に殺されそうになるところで、サムに教わった部族語を発す。英語がわかるラコタ族の男に自分はコマンチのサムの妻だといい、話をして誤解を解く。ラコタのリーダーは、襲撃隊を率いて去っていく。
コルトンは、頭皮をはがれ、矢を身体につきたてたまま半狂乱になって死にかけている移民の女を憐れに思って撃ち殺す。
馬泥棒をやっつけたブレナンら3人は、キャンプに帰る途中、襲撃から引き揚げてきたラコタ族の男たちと出くわす。ダットンが単騎、彼らに近づき、リーダーと話す。馬泥棒をやっつけたこと、死体のある場所を伝え、エルサのことを聞く。リーダーはエルサを勇者だといい、戦いを仕掛けずに去る。
移民の女性を射殺したことに落ちこむコルトンに、ブレナンは、ここでは自分の判断がすべてだ、自分の判断を受け入れろという。
エルサは矢を抜いて治療をうけるが、容態はよくない。ダットンは、マーガレットと話をする。エルサは助からない、それを受け入れなければならない、彼女が自分で選んだ場所に埋葬し、そこをダットン家の安住の地にしようと言う。

10話 旅路の果て(65分) This Is Not Your Heaven
監督:ベン・リチャードソン
出演:スポッテド・イーグル(クロウ族の長老。グラハム・グリーン)
牛がいなくなってカウボーイはお役ごめんとなり、ウェイドとコルトンは新しい仕事を求めて旅立つ。蛇にかまれたヨセフと落馬したリズ、そしてエルサの容態はよくならず、治療のため、一行は近くの砦に向かう。一行は砦に着いたが、そこに医者はいず、砦の所有者は馬泥棒のボスだった。一行は砦を出て、モンタナを目指す。蛇に噛まれたヨセフの足は壊疽を起こし、ブレナンらは彼の足を切断する。リサは、回復せず、死んでしまう。
どうみても具合が悪いのに、ダットンはエルサに調子がよさそうだといい、馬に乗っていいと言う。父の態度から、エルサは自分は死ぬのだと察する。
一行はクロウ族に出会う。エルサは身を清めてもらう。長老は、ダットンに、娘は助からないといい、安住の地として、パラダイスヴァレーの場所を教える。(このとき、7世代後には土地を返還するよう要請し、ダットンはそれを承諾する。)馬で2日、馬車で7日の距離にあるその土地へ、ダットンとエルサは先に馬で向かう。ヴァレーに着いた二人は草原の木の根元に座る。エルサはダットンに抱きかかえられたまま、自分をここに埋葬してくれと言って息を引き取る。ダットンはそこを安住の地と決め、そこに築いた牧場はのちのイエローストーン牧場となるのだ。
1年後、片足を失ったヨセフは、オレゴンで土地を得て家を建てる。トマスとノエミもオレゴンで新生活を始める。ブレナンは、死んだ妻が見たがっていた海へ行き、海岸に腰を下ろして75歳の生涯を終えるのだった。

 

映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3」を見る

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3   Guardians of the Galaxy Vol. 3

2023年 アメリカ 150分
監督・脚本:ジェームズ・ガン
出演:<ガーディアンズ>ピーター・クイル / スター・ロード( クリス・プラット、日本語版声・山寺宏一)、ロケット(アライグマ。声・ブラッドリー・クーパー、ショーン・ガン(幼年期)/加藤浩次)、グルート(樹木型ヒューマノイド。声・ヴィン・ディーゼル/遠藤憲一)、ドラックス(デイヴ・バウティスタ/声・楠見尚己)、マンティス(クイルの異母妹。ポム・クレメンティエフ/秋元才加)、ネビュラ(ガモーラの義妹。カレン・ギラン/森夏姫)、クラグリン(ショーン・ガン/土屋大)、コスモ(犬。声・マリア・バカローヴァ/悠木碧)、

