俳優の杉浦直樹さん逝去 「暗黒街の顔役 十一人のギャング」のギャング役がかっこよかった

俳優の杉浦直樹さんが亡くなりました。
拝見した映画は本数は多くありませんが、かなり好きな俳優さんでした。
後年はホームドラマなどにも出ていたようですが、そちらは殆どみたことがありませんで、専ら昔のアクション映画にギャング役や殺し屋役で出ているのを見ました。
日本版「オーシャンズ11」(オリジナルは「オーシャンと11人の仲間」(1960年))ともいうべき、石井輝男監督のギャング映画「暗黒街の顔役 十一人のギャング」(1963年)で、鶴田浩二とコンビを組んだギャング役がそれはもうかっこよくて、痺れました。
あとは「網走番外地 望郷編」(1965年)の肺病持ちの真っ白なスーツの殺し屋、同シリーズではたぶん「荒野の対決」(1966年)にも出ていました。こっちは足の悪い殺し屋かなんかだったような気がするのですが、記憶が定かではありません(^^;
「いれずみ突撃隊」(1964年)の中尉役もありました。
「錆びたナイフ」も見ましたが、そのときはまだ杉浦直樹を認識してなくて、石原裕次郎ばかり見てました(^^ゞ
比較的新しいところでは、森田芳光監督、沢田研二主演の「ときめきに死す」(1984年)の、怪しげな中年の医者が、私の好きな杉浦直樹でした。
何も考えていないような、ツヤ消しのような黒い目が魅力的でした。
冥福をお祈りします。

以下、HP「みちのわくわくページ」に2003年7月に書いた感想です。

暗黒街の顔役 十一人のギャング  
1963年 東映 91分
監督 石井輝男
出演 権藤(鶴田浩二)、トウノ(※漢字不明。杉浦直樹)、沢上(高倉健)、海老名(江原真二郎)、葉室(町田京介)、広岡(高英男)、まゆみ(三原葉子)、ユキ(瞳麗子)、山之内美和(木暮道代)、芳賀(丹波哲郎)、黒部(安部徹)、金光(梅宮辰夫)、ジョージ(アイ・ジョージ)、くめ(吉川満子)、路子(本間千代子)、沢上の助手(由利徹

20数年前に観てぜひもう一度観たかった日本ハードボイルド犯罪映画の傑作。
レンタルビデオ屋で見つけて一も二もなく借りてしまった。
とてつもない金額の現金強奪計画を企てる二人の男。彼等は、計画実行に必要な人材を集め、スポンサーと交渉して資金を調達し、ついに犯行にこぎつけるが……。
鶴田浩二の相棒を演じる杉浦直樹が本当にかっこいい。
ソフト帽に白いトレンチコートという出で立ちで登場、「女は気障な男が好きなんだろ」と女(三原葉子!)にぬけぬけと気障に言い、あの高倉健をいきなり平手打ちしたりする。
クールなのに結局女に弱いところもまたよかったりする。
情婦の太股をなでてほくそ笑む鶴田浩二、挑発されていきがるトラック運転手の高倉健、女主人に対してやけに礼儀正しい情夫兼ボディガードの丹波哲郎などが見られて楽しい。
中でも最後に侠気を見せる高倉健は、任侠シリーズとは一味違った魅力を披露してくれる。
銃の使い手の江原が今にも裏切りそうな危ない雰囲気をずっと醸し出しているのもいい。

ところで、「十一」という数字がずっと気になっていた。
権藤と東野で2人、銃の使い手の三人とトラックの運転手の沢上で6人、スポンサーの山之内とその情夫芳賀で8人、権藤の愛人ユキと、得体の知れない女まゆみを入れても10人にしかならない。
銃のディーラーや敵役の黒部一味は入れないだろうし、やっぱり数が合わないのだが、「オーシャンと十一人の仲間」のリメイク作品「オーシャンズ11」(2001)を見たあとで改めて観るとなんとなく分かった気がした。
オリジナルの方(見てないのだが)は公開が1960年。
「十一」はここから来ているのではないだろうか。綿密な犯罪計画、人数集め、スポンサー捜し、そして実行、という展開が「オーシャンズ11」にそっくりだ。
結果はまさに天国と地獄ほどの差があるのだが。

<追記>2015年11月29日(土)
新文芸坐高倉健一周忌で「恋と太陽とギャング」と二本立てだったので、また見た。
・やはり、どう数えても10人しかいない。ポスターには梅宮辰夫がけっこう大きく出ているが、彼は阿部徹ら率いる横取りを企む敵対組織の一員なので、11人目とは言えない。
・ネットで検索して出てくるデータベースでは、杉浦の役名が「別当」となっているが、映画の中では、「トウノ」と呼ばれている。東野か当野か桐野かまた別の字か漢字不明。
・石井輝夫監督のギャング映画を二本続けて見て今更ながら思ったのだが、映画のハードボイルド的雰囲気は、三原葉子によって崩され、独特のへんてこりんなものになっているような気がする(けなしているわけではない)。

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