逃走映画「デンジャラス・ラン」を見る

デンジャラス・ラン Safe House
2012年 アメリカ・南アフリカ共和国 115分
監督:ダニエル・エスピノーサ
出演:トビン・フロスト(デンゼル・ワシントン)、マット・ウェストン(ライアン・レイノルズ)、リンクレーター(ヴェラ・ファーミガ)、デヴィッド・バーロウ(ブレンダン・グリーソン)、ハーラン・ウィットフォードCIA本部副部長(サム・シェパード)、カルロス・ヴィラー(ルーベン・ブラデス)、アナ(ノラ・アルネゼデール)、キーファー(ロバート・パトリック)、ウェイド(リーアム・カニンガム)、ケラー(ジョエル・キナマン)、ヴァルガス(ファレス・ファレス)


★ちょっとねたばれあり★
試写会で見た。
よくわからない邦題がついているが、原題は、「隠れ家」の意。映画では、CIAが各地に設置している秘密の「客室」を指す。一見普通の住居内に、最新式のセキュリティ・ロックや衛星通信装置が備えられ、「客室係」の捜査官が常駐し、必要に応じて「客」を収容する。が、「客」はいつ訪れるかわからず、「客室係」はただ待機しているだけの日々を過ごすこともある。
CIAを裏切って世界各国から指名手配を受け、伝説の極悪人となっている元工作員トビン・フロストは、南アフリカ共和国ケープタウンで、知人のMI6諜報員ウェイドからある重要機密データが入ったカプセルを受け取る。追手に追われるトビンは、アメリカ領事館に逃げ込んで身柄を拘束され、CIAの隠れ家に収容される。「客室係」の新米捜査官マットは、CIA本部が派遣した尋問チームが行う拷問のような捜査に疑問を抱くが、隠れ家は重武装した謎の男たちの襲撃に遭い、チームは全滅する。マットは、「客」であるトビンを連れ出し、逃走が始まる。
トビンは、マットの心に不信を植えつけるような言葉を繰り返し、マットは、それを聞き入れまいとするのだが、凶悪な謎の追手の存在やCIA本部の対応は、彼の疑惑を増大させていく。
マットが駅で、恋人のアナに自分の正体を明かすところがいい。普通のフランス人の若い女性が、いきなり恋人に「実は僕はCIAの捜査官なんだ」と言われたらこうなるだろうなという、アナの反応のしかたや思い詰めた表情を強調するようなメイクがよかった。
工作員としての技能は一流で組織の汚れた部分を知りつくした老練なトビンと、まっとうで有能だが経験の浅いマットが、行動を共にするうちに互いに相手を認めていく。トビンは、デンゼル・ワシントンという俳優のイメージもあってか、「おまえは悪魔と逃げている」というコピーから連想されるような極悪人の感じはあまりない。
最初の隠れ家襲撃から続く激しいカーチェイス、サッカーの試合で賑わうスタジウムでの逃走劇、トビンの旧友カルロスの家のバラック街での銃撃など、アクションのみどころはたくさんある。
田舎の隠れ家での最後の攻防は、地味だけど、マットもトビンも血だらけになって見るからに痛そう。最後の対決相手となるCIAの汚職捜査員が渋い悪役ぶりを見せる。


セリフ:「よくやった。後は任せろ。そう言われたら、君はだまされているんだ。」
トビンのマットへの警告。このあと、マットは、これと全く同じ言葉をCIA本部副部長のウィットフィードに言われ、当局に対し、疑惑を抱かざるを得ない状況に陥るのだ。そうくるんじゃないかなと読めなくもないのだが、高位の上官であるサム・シェパードからクールに言われると、ぞっとする。原文は、次の通り(Imdbより)。
“You've done a fine job, Son. We'll take it from here. That's when you know you're screwed.”