ガモーラ(ゾーイ・サルダナ/朴璐美(ぱくろみ)
<オルゴコープ>
ハイ・エボリューショナリー(科学者。カウンターアース創造者。チュクウディ・イウジ/中井和哉)、アダム・ウォーロック(黄金の空飛ぶ男。ウィル・ポールター/竹内駿輔)、アイーシャ(アダムの母。エリザベス・デビッキ)、レコーダー・ヴィム(ミリアム:ショー)、レコーダー・ティール(ニコ・サントス)、マスター・カージャ(警備担当。ネイサン・フィリオン)、ウラ(受付係。ダニエラ・メルシオール)
<ロケットの友だち(過去)>
ライラ(カワウソ、声・リンダ・カーデリーニ/佐倉綾音)、ティーフ(セイウチ。アシム・チャウドリー/かぬか光明)、フロア(うさぎ。ミカエラ・フーヴァー/宇山玲加
<ラヴェジャーズ>
スタカ―・オゴルド(リーダー。シルヴェスター・スタローン/ささきいさお)、マルティネックス(マイケル・ローゼンバウム)、メインフレーム、クルーガー、ブラープ

日本語吹き替え版で見る。「アベンジャーズ」の何本かでガーディアンズの面々には馴染みがあるが、本シリーズは1作目・2作目とも見ていないので、いきなりの最終話となった。
ガーディアンズが本拠を構えた衛星ノーウェアは、ある日、金色の空飛ぶ男スタカ―・オゴルドの襲撃を受ける。その破壊力はすさまじく、ロケットが重傷を負ってしまう。が、彼の体内にはキルスイッチが組み込まれていて、パスワードが分からないと治療できないことがわかる。ロケットを救うため、ガーディアンズは、ラヴェジャーズの助けを借りてオルゴコープに乗り込む。
前作でピーターは恋人のガモーラを失ったらしくその痛手から飲んだくれていたが、彼女は死んだわけではなく、ピーターと恋人同士であった記憶を持たない、過去からやってきたガモーラがラヴェジャーズにいて、彼女もガーディアンズに加わることになる。このガモーラは、恋人を見る目で自分を見るピーターに対し、至ってクールである。

オルゴコープは、会社の名前らしいが、有機体でできた建設物には生き物の内臓のような壁や設備が整備されている。社主のエボリューショナリーは、狂信的な科学者で、生き物を急速に進化させる研究をしている。彼は、様々な種の動物を人工的に進化させ、カウンターアースと呼ばれる地球に似た星の創造主となっていた。ロケットは、かつて、エボリューショナリーの実験台とされた動物のうちの一匹で、実験の結果、高い知能を持つようになったアライグマだった。ロケットは牢獄のような研究所を脱走したが、エボリューショナリーは、研究のため、ロケットの脳を欲していたのだった。
パスワード獲得のための敵地潜入から、カウンターアースでの戦いへとガーディアンズの活躍が描かれつつ、ロケットの悲壮な過去が明らかにされていく。

個性の強い仲間内の丁々発止のやり取りと、ド派手な攻防、オルゴコープやカウンターアースのカラフルな造形など、終始にぎやかなお祭りのような映画だが、なぜかうんざりせず、すっと入ってきて楽しい。ラヴェジャーズってなに?とか、ピーターとガモーラの間にどうゆう悲恋があったのか?とか、オルゴコープってなに?とか、よくわからなくても、楽しい(小ネタをいろいろちりばめているようなので、シリーズを把握している人はさらに楽しいのかもしれないが)。2時間半かけて描かれる内容が、詰め込みすぎず、ゆったりとしているから疲れないのかもしれない。懐石料理に出てくるような高級和牛をちょっとだけ使った上品な小鉢の料理ではなく、手ごろなお値段のボリュームあるビフテキをおなかいっぱい食べたような、それでいて胃がもたれることはないような、ちょうどいい感じに肉厚なアメリカ映画だった。

 

marvel.disney.co.jp

 

映画「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」を見る(感想)

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
EVERYTHING EVERYWHERE ALL AT ONCE

2022年 アメリカ 139分
監督:ダニエル・クワンダニエル・シャイナート
出演:エヴリン・ワン(ミシェル・ヨー)、ウェイモンド・ワン(キー・ホイ・クァン)、ジョイ・ワン/ジョトゥパキ(ステファニー・スー)、ゴンゴン(ジェームズ・ホン)、ディアドラ・ボーベラ(ジェイミー・リー・カーティス)、ベッキー(タリ―・メデル)

