映画「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」を見る

19年ぶりにシリーズが復活。
ネバダ州の砂漠の真ん中にある米軍倉庫。侵入したソ連軍に乗っ取られている軍用車から降り立つ男。乾いた地面に落ちた帽子の影にテーマ曲がかぶさる。どうどうのヒーロー登場シーンに胸が高鳴った。
1957年の冷戦時代を背景に、盗まれた秘宝クリスタル・スカルをめぐって、ソ連軍の女将校スパルコ(ケイト・ブランシェット)と考古学者にして冒険家のインディ・ジョーンズハリソン・フォード)が争奪戦を展開する。
インディの相棒でCIAのマック(レイ・ウィンストン)は立場が二転三転し、インディやその父と旧知の中である考古学者オクスリー教授(ジョン・ハート)は、謎を追ううちに超然とした伝道師のような存在と化す。彼等に加え、第1作に登場した豪快な酒飲み女マリオン(カレン・アレン)とその息子マット(シャイア・ラブーフ)が参列。アクションにつぐアクションにはらはらどきどきしつつも、丁々発止のやりとりが楽しい。
アクションにテーマがあるとしたら、今回は、併走する車。
冒頭から、「アメリカン・グラフィティ」を思い出させるアメリカの若者たちと、軍の車が競走をしてみせる。
で、市街でのバイクと車の併走。FBIに目をつけられ追われるインディは、マットが運転するバイクの後部席から車に引きずり込まれ、抜け出してまたバイクに戻る。バイクごと大学のキャンパスに突っ込み、学生の質問に答えるのが愉快だ。
そして、南米の密林での、スパルコ大佐率いる軍団とのクリスタル・スカルの壮絶な奪い合い。併走する車の上で大嫌いなフェンシングの剣で敵とやりあうマットがいい。延々と続くカーチェイスに飽きることはなく、しかも最後には、人食いアリの襲撃が控えている。「兵隊アリ」の出現は、昆虫パニック映画の傑作「黒い絨毯」(1954年。バイロン・ハスキン監督 チャールトン・ヘストン主演)を思い出させてくれた。
UFO好きにはお馴染みらしいロズウェル事件、ナスカの地上絵、エルドラド伝説、ピラミッドの古代文字など、有名な世界の謎と神秘が絡む。密林のテントの中、スパルコに囚われたインディの傍らに光る蛍光リングの青白い光が謎を暗示する。このネタに対しては否定的な感想も見られるが、私としては失望を感じる理由はどこにもない。
スパルコ演じるブランシェットが、圧倒的な魅力を発揮する。彼女は目的のためには手段を選ばない冷酷非道な軍幹部というだけでなく、超常的な力を求めてやまない探求者としての一面を持つ。そこがありがちな女兵士や女殺し屋と一味違うところである。制作者側の思うがままとわかりつつ、彼女に参った男子は数知れないと思われる。