異国移住絵本「ARRIVAL」(アライバル)を衝動買い

絵本も最近はほんとにいろいろあって、子ども用だけではもったいないような凝ったものも、たくさんつくられている。


だが、私は、これはもう完全に個人の嗜好というか、感じ方の問題なのだが、大人のための絵本とか、大人も読める絵本とか、最初から大人ねらいの絵本づくりという姿勢には、どうにも違和感を覚える。
やはり、絵本は基本的には、子どものためのものであってほしい。
例えば、歯医者の待合室かなんかで、子ども用に置いてある絵本を、ひまつぶしにたまたま手にとってみたら、これがなんだかよくて。
というのが、大人とよい絵本の、正しい出会い方のひとつであると、そんなふうに思っている。


それと、根がどんくさいせいか、趣味がよすぎるもの、おしゃれなもの、洗練されたものというのもどちらかというと苦手だ。
「ほんとにいいものは、どこかどんくさい」というのが、私の中では、いろいろなジャンルの作品の善し悪しを判断する上での基準になっているといってもいい。


ところが、上記の二つの点から外れていると思えるにもかかわらず、というのは、歯医者の待合室でなくアマゾンで見つけてしまったことと、どうもおしゃれなんじゃないかということなのだが、それにもかかわらず、やけに気になってしまったものがある。
アマゾンの「今年売れた本」洋書の部で見つけた、「ARRIVAL」という絵本である。
2007年、アメリカで出た本で、作者はショーン・タン。


妻と幼い娘を置いて異国に出稼ぎに来た男の話。
異様な建築物が立ち並ぶ街、意味不明の文字、得体の知れない食べ物、そのへんをうろちょろする変な形の小鳥や小動物などが、彼を圧倒する。
おじさん(といっても30代前半くらいか)が、言葉も文化も違う国でとまどいながら、仕事を見つけ、少しずつ町になじんでいく様子が、言葉はいっさい使われずに、セピア調の絵だけで描かれていく。
主人公が知り合う移民の人々も、それぞれ苦労してやってきた人たちで、その回想も絵のみで記される。
地味な主人公と、奇妙な動植物や町並みの造形は、幾分、諸星大二郎を思わせないでもない。(そのあたりはちょっとどんくさいといえるかもしれない。)

異国感というか、見知らぬ土地にたったひとりで来てしまったという、心細い感じがよく出ていてよい。

日本語版もあるが、字がないので、英語がわからなくても、原書でOKである。
(ハードカバーでしっかりしているし、原書の方が、日本語版より安い。)

The Arrival

The Arrival

アライバル

アライバル