映画「オール・ユー・二―ド・イズ・キル」を見る(感想)

オール・ユー・二―ド・イズ・キル EDGE OF TOMORROW
2014年 アメリカ 113分
監督:ダグ・ライマン
原作:桜坂洋「All You Need Is Kill」
出演:ウィリアム・ケイジ少佐(トム・クルーズ)、リタ・ヴラタスキ(エミリー・ブラント)、ファレウ軍曹(ビル・パクストン)、スキナー(ジョナス・アームストロング)、キンメル(トニー・ウェイ)、グリフ(キック・ガリー)、フォード(フランツ・ドラメー)、クンツ(ドラゴミール・ムルジッチ)、ナンス(シャーロット・ライリー)、ブリガム将軍(ブレンドン・グリーソン)

近未来における異星人との戦争にタイムループ現象を絡めたSFアクション。
トム・クルーズが、戦場に行くことを極力嫌う広報係のへなちょこ青年将校という役どころで登場、無理やり激戦地に駆り出され、何度も戦死しては生き返り、同じ1日を繰り返すうち、屈強な戦士となっていく。トムは、前半の腰ぬけぶりをけっこう楽しそうに演じていて、興味深い。
戦場が主な舞台となっているため、回を追うごとに戦い慣れていくトム・クルーズのアクションを見るのが楽しい。うまくいかなければ「リセット」となり、そのたびケイジは殺されて、出撃前夜の基地で目覚める。私はあまりゲームはやらず、特にRPGとかかなり不得手なのだが、スマホのキャンディクラッシュはけっこうやっていて、難関ステージになると初めはどう攻略していいかわからず途方にくれるのだが、何度も挑戦しているうちに手立てを習得していき、条件がうまく合ったときに勢いをつけてクリアに持ち込む。この映画における、同じ時間での挑戦の反復はそのゲーム感覚に共通するものがある。
が、ケイジの視点でケイジといっしょに同じ戦いを繰り返している気でいると、彼が私たちの知らないことを口にするのを聞いて、実は彼は私たちが見ているよりもさらにはるか多くの反復を経ているのだということを知らされる。彼に同調していたつもりでいたこっちの気持ちは一挙に突き放され、彼に初めて状況を知らされるリタ側の心情に転化させられるのだ。
やがて、ケイジはタイムループ力を失い、やり直しができないというごく当然の現実に戻る。その時、見ている側も彼ともどもひどくこころもとない気持ちになるのだった。
いつ達成されるともしれない勝利を目指してひたすら同じ時を繰り返すという、精神に異常をきたしてもおかしくないくらい過酷な状況の中で女戦士と恋に落ちるという能天気な展開は、ハリウッド映画らしくてよかった。

●セリフ:「目覚めたら私を探して。」”Come find me when you wake up!”
イムループに陥ったケイジは、リタと出会い、以前同じ経験をしたリタはケイジの身に起こっていることを即座に理解する。最初のリセットの直前に、リタがケイジに言うセリフ。

●おまけ:
イムループ現象を扱ったSFはいくつもある。
小説「リプレイ」(1986年。ケン・グリムウッド作。)では、主人公の男は43歳で死ぬたびに18歳の自分に戻り、何度も人生をやり直すという長期的なループに陥る。
映画「タイム・アクセル」(1993年。監督:ジャック・ショルダー)は、軟弱な青年が思いを寄せる女性の死に何度も立ち会い、なんとかして彼女を救おうと同じ1日を繰り返すというもので、設定は本作と重なるところがある。

All You Need Is Kill (スーパーダッシュ文庫)

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