スーツアクターの映画「イン・ザ・ヒーロー」を見る

イン・ザ・ヒーロー
2014年 日本 公開:東映 124分
監督:武正晴
出演:本城渉(唐沢寿明)、一ノ瀬リョウ(福士蒼汰)、大柴美咲(黒谷友香)、海野吾郎(寺島進)、真鍋満(草野イニ)、森田真澄(日向丈)、門脇利雄(小出恵介)、元村歩(杉咲花)、元村凛子(和久井映見)、スタンリー・チャン監督(イ・ジュニク)、石橋隆生(加藤雅也)、松方弘樹(本人)、西尾(及川光博
★クライマックスでのネタバレ、というか手法バレあり!!
戦隊ものなどでヒーローや怪獣の中に入ってアクション部分の演技を受け持つスーツアクターを題材にした映画。
ベテラン、スーツアクターの本城渉は、戦隊もの劇場版に出演が決まった売り出し中のアイドルスター一ノ瀬リョウにアクションを教えるよう依頼される。裏方を見下し、礼儀を知らない傍若無人な若者に見えたリョウだったが、やがて熱い思いを胸にスーツアクターを続ける本城と心を通わせていく。
東映らしい冒頭の戦隊ものがちゃんとしていて楽しい。
唐沢の熱い人ぶりが、暑苦しいはずなのに清々しくていい。
本城が迷いを振り切って決断するときに踏切を渡るというべたな表現はなかなかいいが、走り出すとともにスローモーションになって歌ががんがん流れるのはちょっとやだなと思っていたら、これは前振りだったのだ。
クライマックス、ハリウッド映画「ラストブレイド」で白忍者に抜擢された本城の大立ち回りのシーン。CGなし、ワイヤーなし、ノーカットでの殺陣ということになっていて、多くの人が「蒲田行進曲」の階段落ちを引き合いに出す、とても危険なアクションなのだが、これが、ワイヤー使って(気づいたのは殺陣の相手で本城ではないが)、カット割っているのは(映画の中で映画を撮っているカメラとは別なのねと思えば)いいとして、せっかくの白忍者会心の殺陣の最後の最後で、スローモーションになって日本語の歌が大音量でかぶさるのは、いかがなものか。好みの問題だと思うが、わたしはがくっとなってしまった。狂喜する監督の様子は写ったが、監督が「カット!」と叫ぶ声は聞こえなかった。「アクション!」で始まったら、「カット!」で終わるんじゃないのか。これはもう、「ルパン三世」で五ェ門に斬鉄剣で斬られた車がまっぷたつに割れなかったのとともに、わたし的には今年の邦画二大無念の一つと言っていい。
それをのぞけば、とても興味深く、いい映画だった。