タイトルを直訳すると、「なんでもどこでもぜんぶいっしょに」といった意だろうか。
中国移民の主婦エヴリンは、頼りない夫ウェイモンドとコインランドリーを営みながら、老父ゴンゴンの介護をしている。難しい年ごろの娘ジョイに手を焼いていたが、ある日、彼女はボーイフレンドではなくガールフレンドのベッキーを連れてきて、昔気質の父に会わせたいと言い出す。一方、店の経営状況は厳しく、国税局に納税申告に行っても、融通の利かなそうな女性職員(ディアドラ)に書類の不備を指摘されてやり直しを命じられる。そんな生活に疲れきっていたエヴリンだったが、突然、夫のウェイモンドが豹変する。別の宇宙のウェイモンド・アルファが乗り移ったのだ。彼は、巨悪によって危機に直面した宇宙を救ってほしいと、エヴリンに告げ、彼女に世界の命運を託す。
エヴリンは、カンフー・スターとなった宇宙の自分に乗り移り、見事なカンフーの技を駆使して国税局で大立ち回りをしてみせる。予告編ではマルチバースといっているが、つまりは重ね合わせにある多元宇宙に様々なエヴリンがいて、有名なカンフー・スターだったり、歌手だったり、シェフだったりするのだが、中には人間の手の指がソーセージになっているふざけた宇宙とか、生き物が存在しない岩だけの荒涼な宇宙なども出てくる。ウェイモンド・アルファが言う巨悪のボス「ジョブトゥパキ」は、なんと、アルファの宇宙のジョイなのだった。
なんやかんやありながら、物語は、結局、夫と娘との関係修復という超個人的な問題に収束していく。世界を危機から救うはずが、結局は身内のことしか考えてないじゃんというのはアメリカ映画にありがちな展開だが(けなしているわけではない)、これもまたしかり。ウェイモンドと結婚したがためにしがないコインランドリー屋の主婦となってしまったエブリンは、彼の申出に応じなかった自分が成功者となった宇宙を目の当たりにし、自分の選択は間違いだったのかと思う。が、やがて夫のやさしさに気付き・・・という展開。娘ジョイとの関係は、母と年頃の娘のちょっと心がかみ合わない問題から、宇宙の存亡をかけたエヴリン対悪の首領ジョブトゥパキという大げさな戦いに発展するが、この対決はベーグルが絡んでどんどん意味不明になっていく。無機物だけの宇宙で二人が岩になっているシーンはなかなかおかしいが、会話をしているのはいただけなかった。どうせわけがわからないのだから、なにも動くものがない世界で観客がしびれを切らすくらいの間、ただ2つの岩を映していればいいのに、とも思った。
暴走する画面についていけるかどうかで映画の評価が分かれるところか。カンフーアクションは見ていて楽しいが、後半になると、正直ちょっと飽きてきてしまった。
ミシェル・ヨーはたいへんよかった。国税局のこわいおばさんが、ジェイミー・リー・カーティスだったのには驚いたが、こういう役を意気揚々と演じている彼女もよかった。

gaga.ne.jp

 

映画「フェイブルマンズ」を見る(感想)

フェイブルマンズ  THE FABELMANS
2022年 アメリカ 151分
監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:スティーヴン・スピルバーグトニー・クシュナー
出演:サミー・フェイブルマン(ガブリエル・ラベル)、ミッツィ・フェイブルマン(サミーの母。ミシェル・ウィリアムズ)、バート・フェイブルマン(サミーの父。ボール・ダノ)、レジー・フェイブルマン(サミーの妹。長女。ジュリア・バターズ)、ナタリー・フェイブルマン(次女。キーリー・カーステン)、リサ・フェイブルマン(ソフィア・コペラ)、ハダサー・フェイブルマン(ミッツィの母。ジーニー・バーリン)、ボリス(ミッツィの叔父。ジャド・ハーシュ)、ベニー・ローウィ(セス・ローゲン)、モニカ(クロエ・イースト)、ローガン・ホール(サム・レヒナー)、ジョン・フォードデヴィッド・リンチ

★注意! 映画の内容に触れています★

 

スピルバーグの自伝的映画と聞いて見に行くが、スピルバーグの、というよりは、タイトルが示すようにユダヤ人の一家、フェイブルマン家の物語である。サミーは、IT関連の技術者の父とピアニストを目指していた母と3人の妹たちと暮らしている。ある夜、両親に連れられて行った映画「史上最大のショー」(1952)の列車と車の衝突シーンを見たことがきっかけで、サミーは映画の虜となり、友達を集めて8ミリカメラで映画の撮影を始める。できた映画は学校で上映される。アリゾナの砂漠を背景に撮った戦争映画は、周囲の人たちを驚かせる出来栄えだった。が、一家と父の仕事仲間のベニーとでキャンプに行ったときの映像を編集していたサミーは、フィルムに映っていた母とベニーの関係を目にしてしまい、映画づくりをやめてしまう。
悪人ではないのだが奔放で強力な個性を持つ母と、天才肌で仕事一筋ののクールな父に振り回される子どもたち。やがて、父の栄転で一家はカリフォルニアへ引っ越すこととなる。移転先の高校で、サミーはユダヤ人を嫌う男子らのいじめに遭うが、イエス・キリストを愛するモニカというクリスチャンの女の子と仲良くなる。しばらく映画づくりから遠ざかっていたサミーは、モニカから卒業記念イベントの撮影を頼まれ、引き受けるのだった。
フェイブルは、ドイツ語で寓話の意味(殺し屋マンガの「ザ・ファブル」で有名な単語だ)、自伝的映画だけどフィクションだという意味が込められているそうだ。しかし、映画の中で起こる出来事は甘くなく、かといって大げさに悲劇的でもなく、リアルでもやもやとしている。家族讃歌にも、映画讃歌にもなっていないところがいい。
最後にでてくる地平線のエピソードは、かの監督のドキュメンタリーの中のインタビューでスピルバーグが語っていた内容そのままである。インタビューを聞いたとき、なんていい話だと感激したものだ。それを知らずに、いきなり映像で見せられた方がよかったかもしれないが、サミーが部屋に通され、秘書と待たされている辺りで、ひょっとしてあれか?と思いながらわくわくしながら巨匠の登場を待つのもそれはそれで楽しかった。

fabelmans-film.jp

 

関連作品:「映画の巨人 ジョン・フォード」(2006年・110分)ピーター・ボグダノビッチ

https://item.rakuten.co.jp/auc-rgbdvdstore/10021528/

映画「パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女」を見る(感想)

パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女 SPECIAL DELIVERY

2022年 韓国 109分
監督・脚本:パク・デミン
出演:チャン・ウナ(パク・ソダム)、キム・ソウォン(少年。チョン・ヒョンジュン)、チョ・ギョンピル(悪徳刑事。ソン・セビョク)、ペク・カンチョル(ペッカン産業社長。キム・ウィソン)、キム・ドゥシク(ソウォンの父。元野球選手の賭博プローカー。ヨン・ウジン)、ハン・ミヨン(国家情報院係官。ヨム・ヘラン)、アシフ(ペッカン産業従業員。アフリカ系。ハン・ヒョンミン)

★ネタバレあり!(映画の内容に触れています)

 

予告編をみて、「グロリア」と「ドライブ」「ベイビードライバー」を合わせたような映画かなと思って気になって見たら、思った通りそれらを合わせたような内容の映画だった。
28歳のウナは、わけありの荷物の運搬(特送)を請け負う凄腕ドライバーである。彼女は、ある日、逃走する賭博ブローカー、ドゥシクとその幼い息子ソウォンを運ぶ仕事を引き受けるが、ドゥシクは追手に殺されてしまう。ウナは、金の在りかの鍵を持つソウォンとともに、悪徳刑事ギョンビル一味から追われることに。敵が刑事なので、警察に助けを求められず、ウナは誘拐犯として警察からも追われる身となり、さらに彼女が脱北者であることが判明すると、彼女を知る国家情報院の女性係官ハンらも出動してくる。
行き届いた娯楽アクションだった。カーアクションも派手でいいが、スクラップ工場でのヒロインも敵も血と汗でどろどろになっての戦いも勢いがあった。
ドゥシクが元プロ野球選手であるとか、裏で「特送」を請け負うスクラップ会社(釜山港のすぐ近くにあるという場所の設定もいい)の社長や従業員のアフリカ出の青年がいい味を出していたりとか、狭い狭い路地を走破し、踏切を利用して追手を躱し、ドリフトで縦列駐車を一発で決めるウナに対し、情報院のハンは車庫入れも苦手なへぼ運転者である(自分もへぼなので個人的に好感を持つ)とか、細部もいろいろ気が利いていると思った。ハンがクライマックスの戦いには間に合わず、見せ場がないのはちょっと残念だった。

しかし、サブタイトルはどうにかならないものかと思った。タイトルも「特送」とした方が渋くて内容に合っていると思うが、それではあまり人が見に行く気にならないってことなんだろうと思った。

perfectdriver-movie.com

映画「カンフースタントマン 龍虎武師」を見る

カンフースタントマン 龍虎武師  KUNGFU STUNTMEN

2021年 香港・中国 92分
監督:ウェイ・ジェン・ツー
出演:サモ・ハンユエン・ウーピンドニー・イェン、ユン・ワー、チン・カーロッ、ブルース・リャン、マース、ツイ・ハークアンドリュー・ラウエリック・ツァン、トン・ワイ、ウー・スー・ユエン ほか

香港カンフーアクション映画の歴史を、スタントマンの視点から語るドキュメンタリー。
有名無名取り交ぜて映画でカンフーアクションに関わった男たちが、次々に登場して、香港アクション映画の黄金時代がスタントマンにとっていかに危険なものだったかを語る。
1930年代、日本軍の侵攻によって本土を追われた京劇の演者たちが香港に逃れ、京劇の学校をつくった。1960年代には4つの学校ができ、多くの子どもたちがそこで厳しい授業を受け体技を身に着けたが、肝心の京劇が衰退してしまって仕事がなく、そこで彼らはカンフー映画のスタントマンになっていったという。そうした過去の経緯も興味深い。
タイトルの「武師」はスタントマンの意。南派洪家拳の流れを組む武術系からラウ・カーウィンの劉家班、香港にあった4つの京劇学校の出身者による京劇系からは、ユエン・ウーピンの袁家班、さらにその系列のドニー・イエンの甄家班、サモ・ハンの洪家班その系列のチン・カーロンの銭家班、ジャッキー・チェンの成家班がつくられ、これら複数の班(チーム)がせめぎあい、文字通り命がけのスタントに挑んでいた。「死んだものもいたし、半身不随になった者もいた」とさらっと語る彼らは、その時代を生き抜いた男たちだ。

「ドラゴン危機一髪」「ドラゴン怒りの鉄拳」「ドランクモンキー酔拳」「プロジェクトA」「ファースト・ミッション」「霊幻道士」「ポリス・ストーリー/香港国際警察」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」シリーズ、などなど、挿入される映画のシーンを見ると、映画館で見たときの高揚感が蘇ってくる。8人が爆発と同時にガラスを突き破ってビルの窓から落ちるシーン(「ファースト・ミッション」)など、撮影のいきさつを知ったあとでも見せてくれるので改めてすごさが伝わる。一方、マース(「プロジェクトA」の有名な時計台落下シーンをジャッキーの前に試しに落ちたスタントマン、俳優、アクション監督)が、ゴールデンハーベストの跡地を案内する場面は郷愁が漂っていてじんとしてしまった。

パンフレットは、厚くていい紙を使っているが、小ぶりで千円。ちょっと迷ったけど買ってよかった。映画を見ただけでは覚えきれない出演者たちが25人、顔写真と名前(漢字とカタカナと英語表記あり)と簡単なプロフィールつきで紹介されていて、香港映画スタントマンの班の系図や、劇中登場する映画の一覧もある。さらに、ドニー・イエンの班に所属している日本人のスタントマン谷垣健治(「るろうに剣心」シリーズのアクション監督)のインタビューと同門の下村勇二と大内貴仁の対談も載っている。興味のある者にとっては、なかなか希少な資料となっているのではないだろうか。

 

kungfu-stuntman.com

 

映画「すずめの戸締り」を見る(感想)

すずめの戸締まり
2022年 日本 公開:東宝 アニメ 121分
監督:新海誠
声の出演:岩戸鈴芽(原菜乃華)、宗像草太(松村北斗)、岩戸環(深津絵里)、海部千果(花瀬琴音)、二ノ宮ルミ(伊藤沙莉)、芹澤朋也(神木隆之介)、岩戸椿芽(花澤香菜)、宗像羊朗(松本白鸚、ダイジン、サダイジン

 

★ネタバレしてます!!

 

 


日本各地にある廃墟に突然現れる謎の扉。
扉の向こうの「後ろ戸」は「常世」の世界で、扉が開くと「ミミズ」が現れる。ミミズは災害の予兆で、赤黒い雲のように村や町の上空に広がるが、人々の目には見えない。鍵を持つ「閉じ師」の青年が扉を戸締りすることで、ミミズは消え、災害の恐れはなくなる。
九州の宮崎で叔母の環と暮らす高校2年生のすずめは、廃墟で「西の要石」を抜いてしまい、そのせいで扉が次々と開き、ミミズが出現することに。西の要石は、ダイジンと呼ばれる猫に姿を変え、すずめになつき、閉じ師の草太を魔法でイスに変えてしまう。そのイスは、すずめが幼い時、母に作ってもらった誕生日のプレゼントで、脚が一本かけて3本足の不安定な状態になっている。ミミズは何匹もいるわけではなく一匹が日本の地下を這いずっている。逃げるダイジンを追うイスの草太を追うすずめは、行く先々の廃墟に現われる扉を戸締りしてミミズを消すが、すぐまた次の扉が開く。宮崎から愛媛、神戸、東京へとすずめたちの旅は、続いていき、草太は東京でダイジンの代わりに要石になってしまう。
草太を救うために、すずめは東北に向かう。すずめは東北の震災で母を失くしていた。4歳だったすずめは環に引き取られたのだった。家出したすずめを心配してかけつけた環と草太の友人の芹沢(なかなか好感の持てるキャラとなっている)が加わり、3人は芹沢のオープンカーで東北へ向かう。
「どこでもドア」みたいな扉とその向こうに広がる星がきらめく漆黒の宇宙ときらきら光るカギと突如出現する鍵穴がファンタジーすぎるのとこの映画の世界だけで通じる専門用語が次々に出てくることにちょっと引いてしまい、また、まがまがしく広がるミミズともどもそれらのイメージにさほど斬新さが感じられなかった。草太の魂が入るのが手作りの子ども用の木のイスでしかも三本足で走るというのはまったくもって奇抜な着想だとは思うのだが、なぜか「ハウルの動く城」のぴょこぴょこ跳んで進む案山子の動きを思い出してしまう(これに限らず、映画全体を通して「ハウル」に雰囲気が似ている感じがする)。幼いすずめが出会っていたのは実は、という展開も特に意外でもなく、おお、ここでこうくるか?という驚きはなかった。オマージュの部分もあるのだろうが、つまりは出てくるものに対してやけに既視感を抱いてしまうのだった。が、どことなく見慣れたものを最大限に生かして、パワーアップしたビジュアルでもってきっちりと見せきった力量はあっぱれ、という感じの映画だった。
(追記)ビジュアルの秀逸さとともに、言葉へのこだわりも感じられた。「好き」と言われればふっくらし、「きらい」と言われればやつれてしまうダイジンは言葉が他人に与える力を表しているのだろうが、これはわかりやすすぎてあざとい。扉を戸締りする際にすずめが聞く、おはよう、いってきます、いってらっしゃい、という様々な声は、震災の朝にも人々の間で交わされたあいさつで大した意味をなさない言葉のやりとりゆえにそうした日常が立ち切れてしまったという思いを喚起させるものだ。しかし、私の溜飲を下げてくれたのは、それを言っちゃあおしまいよって感じで、すずめを引き取ったことがどれだけ負担だったかという心情を吐露した環があとから「それだけじゃないよ」の一言ですべて収めてしまうくだりで、言っちゃいけない言葉なんて実はないのだよという主張が感じられてよかった。

 

suzume-tojimari-movie.jp